1.穴の開いたむし歯は治せません!

「歯医者のくせにむし歯が治せないなんて」 と思われるかもしれません。

 

 

通常、むし歯は削らなければ治療できません。
もちろん、歯を削って詰めることにより、機能は回復させることが出来ます。
しかし、「風邪が治る」「骨折が治る」と言う場合、ほぼ元通りになるのに対し、むし歯を削って詰めても、元とは全く異なる状態に変化してしまいます。

 

変化しても、より強くなるのであれば問題ないのですが、残念ながら治療により歯は弱くなり、

 

・ むし歯の再発
・ 歯周病の誘発
・ 歯の根の破折
・ 根の先に病気が出来る
              など

 

歯の寿命を大きく左右する病気の原因になってしまいます。

 

『雨降って、地固まる』
ではなく、

 

『弱り目に祟り目』
になってしまうと言えば、おわかりいただけるでしょうか?

 

『風邪は万病の元』
と言われますが、

 

『むし歯治療は万病の元』
と言ってもよいのではないか、と私は考えています。

 

 

(1) むし歯の再発

むし歯のために削ったところを何かで詰めたとしても、高い確率で詰め物と歯の境目からむし歯が出来てしまいます。
これを『二次う蝕(二次カリエス)』とよびます。

 

お口の中へは、低温から高温まで様々なものが入ってきます。
また、かむ力は数十sに及びます。
つまり、大変過酷な環境なのです。

 

したがって、詰めたものが『一生問題を起こさない』ことは殆どありません。

 

歯の詰め物はやがて歯から剥がれてきます。
すると、目には見えない僅かな隙間ができ、そこにむし歯菌が侵入します。

 

隙間に侵入したむし歯菌は、外から見えない部分でむし歯を引き起こし、内部で広がります。
気がついたときにはむし歯は既に拡大し、歯をたくさん削って治療することになります。

 

成人の歯科治療の多くは、この二次カリエスの治療や脱離(詰め物などが取れること)の治療、つまり、同じ歯を何度も治す『再治療』なのです。

 

むし歯治療を何度か、繰り返しているうち、やがて歯を抜かねばならなくなってしまいます。

 

つまり、むし歯は治療しても『治る』のではなく、何とか取り繕っているだけなのです!

 

(2) 歯周病の誘発

歯医者でお口の中に装着される歯の詰め物、かぶせものは当然歯にぴったり合っていると多くの方は考えておられるかもしれません。
しかし、実は歯にピタリと合うことはありません。
自費診療で高価な材料を使用し、時間をかけてこだわって治療したとしても数十ミクロンの隙間が出来てしまうと言われています。

 

一般的な保険診療や、時間をかけない自費診療では数百ミクロンの隙間が出来てしまうことが多い、と言われています。

 

そこには細菌が滞りやすくなります。
これはむし歯の原因にもなるのですが、歯ぐきの周囲に及ぶかぶせものなどでは、滞った細菌がどんなに歯磨きしてもきれいにすることは出来ず、歯周病の原因にもなります。

 

(3) 歯の根の破折(歯根破折)

むし歯治療を繰り返しているうちに、むし歯は歯の神経(歯髄)に及び、神経を取らなければならなくなります。

 

歯の神経は専門的には歯髄と呼ばれ、血管・神経・歯を作る細胞など、様々な細胞からなる組織です。
この歯髄は歯を修復する重要な機能を有しています。

 

歯には先に述べたように大変強い力がかかるので、使っているうちに少しずつ見えない亀裂が入ります。
ところが、歯髄が健康であればその亀裂を修復してくれるので、歯髄のある歯が大きく真っ二つに割れてしまうことは殆どありません。

 

ところが、治療によりひとたび歯髄を取ってしまうと、その瞬間からこの修復作用が全くなくなります。
つまり『枯れ木』状態になってしまいます。
その結果、長年使用しているうちに亀裂は内部でどんどん広がり、やがて歯が根っこまで真っ二つに割れてしまいます。

 

 

歯が割れてしまうと、多くの場合抜歯するしかなく、歯を失う結果となります。

 

この歯の破折は前触れなく突然起こり、しかも完全に防ぐ方法はありません。
つまり、予防や早期治療で対応可能なむし歯や歯周病に比べて恐ろしい病気、といえます。

 

良心的な治療をしている歯科医師にとって最も恐ろしく、どんなによい治療しても完全に防げない歯根破折を起こさないためには、

 

歯の神経を取らなくて済むようにすることが重要で
       ↓
そのためには予防が第一

 

です。

 

 

(4) 根の先に病気が出来る

根尖性歯周組織炎(3)で説明したとおり、歯の神経を取ると歯は弱くなります。
しかし神経を取ったときの問題はそれだけではありません。
根っこの先に『根尖性歯周(組織)炎』という病気が出来ます。

 

 

この病気は普段は痛みも違和感も全くありません。
しかし、免疫力が落ちたとき突然痛みだし、ひどいときには激痛を起こしたり、顔まで腫れることも珍しくありません。

 

また、痛みが全くない状態が続いたとしても、それが免疫系に異常を来し、遠隔の諸臓器に反応性の器質的および機能的な二次疾患を起こすことが、近年明らかになってきました。
そしてそのような問題を起こす病変は『病巣感染』と呼ばれるようになりました。

 

つまり、歯の神経を取ることは、皆様の想像以上に局所のみならず全身に大きな影響を及ぼし、運が悪いと人生にまで大きな影響を及ぼすこともあるので、看過できない問題といえます。

2.では、どうすればよいのでしょう?

(1)穴のあく前に(削らず)治療する

穴があく前の初期のむし歯であれば、削らず治療できます。

 

・ むし歯のリスクの高い部分を丁寧に磨く
・ 唾液の力を有効利用する
・ フッ素を有効に利用する
・ カルシウムを含んだ商品を応用する

 

などの方法を駆使して治療します。

 

 

参考として、初期むし歯は完全に治せますのページをご覧下さい。

 

(2)予防する

むし歯は予防が可能です。
予防するのが最良の対応法と言えるでしょう。
行うことは(1)と共通点が多いのですが、具体的には予防歯科のページをご覧下さい。

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