はじめに
2010年6月25日(金)に、TBS系列の放送局で
がっちりアカデミー 『歯医者さんのソントク』
が放送されました。
この番組は、経済の専門家が多方面の損得を、わかりやすく解説する番組です。
今回は、歯医者にどのようにかかるのが本当は得になるのか、という一般にはまだまだ知られていない意外な事実に関する特集でした。
ここでは、その番組の内容を紹介します。
(更に番組中に触れられなかった事実も、一部付け加えています。)
1.世界と比べて日本は、安くむし歯を治してもらえるから「ソン」!
番組中、金子先生は
『安いから「トク」かと思われるかもしれませんが、そこに落とし穴があるのです!
安いがゆえに、実は私たちは大ゾンしてるんです!』
と述べられました。
この項では、なぜ気軽に歯科治療を受けられることがデメリットになるか、について解説します。
(1) むし歯大国 日本
日本はむし歯大国であることをご存じですか?
日本人の平均むし歯本数は、永久歯28本(親知らずを除く)のうち、15.67本です。
諸外国では、歯科治療はかなり高額で、誰でも受けられるとは限りません。
幸い、日本は国民皆保険制度により、ほぼ国民のほぼ全員が歯科治療を受けられます。
このことを当たり前のように思っておられる方が多いかもしれませんが、世界的にも希な制度なのです。
(2) ずば抜けて安い日本の歯科治療費
しかも、日本の歯科治療費は世界的に見てずば抜けて安く、これが歯医者に気軽に通える最大の理由となっています。
例えば、下のグラフは『根管治療』とよばれる歯の神経を抜いたりする治療の費用の国際比較ですが、諸外国は治療費が日本より桁違いに高いことがお解りいただけると思います。
日本は治療費が非常に安いので、気軽に歯科治療を受けられるのはよいのですが、実は
「安いからいつでも治せる」ということで、日本人はあまり歯のメンテナンスをしない」
という特徴があります。
(3) 日本人と外国人における歯医者に対する考え方の違い
日本で街行く人たちに「最近は医者に行ったかどうか」聞いてみると・・・
「むし歯で耐えられなくなったら行くけど、痛みがしずめば行かなくていい!」
「痛くなるまで行かない!」
「2年くらい行ってないです。」
「むし歯もあるけど放置してます!」
などの意見が多く見られます。
一方、同じ質問を外国人の方にもしてみると・・・
「6ヶ月ごとに歯のクリーニングに行き、今までむし歯になったことはない!」
「1年に1回行きます」
「年に2〜3回、クリーニングとレントゲンを撮りに行きます。アメリカでは普通です」
という意見が多く見られます。
たしかに、外国人の皆さんは日本人に比べると、むし歯にならないよう歯のケアに対する意識がかなり高いようです。
そんな意識の差がむし歯の数にハッキリと表れています。
(4) 治療費が安いのが、むし歯大国の原因の一つ
上のグラフは主要先進国の、12歳児のむし歯の本数を比較したものです。
残念ながら日本はカナダについでむし歯が多い国なのです。
イギリスやドイツと比べると、むし歯の数は倍以上です。
世界と比べて治療費が安く済む日本は、歯医者にいつでもいけるという油断から、ついついむし歯になる人が多いといえます。
(5) 日本以外の先進国にむし歯が少ないもう一つの理由
もう1つ日本人にむし歯が多い理由として、水道水の違いが挙げられます。
日本では、水道水を飲用として用います。
アメリカをはじめとする先進国の水には、フッ素が入っている場合が多く、それに対し日本ではフッ素は入っていません。
「フッ素」という物質には、歯を強くしたり、むし歯菌の働きを抑える効果があります。
そのため、海外では、低濃度の「フッ素」を水道水に入れている国が多いのです。
しかし、「フッ素」は多量に体に入れると害があるという説もあり、日本では、「フッ素」を水道水に入れることに関しては、今も賛否が分かれています。
2.むし歯じゃないのに歯医者に通うと、治療費が年3万円の「トク」!
むし歯ではないのに歯医者に通うと得をするなんて、と思われるかも知れません。
しかし、これは発想の転換なんです!
日本人は1年間にだいたい4万円くらい歯医者さんに使っています。
しかし、半年に1回定期健診に行って、
・ 唾液の検査
・ むし歯の検査
・ クリーニングなど
普段からケアをしてもらえば、年間1万円くらいで済みます。
3.「日本人の歯がどうやってなくなっていくのか?」
さらに小さなむし歯も含めると、日本人(20歳以上)の97.7%の人がむし歯を持っています。
上のグラフをご覧下さい。
15〜19歳のところの白い部分がむし歯のない人です。
青い部分は、悪い所を削って「詰めもの」をしている人。
そして20代を見てみますと、青い部分が一気に増えます。
緑色の部分は「被せもの」。
この「被せもの」をしなければいけない人たちが増えています。
むし歯のない人は殆ど存在しません。
さらに、30代になると、黄色い部分が出てきます。
これはブリッジと言いまして、歯がなくなった部分の前と後ろの歯を削って、2本で3本の歯をつくるという治療法です。
ですから30代で歯のない人がいるということになります。
40代になると、ピンクの部分が出てきます。これは「入れ歯」です。
そして、50代、60代になるとこれがどんどん増えていきます。
この辺りからは、「歯周病」なども歯の抜ける原因になっており、75歳以上の88%の人が入れ歯になってしまいます。
では、むし歯にならないためにはどうしたら良いのでしょうか?
キーワードは「ツバ」です。ツバとむし歯はものすごい関係があります。
むし歯菌の1つであるミュータンス菌は、歯の表面にくっつき、強い酸を発生させてむし歯にしていきます。
上は、1日の暮らしのなかで、口の中がどれくらい酸性になっているかを表にしたグラフです。
下に行けば行くほど、酸性が強くなり、むし歯になりやすい状態です。
人間は食事をすると、ミュータンス菌が出す酸によって、1回歯が溶けてしまいます。毎回溶けてるんです。
しかし、食事が終わってしばらくすると、ツバの力で中和され、中性に戻っていきいます。
そうすると、溶けた歯は、元の歯に修復しようとカルシウムやリンを歯にくっつけ、だんだん元の歯に戻していきます。
それと「ツバの質」と言って、酸性を中性に戻す力は強い人と弱い人がいて、弱い人はむし歯になりやすいことが分かっています。
また、1回食べた後、戻ろうとする間に「おやつ」等の間食をすると、ずっと下の酸性のところにいることになり、むし歯になりやすくなります。
ちなみに完全にてっぺんの部分まで、再生するには2時間くらいかかります。
このように、「歯」と「ツバ」の関係は切っても切り離せません。
そのため「自分のツバの量はどれくらいなのか?」、「自分のツバの質は良いのか?悪いのか?」など、むし歯予防のためには、自分のつばの状態を細かく知っておくことが重要になってきます。
では、歯の予防診断に力を入れている最新の歯医者とは一体どのようなものなのでしょうか?
4.歯の予防診断に力を入れる最新の歯医者とは!?
日本の55歳以上の人が10年で失う歯の数は平均7.5本!
番組では、それをたった0.7本に抑えてくれる歯科医院を紹介していました。
以下はその歯科医院の紹介です。
足立区の住宅街にある歯医者「D.land」!
早速、番組スタッフが最新の歯科検査を体験していました。
まずは、検査から治療までの流れを丁寧に分かりやすい言葉で教えてくれる「トリートメントコーディネーター」からの説明を受けます!
そして、むし歯の有無や進行状態をチェックする「う蝕検査」を受けた後、歯と歯茎の溝を測る「歯周病検査」に!
溝の深さが1〜2ミリならOK!3ミリ以上なら歯周病になっている可能性がある、と先生はおっしゃっていました。
そしてお次は…
歯の写真の撮影です。
レントゲンかと思いきや、一眼レフでパシャリ!
これは、口腔内写真撮影といって、自分ではなかなか見えない自分の歯をハッキリと目で確認するためのものだそうです。
また、最初の様子を記録することで、キレイになっていくのが分かるため、日々のケアもモチベーションがアップするんです!
そして、計11枚のレントゲン写真を撮った後は、口の中の細菌チェック!
むし歯の原因となる2つの細菌、「ミュータンス菌」と「ラクトバチラス菌」のどちらの菌がどれくらいいるかを知ることで、むし歯の予防法は変わってきます。
そのために大切なのが「ツバ」のチェックなのです。
この噛めば噛むほど唾液が出てくるゴムのような不思議な塊を5分間噛み、出てきたツバを採取!
ツバの量はかなり個人差があって、健康な人の平均は8ml。
多ければ多いほど良いんだそうです!
このツバと、歯の隙間にたまった汚れの中から菌を採取し、数日間培養します。
と、ここで検査は終了!
この検査結果を元に、口の中の状態に合わせて効果的なむし歯予防の方針が決められるんだそうです!
ミュータンス菌が多かった人に効果的なのは、「100%キシリトールガム」!!
このガムを1日4回、20分以上かみ続けることで、ミュータンス菌の働きを弱めることができるんです!
そして、ラクトバチラス菌が多かった人に効果的なのは、自分に合わない「詰めもの」を再治療すること!
ラクトバチラス菌は「詰めもの」の隙間が大好きなので、隙間のない自分に合った「詰めもの」に変えると、激減するんです!
今回の検査は、本来2日に分けてやるところを、特別に1日で行いましたが、その費用はトータルで約1万円!一瞬高そうに思えますが、一生涯の治療費が減ることを考えれば超おトクです!!
スタジオでは前田先生が、効果的なむし歯予防の歯みがき法を教えておられました!
前田先生 『歯ブラシに、フッ素入りの歯磨き粉を1cm出し、それをできるだけ泡立てて2分間磨きます。
そして、10ccの水で1分間ブクブクうがいをし、吐き出したらもうすすがない!これがむし歯に対する効果的な方法です!』
さらに、歯みがき以外にもむし歯予防の方法が!
前田先生:キシリトールガムも有効です!むし歯予防のことを考えると、普通のお店で売っているガムではなく、キシリトール100%のものが良いです!
歯医者さんで売られているものです!
ポイントは、味がなくなっても15分以上噛むことです!
そうすると、唾液がいっぱい出て、歯を元に戻してくれるんです。
5.番組の感想
このページは、TBS系列で放送された番組の内容を引用して紹介しています。
今回の放送の内容は、実はさくら総合歯科でも9年ほど前より取り組んでいます。
当時は唾液の検査を行っている歯科医院は県内では殆どなく、都市部を中心としたごく一部の歯科医院でしか行われていませんでした。
唾液の検査について、歯科医師ですら詳細を知らない者が多かった時代です。
当然、大半の患者さんにはなかなかご理解をいただけず、苦労しました。
しかし根気よく続けてきた結果、最近では多くの患者さんに行っていただき、予防の対策を立てる際の重要な資料となっています。
現在ではネットの普及により唾液検査を手がける歯科医院が急増してきました。
しかし、見つかった問題に対する対策の幅広さは、古くから手がけている当院に1日の長があると自負しています。