さくら総合歯科におけるむし歯の治療方針:極力削らない

このページのタイトルは、【削らないむし歯治療】です。
ただし、全く削らなくて良い、と言うことはありません。

 

時々マスコミに採り上げられる3Mix-MP法や、ドックベストセメントを使用した方法(後述)を用いても、全く削らなくて良いわけではありません。
しかし、従来に比べて従来に比べて歯を削る量が大幅に削減でき、大切な歯髄(神経)を守ることが出来ます。

 

従来、歯科治療はかなり多めに削る治療が主流でした。
しかし多くの場合、削る量が少ない方が、歯が長持ちしやすいことが分かってきました。
特に、歯は神経を取った瞬間からどんどん弱り、早期に歯を失う原因となります。

 

そこで、さくら総合歯科における、むし歯の治療は、

 

 (1) 可能であれば削らず様子を見て(経過観察)、再石灰化療法または予防処置を行う。
 (2) 歯を極力削らない。
 (3) 大きなむし歯でも、神経を残すよう可能な限り努力する(ドックベストセメントを使用)。
 (4) ただし場合によっては、再治療のリスクを少なくするため、しっかり削る。
 (5) 歯の頭の部分(歯冠)が殆どなくなった、ひどいむし歯には手術を行い(希望者のみ)、長持ちするように心懸ける。

 

の4つを基本方針としています。
(2)と(4)は矛盾しているように思われるかもしれませんが、この点に関しては後述します。

 

Doc's Best Cement(ドックベストセメント)法

Doc's Best Cement(ドックベストセメント)とは、鉄イオンと銅イオンのコンビネーションによる殺菌力を利用した、新しいセメントです。
アメリカのTim Fraser博士によって開発されました。
鉄イオンと銅イオンの電位差により、バイオフィルムの生成阻止(バイ菌の増殖阻止)を行います。

 

ドックメスとセメント 三重県四日市市

 

ドックベストセメントの主成分はミネラルです。
むし歯になると、カルシウムやリンなどのミネラルが歯から溶け出してしまいます。
ひどいむし歯(一部除外)がある場合、歯を殆ど削らずにこのセメントを詰めておきます。
すると、ぼろぼろだったむし歯の部分が修復され、硬い歯に戻ります。

 

後述する3MIX法より成功率が高いと言われており、今まで3MIX法を行っていた歯科医院でも、この方法に方針転換することが多くなってきた様です。
特にこの方法を全国に紹介しておられる埼玉の小峰先生が、TBSテレビに出演されて以来、この方法に取り組む歯科医院が一気に増えました。

 

ドックベストセメントを導入以来、予防に力を入れているのも相まって、神経を取る処置を行うことがほとんどなくなりました。

 

★註)ドックベストセメントは神経に達したと思われるむし歯に対し、なるべく神経を取らずに済むよう試みる治療法です。
浅いむし歯や神経が完全にやられてしまったむし歯、神経の取ってある歯には適応しません。

 

ドックベストセメントを使用した治療は、自費診療です。

ミニマルインターヴェンションとは

ミニマルインターヴェンション(Minimal Intervention)とは、最小限の切削(せっさく:歯を削ること)のことを言います。
ミニマムインターべーションと言う場合もあります。
近年、MI と略される場合が多いようです。

 

以前は詰めたものと歯の境目を、汚れのたまりにくい部分に設定することにより、二次う蝕(二次カリエスともいう)が起こりにくくなると考えられていました。
そのため、たとえ小さなむし歯であっても、その何倍もの歯を削っていました。

 

確かに、昔はよい材料がなく、優れた接着剤もありませんでしたので、正しい方法であったのかもしれません。
しかし、近年技術革新により、優秀な詰め物や接着剤が発売され、最小限削るだけでも問題が起こりにくくなってきました。
ただ、むし歯の部分とそうでない(健康な)部分の判別は、ベテランの歯科医師でも視診(目で見て判別)・触診(探針と呼ばれるとがった器具でさわって調べる)だけでは、正確に判断出来ません。

 

さらに、触診をすることにより、ごく初期の治る可能性のあるむし歯が治らなくなってしまう、という重大な問題が発生することがわかってきました。
(ましてや若い歯科医師では正確に判別することが困難です。)

再石灰化療法

ごく初期のむし歯は、唾液の力で削らずに治すことができます。

 

むし歯は歯の表面からではなく、表層直下から歯のミネラル成分が溶け出すことにより始まります。
この段階で、

 

1) 歯を特殊な薬剤で処理・清掃し
2) 歯をフッ素の含まれた製品で処理し
3) 歯のミネラル成分を含むペーストで処理する

 

ことにより、歯から抜け出したミネラル成分を歯に送り込むことにより、積極的に初期むし歯を治すことが可能です。
これを再石灰化療法と言います。

 

また、低濃度フッ素液のぶくぶくうがいを毎日続けることによっても、時間はかかりますがごく初期のむし歯は治る場合があります。

むし歯測定器・ダイアグノデント

ダイアグノデント(DIAGNOdent)は、カボ社(KaVo) が開発したむし歯測定器で、低出力赤色レーザーを用い、むし歯がどの程度進行しているかを、数値で表してくれます。

 

 

上のグラフをご覧になってわかるとおり、奥歯の溝の部分が黒くなっている場合でも、多くの場合むし歯ではないことがわかります。
溝が黒くなっていたらすぐ削り、白い詰め物を行ってしまう歯科医師が多いようですが、このことは、結果的に歯の寿命を縮めることにつながる場合があります。

 

学校検診は、殆どの場合『視診』のみで行います。
しかも歯に歯垢がたくさんついた状態で・暗いところで・短時間に多人数を検診しますので、正確な診断は困難です。
学校検診で『むし歯無し』とされた方も、できれば歯科医院で定期的に検診を受けるべきだと思います。

 

逆に、学校検診で『むし歯あり』とされた方でも、当院では治療しない(必要ない)場合が多く、医院経営的にははっきり言って大変です。(日本の保険制度では、報酬ゼロ。)
それでも当院では、信念を曲げずに対応しています。

 

ダイアグノデントの診断基準

むし歯になると歯の表面のエナメル質が変性します。
そこに波長650ナノメートルのレーザー光を当てると、別の波長の反射光が出ます。
この装置はその反射光をとらえて歯の変化を把握し、結果を0から99までの数値で表します。

 

万能ではないダイアグノデント:当院での使用法

ただ、この測定器も100%信頼出来るわけではなく、ベテランの歯科医師が見たらどう考えても削らなくても良さそうな歯が、30以上の測定値を示す場合があります。

 

当院では、1回計測しただけの値で判断するだけではなく、定期的に何回も計測し、その数値の変化を観察します。

 

その結果数値が確実に悪化している場合は治療を行い、数値が不変又は減少している場合は、継続して観察していきます。
もちろん観察だけではなく、予防的処置も行うよう心懸けています。

 

ミニマル・インターヴェンションは常に最善か?

基本的には歯を削らないのがベスト、次いで極力削る量を少なくするのがベター、といえます。

 

しかし、

 

・ むし歯のリスクが高い方
・ 歯冠(歯の歯ぐきから顔を出している部分)が広範囲にむし歯で冒された方
・ 全体的に歯周病が進行した方
・ 見た目(審美性)を重視する方

 

など、必ずしも歯を削らないのがベスト、といえない場合があります。
詳しくは、ご来院時に説明させていただきます。

 

歯の頭(歯冠)が崩壊し、根の部分(歯根)しか残っていない歯への対応

・ 歯がぼろぼろになるまで放置した場合
・ 被せもの(冠)の下からむし歯になって、歯ぐきの下(場合によっては骨の下)まで歯がなくなった場合

 

そのまま差し歯(セラミックや金属の冠)で治療しても、長持ちさせることはできません。
そういう場合は、冠を被せる前に歯冠延長手術を行う場合があります。(希望者のみ)
手術の際に、痛みはありません。

 

この手術は技術的に難しく、一般開業歯科医で実施できる者は限られています。
手術の詳細については、ご来院時にご説明致します。

歯を破折させにくい、ファイバーポスト

神経を取った歯は、殆どの場合金属や樹脂(レジン)・セラミックなどを被せます。
ただ、神経を取る必要のある歯は、むし歯で大きな穴が開いている場合が多く、歯がかなり小さくなっている場合が殆どです。

 

そこで、まずこの穴を何らかの材料で埋める必要があります。
従来、一部または全部に金属を使用して、土台(専門的には「支台」といいます)を作っていました。

 

ところが近年の研究により、金属を使用していることが歯の破折(根が真っ二つに縦割れする)の原因となることが分かってきました。

 

そして現在、この土台となる部分に、グラスファイバーを併用することが歯の破折減少に有効であることがわかり、保険外診療において多用されるようになってきました。

 

当院では、このファイバーポストを用いたファイバーコアの長所を最大限活かすため、10分程度かけて歯の表面処理を行い、その後装着する、という大変手間のかかる手法を用い、歯の健康維持に勤めています。

 

3MIX法

3MIX治療法は、

 

3種類の抗菌剤
・ メトロニダゾール
・ ミノサイクリン
・ シプロフロキサシン
の効果により、歯を削る量を極力少なくしようという方法です。
(近年、よりすぐれた方法である、ドックベストセメント(上述)に乗り換える歯科医院が増えています。)

 

むし歯の原因菌は、1つの抗菌剤では死滅させることができません。
しかし、新潟大学の星野悦郎教授が上記3種抗菌剤を組み合わせることで、むし歯菌をほぼ100%殺菌することに成功し、それにより従来より大幅に歯を削る量を少なくすることが可能になりました。

 

その後、宅重先生が3MIXにマクロゴールやプロピレングリコールを併用することにより、より高い効果を狙った3MIX-MP法を提唱されました。
これらの方法は、うまく使えば素晴らしい結果を得ることができますが、歯科医師の間では評価が分かれています。

 

本法は、決して「歯を一切削らない方法」ではありません。
当院では、3MIXを状況に応じて使用しています。
(3MIXを使用した治療は、厚生労働省の規定により、自費診療で行うことが定められています。)

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