(1) 予防の対象となるのは?
歯を失う三大原因は、
第1位が歯周病、
第2位が虫歯、
第3位が歯の破折(根まで割れてしまう)
です。
したがって、この3つの病気に対する予防が必要になります。
歯周病と虫歯の予防には、多くの場合関連性があります。
歯の破折は別の方法が必要になります。
また、歯ならび・かみ合わせの異常が、40歳を超えた頃から歯周病の急速進行の要因になります。
したがって、歯を失わないようにするためには、歯ならびかみ合わせが悪くならないよう、予防する必要があります。
(2) 予防はいつから?
(a) 虫歯の予防
虫歯菌や歯周病菌は家族に感染することがあるといわれていますので、場合によってはご本人だけではなく、家族と一緒に予防や治療をした方がよい場合もあります。
虫歯菌は、歯がなければお口の中に定着することはできません。
したがって、歯がはえる前のお子様には、虫歯菌は定着しないのです。
生後19ヶ月から31ヶ月の間にお母さんのお口の中から移り、定着することがわかっています。
この時期のことを「感染の窓」と呼び、その期間に母親からの虫歯菌感染を防ぐことにより、お子様のお口の中に長期間虫歯が少ない状態を実現できると言われています。
但し、一般的に言われているような食器の共用(箸やスプーンの使い回し)・口移しの制限では、虫歯菌の母子感染は防ぐことが出来ません。
この件について更に詳しくお知りになりたい方は、マイナス2歳からの予防のページをご覧下さい。
(b)歯の破折の予防
歯を失う原因として近年侮れなくなってきているのが、歯が折れてしまう「歯牙破折」です。
歯の頭の部分(元々歯ぐきから顔を出している部分)だけが割れる歯冠破折と、歯の根(歯ぐきの下に隠れている見えない部分)まで割れる歯根破折があります。
歯冠破折の多くは再治療が可能ですが、歯根破折の多くは抜歯しか選択枝がありません。
(割れた歯を抜いて接着剤でくっつけ、元の位置に戻して残すことが出来ますが、無理して残して前後の歯に悪影響を及ぼしたり、病巣感染の場となりそれが全身に悪影響を及ぼすことがわかっており、お勧めできません。)
歯の破折はある日突然起こります。
まじめに歯科治療に取り組んでいる歯科医師にとって、最も対処法・予防の選択肢が少なく、悩まされるのが歯根破折です。
割れてしまう歯は、ほとんどが神経(歯髄)を取ってある「無随歯」です。
したがって、神経を取らないようにすることこそが、歯の破折防止のにとって唯一の効果の高い対処法と言えます。
そのために、虫歯の予防が必要となります。
(早期発見・早期治療では限界があります。)
(c) 歯周病の予防
歯周病菌の感染は、乳歯が永久歯に生え替わる頃に感染する場合がありますが、夫婦間で感染することも多いと言われています。
ある大学の先生は、「若い夫婦のお口の中の細菌は似通っているが、年齢が高くなるに従い異なる細菌が存在するようになる」と言っておられました。
お子様のおられる保護者(又は同居している祖父母)、結婚している夫婦はあらかじめ歯周病細菌検査を行い、もし悪玉菌が多く存在するようなら、
・ 歯磨きなどのセルフケア
・ 特殊な乳酸菌を使用したプロバイオティクス
・ 歯周内科などのアンチバイオティクス
などにより、歯周病菌を減少させ、その状態を維持させるべきであるとさくら総合歯科院長は考えています。
(d) 歯ならび・かみ合わせ異常の予防
成長期の歯ならび・かみ合わせ異常の原因は
・ 口呼吸
・ 舌の機能異常、
・ 噛む回数がすくない
ことが主な原因です。
この件については、小児矯正のページまたは歯を抜かない矯正のサイトをご覧ください。
唇や舌の機能は乳幼児期に確立されるべきものですが、近年子育ての傾向がかわり、早期に断乳したり離乳食の与え方に問題があることが唇・舌の機能異常の原因ではないかと推測されています。
この件に関しては、マイナス2歳からの予防歯科のページをご覧ください。
一方、成長が止まってからの歯ならび・かみ合わせ異常の主な原因は
・ 態癖(たいへき)
・ 親知らずの影響
です。
(イ) 態癖
・ 横向き寝・うつ伏せ寝
・ 頬杖
・ 唇のくせ(巻き込み・すぼめるなど)
により、歯は少しずつ移動します。
歯は外力により移動しますが、舌や唇の力は歯が動く力よりはるかに強く、その結果歯ならびやかみ合わせが崩れます。
また、頭の重さは成人で5s程度あり、横向き寝やうつ伏せ寝・頬杖により歯にかなりの力がかかるため、歯は移動します。
有名な内科医が「うつ伏せ寝健康法」を推奨しておられますが、歯科知識をお持ちの内科医は、それがとんでもないことであると言っておられます。
かみ合わせが崩れると、
・ 顔の左右非対称化
・ えらかはる
・ 目がこわばり、小さくなる
・ 鼻の下からあごまでの距離が短くなる
・ 顔色が悪くなる
・ 姿勢が悪くなる
・ 頭痛・肩こり・腰痛が起こる
など、様々な問題が起こります。
(ロ) 親知らずの影響
親知らずは成人する前後に根が成長しますが、現代人は顎が小さいためまっすぐはえることが出来ず、歯根が完成するまで前の歯を前方に押します。
その結果、前歯などの歯ならびが悪くなります。
(1) 虫歯予防は何故必要なのでしょう
1.虫歯は歯科医院で治療しても治りません!
治療してない歯と、歯全体を金属で覆うかぶせもの(クラウン)を装着した歯と、どちらが虫歯になりにくいと思われますか?
実は治療していない歯の方が、虫歯になりにくいのです。
皆様はご自身のお口に入っている金属等のかぶせものが、歯にピッタリ合っているとお思いですか?
詰め物やかぶせものは、大変複雑な過程を経て作成されます。
その過程一つ一つに変形要因がありますので、実は歯にピッタリ合うことはありません。
当然その隙間は細菌が入り込むには充分な広さとなります。
また、歯は噛む度に強い力を受けるため、僅かにたわみます。
たわむ度に、詰め物と歯を引きはがす力が加わり続けます。
更に、お口の中には熱いものから冷たいものまで、様々なものが入ってきます。
歯はそのたびに膨張・収縮を繰り返しますが、当然詰め物も膨張・収縮します。
ところが、膨張等の量は歯とは差があるので、何度も膨張・収縮を繰り返す度にやがてその境目にはがれが生じてきます。
最初のうちは境目は目に見えませんが、細菌が侵入するには充分な広さとなり、やがて中に虫歯が発生します。(これを二次う蝕と呼びます。)
その結果再治療となるのですが、残念ながら元の詰め物より削る範囲が広くなり、前の詰め物より取れやすくなってしまいます。
また、残った歯も薄くなるので余計にたわみやすくなり、更に取れやすくなったり、ひどい場合には歯が欠けてしまいます。
この様なことを繰り返しながら、やがて神経を取らなければならなくなり、最後は抜歯に至ります。
以上のように、一度治療を施すと、悪循環のサイクルにはまってしまいますので、予防によって治療の必要がないようにすることが重要なのです。
つまり、歯医者で虫歯を治療しても、健全な未処置歯より遙かに虫歯になりやすい状態になってしまい、元通りに治るわけではないのです。
この件に関しては、CO(シーオー)について を参考にしてください。
一方、大きな虫歯でかぶせもの(クラウンやブリッジ)を装着した歯が抜歯に至る原因の第1位は歯周病(62%)、ついで歯根破折(16%)、根っこの先の病気(8%)、虫歯(6%)となります。
このデータより、かぶせものをした歯は、歯周病になりやすいことがわかると思います。
かぶせものは、先に説明したように歯に完璧に合わせることは不可能ですので、かぶせものと歯の境目に細菌がたまることにより、歯周病が発生しやすくなります。
また、日本の保険制度で使用されている金属は摩耗しにくく、長期間経過すると知らないうちに歯に無理な力がかかるようになり、このことが歯周病の進行を大幅に促進する原因となる場合があります。
したがって、歯周病予防の一手段としても、虫歯予防が重要であることが、お解りいただけると思います。
2.初期の虫歯は、歯科医院で治療しなければ治ります!!
初期の虫歯は、的確な対応を行えば、治療しなくても元通りに治ります。
『治療しないのに治るとはどういうことか』
と疑問に思われるかもしれません。
実は唾液が初期の虫歯を治してくれます。
虫歯は、虫歯菌の産生する酸によって歯が溶かされて起こります。
(これを脱灰(だっかい)といいます。)
唾液の中には、この酸を中和する作用があります。
酸が中和される段階で、一旦溶け出した歯の成分(カルシウムなど)が歯に戻されます。(再石灰化)
その結果、歯を削らずに済み、上に述べた二次う蝕が起こらない、最高の状態に戻すことが出来ます。
つまり、削らず唾液の力で治すことこそ、最高の治療法なのです。
但し、唾液の力を最大限引き出すため、患者さん自身の行う正しいホームケアと、歯科医院で行うプロフェッショナルケア、すなわち予防処置が必要となります。
初期虫歯は完全に治せます!のページも参考にしてください。
(2) 歯周病予防は何故必要なのでしょう
歯周病により骨の吸収が始まると、本人がどんなに頑張って歯を磨いたとしても、絶対磨けない部分が出来てしまいます。
また、ある程度進行してしまうと、手術等を行ったとしても、ご自身で掃除できない部分をなくすことが出来なくなります。
下の写真をご覧になって下さい。これは歯周病でぐらぐらになり、抜歯した歯です。
一番手前の部分が歯の根の先端ですが、右下の部分は黄色っぽく、比較的綺麗です。
一方、他の部分には茶色や白っぽい汚れが付着していますが、これはすべて歯石です。
元々、かぶせものの下の部分は黄色っぽい色だったのですが、歯周病で歯磨きのできない部分ができ、そこに細菌が入り込み、その結果歯石まで付着してしまったのです。
こうなってしまっては、細菌を取り除くことは不可能で、その結果抜歯しなければならなくなってしまいます。
歯周病は、この様な自分で掃除の不可能な部分がたくさんできてしまわないうちに、予防することが重要なのです。
(3) 歯ぎしりは何故危険なのでしょう
歯ぎしりはをしない人は、、実は殆どおられません。
歯ぎしりは多くの場合(ギリギリという)音が殆どしない状態で行われており、気がついていないだけなのです。
歯ぎしりは時に歯に致命的なダメージを予兆なしに与え、しかも完全にその影響を排除できないため、歯科医師にとって最も恐ろしい敵、といっても過言ではありません。
歯ぎしりの詳細についてはこちら