1.最近当院に来院される、お気の毒な患者さんたち
近年歯科医院に定期的に通うことの重要性が、日本でも認識されつつあります。
既に1〜3ヶ月に1回歯医者に通っている方もおられることでしょう。
ところが、1ヶ月に1回歯科医院に通って、クリーニングを受けていたにも関わらず、どんどん病状が悪化してきたため、ホームページを見て当院に来られる方が多数おられます。
更に、当院の旧スタッフも、同じ目的で毎月他の歯科医院に通っていましたが、一部の歯は歯周病がひどく、排膿(歯と歯ぐきの境目から膿が出ること)が認められました。
これらの方は、何れも
『歯を大切にしたい』
と言う気持ちが普通の方よりも強いにも関わらず、歯科医療がその期待に全く沿えていないのです。
このページは、その様な方を何とか救いたい、という一心で作製いたしました。
今まで歯医者に定期的に通っていた方も、これから通おうとしている方も、このページを是非お読み下さい。
2.お口の健康を守るためにもっとも重要なことは
メインテナンスは、欧米では随分前より普及しています。
その結果高齢者の歯の残存数も、日本人に比べてかなり多くなりました。
近年、歯周病の『メインテナンス』、『クリーニング』と称して、数ヶ月に一度歯のお掃除を行う歯科医院が、都市部を中心に増加してきています。
様々な歯科関連のホームページを閲覧していると、
『定期的に歯科医院にクリーニングに通い、歯の健康を守りましょう』
といった、あたかもクリーニングだけで歯の健康維持ができるかのような記述が目に付きます。
それでは、歯科医院での歯のクリーニングを定期的に行うだけで、歯は守ることができるのでしょうか?
答えは『No』です。
歯を守る上で最も大切なのは、
専門家の指導を受けた方法で、歯磨きを充分な時間をかけて行うこと
です。
また、重症の方は手術等を行って、自己管理の行いやすい状態にした方がよい場合が多く、時間をかけて治療を行う必要があります。
本当のPMTCそれらのことを実践した方が、正しいクリーニングを定期的に受けて、始めて十分な効果を得ることができるのです。
このこと(適切な自己管理の重要性)は、世界で最も早くからメインテナンスの考えを実践・提唱してこられたアクセルソン先生が講演をされる際、常に強調しておられます。
この『適切な自己管理』とは、歯周病やむし歯のリスクの高い部位に重点を置いた歯磨きのことを指します。
因みに、歯周ポケットの深い方で、一般的な歯科医院で行われているレベルの歯磨き指導を受けられた患者さんの歯周ポケットからは、定期的なお掃除の際に多くのどろどろなバイ菌の塊が出てきます。
ところが、当院で徹底的な歯磨き指導を受けられた方の深い歯周ポケットからは、バイ菌の塊が少ししか出てきません。
ということは、日頃の歯磨きが不足していると、長時間歯周病の原因となる悪玉菌にさらされることになり、たまに歯科医院でクリーニングを受けたとしても、 歯周病の進行は止められません。
このことから、日頃の歯磨きが如何に重要か、お解りいただけるのではないでしょうか。
コラム・・・正しい歯磨きを習得すれば、歯科医院でのクリーニングさえ不要
平成23年5月29日、東京お茶の水で記念碑的講演が行われました。
その講演では、歯磨き指導に長年力を入れ、
・歯周病でお困りの方、
・時には他院で治療できないと見放された患者さん
をも数多く救ってこられた先生方が、歯磨きの重要性についてお話されました。
その中で、ひどかった歯周病が歯磨きと、歯周基本治療と呼ばれる限られた範囲内での治療によって改善し、長年に渡り良好な状態を維持している患者さん方の治療経過が、多数紹介されました。
当時はまだPMTC(定期的な歯科医院におけるクリーニング)という概年が日本に殆ど広まっておらず、当然それを行っていないにもかかわらず、良好な状態が継続できているのです。
これらの経験を元に、講師の先生方は、
『歯磨きがきちんとできてさえいれば、PMTCは不要』
と断言しておられました。
ただし、経過良好な状態を維持するためには、やはり歯科医院に定期的に通う必要があります。
一生懸命歯磨きをしているつもりでも、いつの間にか力を入れすぎていたり、必要な場所に毛先がきちんと当たっていなかったり、など、『磨いている』のに『磨けていない』状態になりがちです。
大リーグのイチロー選手でさえ、スランプに陥ります。
そしてスランプから脱するには、コーチの存在が欠かせません。
歯磨きを正しい方法で行うことも、全く同様です。
セルケアがうまくできているか確認し、歯磨きの再指導を受けることも、定期的に歯科医院に受診することが必要である、重要な理由です。
3.歯周病の治療にとって、次に重要なことは・・・
秋田県に、著名な歯周病治療の大家といえる歯科医師がおられます。
この先生の治療のすばらしさは世界中で認められ、その著書は世界中で翻訳され、歯周病関連書籍のベストセラーとなっているそうです。
この先生は既に還暦を迎えられたベテランで、歯周病治療後数十年良好に経過した治療例を、学会やセミナーで発表されます。
以前行われた学会でも、歯周病の治療は大変難しいことについて述べておられましたが、特に強調されていたのは、
『歯周病はきちんと治療し、的確なメインテナンスを行えば、長期間悪化(進行)を止めることが出来る』
ということです。
『きちんと治療』することは、ただ単に簡単な歯磨き指導や、歯石取りをすることではありません。
深い歯周ポケットを残さず、かみ合わせを細かく管理することが、大変重要となります。
歯周病治療先進国スウェーデンの、歯周病治療第一人者リンデ先生が来日された際の講演の中で、
『7mm以上の歯周ポケットのある歯を残したままメインテナンスに移行するのは、ナンセンスだ!』
とおっしゃっておられました。
歯周ポケットが7ミリ以上になると、急激に再発(進行)する確率が高くなります。
したがって、7ミリ以上の歯周ポケットを残さない様に、様々な対応が必要となります。
(様々な対応とは:手術・徹底した歯磨き・やさしく時間をかけた慎重な歯石取りなど)
また、被せ物や入れ歯を設計する際も、細心の注意が必要となります。
歯周病をきちんと治療することは、大変な時間・手間・労力・コストが必要となります。
決して簡単なことではありません。
もし手間のかかる治療を避けたいのであれば、症状のないうち(軽症〜中等度)に治療を開始することが必要です。
当院で無症状の方に治療を積極的にお勧めする理由が、ここにあります。
4.メインテナンス・クリーニングの副作用
日本では、メインテナンス・クリーニングの際に、荒い研磨剤(=磨き砂のような物)を使用して、細菌が付着している・いないに関わらず、歯全体をクリーニングすることにより、歯の『白さ』を保つように行っている医院が多いようです。
このことにより、着色が除去されて歯が白くツルツルになり、しかも気持ちよくすっきりとするため、継続的に医院に通っていただく手段として利用しているようです。
しかし、荒い研磨剤は少なからず歯にダメージを与えます。
日本人の歯は欧米人に比べてかなり薄く、長期間クリーニングを繰り返すことによって、逆に歯に大きなダメージを与えかねないことが、最近指摘されています。
また、歯石を取る装置でクリーニングを行っている医院もあるようですが、通常の装置では歯に若干の悪影響があり、それを繰り返す事による副作用も指摘されています。
これらの方法でクリーニングを行った歯の表面は、電子顕微鏡で見ると傷まるけになっています。
効果が高く、副作用のないクリーニングを行うには、細心の注意が必要です。
定期的に行う歯のクリーニングのことを、『PMTC』と呼びます。
PMTCを根拠に基づき考案し、長年に渡り実践し、すばらしい実績を上げられたのが、スウェーデンのアクセルソン先生です。(右写真)
平成23年5月29日、このアクセルソン先生が来日され、一度だけ講演されました。
さくら総合歯科ベビーキッズ歯ならびクリニック院長とスタッフ2名は、この講演を東京まで聴きに行きました。
その講演の中で、アクセルソン先生が何度も強調されたのは、
PMTCは『必要性の高い部位にのみ行うべきである』
ということでした。
更に、
『必要性のない部位に行うのは、犯罪行為である』
とまで仰っていました。
アクセルソン先生は、本当にまじめな紳士で、常に患者さんの健康を第一に考えてこられた人格者です。
恐らく、ご自身の始めたPMTCが、日本で過った形で広がり始めていることに危機感を覚え、そのことが許せなかったのではないでしょうか。
その証拠として、その後行われた懇親会でも、時間を割いてこの話をあえて繰り返しておられました。
日本でも、この『本当のPMTC』が普及することを、望んでやみません。
5.歯磨き指導を行わずにメインテナンスを勧める歯科医院が増えている理由
現在、歯科医院はコンビニより多く、過当競争時代に突入しています。
したがって、なるべく患者さんにうけの悪いこと(歯磨き指導)は行わず、うけの良いことのみ(クリーニング)を、本来の趣旨とは異なる目的で行うことが流行しつつあります。
歯周病の進行は、10年単位の時間をかけてゆっくり悪化してゆきます。
しかも、多くの場合、重症の後期か、末期(手遅れ)になってからしか、自覚症状は現れません。
したがって、患者さんご自身が受けておられる処置が、本当に効果があるのか否かは、早くとも数年、遅ければ数十年経ってからしか、ご自身には分かりません。
そのため、どうしても楽な方(歯磨き指導を受けずに済む方)の医院が人気を得やすく、結果的に誤った考えに基づくメインテナンスが増えてきています。
また、短時間に効率よくクリーニングするため、荒い研磨剤が多用されています。
歯の分厚い欧米人より、歯の薄っぺらい日本人においては、研磨剤の使用・選択には、より注意を払うべきです。
さくら総合歯科ベビーキッズ歯ならびクリニックは、真に患者さんのためになる情報をお伝えするべく、研鑽・努力しています。
6.当院における歯の定期管理
当院では、まだ日本で定期的な管理を行っている医院が、主に都市部のごく一部の歯科医院で行われていたのみの頃から、クリーニングや咬み合わせの確認・検診等の定期的な管理を行っておりました。
当時は歯周病の定期的な管理に関する情報が大変少なく、様々な書籍や有名な先生方の講演を聴きながら、試行錯誤して現在のシステムを築き上げてきました。
クリーニングの際は、極力荒い研磨剤は使用せず、市販されている中でも非常に細かい研磨剤を中心に使用しております。
したがって、歯に対するダメージはほとんど無視できますが、逆に処置時間が大幅に長くなってしまいます。
メインテンス発祥の地と言われる北欧では、30年以上前からメインテナンスを行っていたそうです。
PMTCを始めたスウェーデンのアクセルソン先生の元で、PMTCを実践していたのが、世界的に有名な歯科衛生士、ブリギッタ氏です。
当院では、このブリギッタ氏に直接指導を受けたスタッフを中心に、それらの国で行われている方法になるべく近い考え方で、行っています。
また、患者さんの病状、ご希望に合わせて多種多様な手順で行っています。
北欧で実際に行われているメインテナンスを見学された方は、『日本で行われている方法と大きく異なる』 とおっしゃっています。