はじめに

来院される患者さんの訴えを聞いていると、痛み=むし歯 と考えておられる方が多いようです。
しかし、実際はむし歯とは直接関係のないことが、結構多いのです。

このページでは、ご自身の症状がどのような病気である可能性が高いか、自己診断をしていただく手助けとなるよう作成致しました。
皆さんも、頑張って自分の病気を当ててみて下さい。
なお、実際にはレントゲンや様々な検査をしないと、正確な診断が出来ません。
自己診断は、あくまで参考にとどめて下さい。

症状別メニュー


1.冷たいものがしみる
2.熱いものもしみる
3.何もしなくても痛い
4.かむと痛い
5.口臭が気になる
6.口がかわく
7.甘いものがしみる
8.歯がぐらぐらする
9.詰め物や差し歯が取れた
10.口をあくと痛い
11.入れ歯が痛い
12.歯ならび・かみ合わせが悪い

1.冷たいものがしみる

歯科医院に来られる方の訴えのうち、恐らく最も多いのが『冷たいものがしみる』、という症状です。
冷たいものがしみる原因の殆どは、知覚過敏と呼ばれる病気です。
もちろんむし歯でもしみる場合がありますが、初期のむし歯の場合、殆どしみることはありません。

知覚過敏

歯の表面が何らかの理由により削れ、歯の神経(歯髄)に刺激が伝わりやすくなった状態。
歯が削れる理由は、

 

 ・ 歯ぎしり・くいしばりにより、歯と歯ぐきの境目付近の歯の結晶が崩れ、へこんでしまう
 ・ 歯ぎしりにより歯の先っぽが削れる
 ・ 歯磨きの際の力の入れすぎ
 ・ 歯磨き粉による歯の摩耗
 ・ 様々な癖

 

などがあげられます。

市販の歯磨き粉は非常に粗い研磨剤(みがき砂のようなもの)が入っており、柔らかい歯の根元の部分はどんどん削り取られてしまうので、注意が必要です。

むし歯

むし歯が進行すると、冷たいものがしみるようになります。
ただ、むし歯でしみるようになった場合は既にかなり進行し、後述する歯髄炎になってしまっている場合が多いようです。
(歯髄炎になると、多くの場合熱いものもしみるようになります。)

2.熱いものがしみる

歯髄炎

むし歯が歯の神経(歯髄)に達し、バイ菌が歯髄に入り込んでしまった状態。
冷たいものと熱いものの、両方がしみるのが特徴です。
この場合、歯の神経を取る(抜髄といいます)必要があります。
ごく初期の場合、当院ではドックベストセメントを使用して、神経を残す場合があります。

根尖性歯周組織炎

神経を取った歯、又は神経が死んでしまった歯の、根っこの先に病気が出来た状態。多くの場合『しみる』という症状はありませんが、時に熱いもののみがしみることがあります。
また、『かむと痛い』『根っこの先のあたりが腫れて痛い』 『根っこの先のあたりの歯ぐきがふくれた』 などの症状が出る場合もあります。

3.何もしなくても痛い

歯髄炎

上記参照。
最初は冷たいものや熱いものがしみるだけですが、やがて何もしなくても痛くなります。多くの場合、強い痛みを伴います

根尖性歯周組織炎

上記参照。
この病気は、普段全く症状がありませんが、突然かむと痛くなったり、時に夜も眠れないほどの激痛を伴います。

智歯周囲炎・歯冠周囲炎

智歯周囲炎とは、親知らずの周りの歯ぐきにバイ菌が繁殖し、炎症を起こした状態。ひどいときには、何もしなくてもずきずきする、つばを飲み込むとき痛い、顔が腫れる等の症状が現れます。
親知らず以外(例えばはえかけの六才臼歯)の周囲の歯ぐきにも、同様の症状が現れる場合があります。
この場合、歯冠周囲炎とよびます。

4.かむと痛い

咬合性外傷

歯に無理な力がかかっている場合に、かむと痛いという症状が出ることがあります。
この様な状態を、咬合性外傷(こうごうせいがいしょう)といいます。

「むし歯ではないか?」と思って来院される方が多いのですが、かむと痛いと訴える患者さんの殆どは、むし歯が原因ではありません。
むし歯ではない、と説明するとホッとされる方が多いのですが、実はこれを放置すると長い間に歯が取り返しのつかない状態になってしまうので、早期に対応(治療)することが重要です。

歯周病

バイ菌の影響で、歯を支えている骨がなくなってしまう病気。
かむと痛いという症状が出た場合は、多くの場合歯周病がかなり進行しています。

根尖性歯周組織炎

上記参照。
時に激痛を伴いますが、症状が強くならずに消失することもあります。
痛みがなくなっても病気が治ったわけではなく、痛みなしで進行して行きます。
痛みが出る前に治療するのがベストです。

上顎洞炎(副鼻腔炎)

いわゆる『蓄膿』のこと。
鼻の孔(鼻腔)につながっている、副鼻腔と呼ばれる空洞にバイ菌が入り込み、炎症を起こした状態。
「上の奥歯がかむと痛い」と訴えて来院された患者さんの中に、この病気が原因の方がおられます。(意外に多い)
歯が痛いのでまず歯科医院に来られるのですが、実は原因はお口の中ではなく、耳鼻科領域にあります。
このように、他に原因があるのに歯が痛く感じる状態を、『関連痛』と呼びます。

知覚過敏(象牙質知覚過敏)

上記参照。
歯が歯ぎしりや酸蝕(酸で歯が溶けた状態)などですり減り、歯の内部の「象牙質」と呼ばれる部分が露出したとき、噛んだ際に「ズキン」という痛みを生じる場合があります。

金属の詰めものの取れかけ

金属の詰めものが取れかけていると、噛んだ際に詰めものが歯と擦れあい、その結果鋭い痛みを生じる場合があります。

5.口臭が気になる

生理的口臭

健康な人にも発生する口臭。

会話中に、相手が不快を感じる場合があります。
時に本人も自覚します。

 

口臭を訴えて来院される方の多くは、実はこの生理的口臭です。
生理的口臭は、歯周病治療を行っても治らない場合が多く、『ほんだ式口臭治療』を受けていただく必要があります。
生理的口臭は、お口の渇きが原因で強くなることがわかっています。

病的口臭

歯周病、扁桃炎、副鼻腔炎など、原因となる病気があり、それが原因で生じる口臭。
第三者が常に不快を感じます。

他臭症

本人は気付きませんが、会話時に他人に不快感を与え、それを他人に指摘されて悩む症状。

自臭症

本人が自覚する口臭や、口臭があるのでは、と悩む症状。
口臭について、更に詳しく知りたい方は、口臭外来のページ

6.口がかわく

ドライマウス

唾液の分泌量が減少すると、口が渇きます。
これをドライマウスと言い、増加傾向にある病気です。
ストレス・加齢・薬物の使用などが原因で起こります。
詳細は、ドライマウスのページ をご覧下さい。 

7.甘いものがしみる

脱灰による知覚過敏

歯磨き不足等により、歯の表面が僅かに溶けた状態。
歯の神経(歯髄)に刺激が伝わりやすくなり、甘いものを食べたときなどに痛みを感じます。
甘いものが歯の表面に出来た歯垢(バイ菌の塊)に接すると、バイ菌が強烈な酸を出し、それが強い刺激となり歯の神経(歯髄)に影響を及ぼし、痛みを感じます。
酸が唾液により中和されていくと、痛みが消失して行きます。
「甘いものがしみる」と訴えて来院された患者さんの大半は、これが原因です。

むし歯

歯の神経(歯髄)付近にまで進行したむし歯があると、甘いものがしみる場合があります。

8.歯がぐらぐらする

歯周病

バイ菌の影響で、歯を支えている骨がなくなってしまう病気。
重症になると、歯が揺れるのが自覚できるようになります。
ちょっとさわっただけで大きく揺れる場合は、歯周病の末期症状です。
歯周病についての詳細は、専門医の歯周病治療のページへ

冠の脱離

かぶせもの(差し歯)が取れかけの場合に、一見歯がぐらぐらになったような状態になることがあります。

歯の破折

歯が割れてしまった場合に、歯がぐらぐらする場合があります。

9.詰め物や差し歯が取れた

二次う蝕(二次カリエス)

かぶせものや詰め物は、長い間に歯から剥がれ、歯との間に隙間が出来てしまいます。
その隙間にむし歯菌が入り込み、外からは見えない奥の方でむし歯を作り、広がります。やがて詰め物などを支えている部分が少なくなり、取れてしまいます。
詰め物や差し歯が取れる原因の多くは、この二次う蝕です。
二次う蝕についての詳細は、『初期むし歯を削らずに治す、特殊な治療!』のページへ

脱離

強い衝撃が加わると、上記二次う蝕がなくてもかぶせものや詰め物が取れてしまう場合があります。
歯ぎしりを頻繁にしている方は、脱離しやすい傾向にあります。

歯根破折

歯の根っこが真っ二つに割れてしまう状態。
歯が割れてしまうと、かぶせもの(差し歯)や詰め物が取れてしまいます。

10.口をあくと痛い

顎関節症

あごの関節に異常を来し、以下の症状を呈した状態。

 

 ・ 口をあくと耳の前が痛い。
 ・ かんだときに耳の前が痛い。
 ・ ほっぺた付近の筋肉が疲れる。
 ・ 口をあいたとき、あごの関節で音がする。
 ・ 他

 


詳細は、顎関節症のページをご覧下さい。

11.入れ歯が痛い

入れ歯の不適合

入れ歯がお口に中にあっていないと、強くあたる部分が痛くなります。
痛いのを我慢して放置すると、粘膜に傷が出来てしまいます。

入れ歯の土台となる部分が低い

入れ歯が乗っかる部分の歯ぐき(正確には顎堤といいます)が極端にやせて小さいと、入れ歯が不安定となり、痛みを感じる場合があります。
また、時に「オトガイ孔」と呼ばれる部分が入れ歯にあたり、激痛を感じる場合があります。

入れ歯のかみ合わせが悪い

保険の入れ歯は作成段階で大きく変形し、なかなか正確なかみ合わせを作ることが出来ません。
かみ合わせが悪いと、入れ歯がかんだときにずれたり強くあたるため、痛みを感じます。

姿勢の悪化


かみ合わせは、姿勢の影響を受けます。したがって、姿勢の変化の影響で入れ歯が痛くなることもあります。

唾液が出ない

唾液は入れ歯と歯ぐき(正確には顎堤)の間で潤滑剤の役目を果たします。
高齢になると唾液の量は減少する場合が多く、また内科疾患(高血圧等)の薬を服用するようになると、その副作用で唾液の分泌量が極端に減少する場合があります。
唾液が少なくなると入れ歯と粘膜がこすれ、強い痛みを感じる場合があります。
この件については、 ドライマウスのページ もご覧下さい。

12.歯ならび・かみ合わせが悪い

歯ならびが悪いと・・・

見た目が悪くなるのは、ご存じの通りです。
歯磨きがしにくいので、むし歯・歯周病になりやすくなります。
時に、発音がしにくくなることがあります。

かみ合わせが悪いと・・・

あごの関節に変調を来す、『顎関節症』という病気になることがあります。
歯に無理な力がかかり、歯周病の進行速度が著しく速くなります。
あごの位置関係に異常を来し、、顔つきが変わってしまいます。
歯ならび・かみ合わせの異常については、さくら総合歯科ベビーキッズ歯ならびクリニックの歯を抜かず歯ならびを治す健康的こども矯正のサイトをご覧下さい。

歯ならび・かみ合わせ異常の種類
上顎前突

いわゆる “出っ歯”

下顎前突・反対咬合

いわゆる “受け口”

叢生

いわゆる “乱ぐい歯”
がたがたの歯ならび

開咬

前歯がかみ合わない状態

過蓋咬合

前歯が深く噛みこみすぎた状態
下の前歯が上の前歯に隠れて、殆ど見えない状態 

上顎犬歯低位唇側転位

いわゆる “八重歯”

交叉咬合

上の臼歯と下の臼歯が片方反対に噛み込んでいるもの。

サブメニュー