1.ドライマウスとは
ドライマウスは口腔乾燥症(こうくうかんそうしょう)ともいわれ、口の中・のどの渇きを症状とする病気です。
現在増加傾向にあり、800万人の方がドライマウスであると推測されています。
現代人に多い主にストレスや不規則な食生活、薬物の副作用が原因であると言われています。
症状は、のどの渇きの他にも、舌の痛みを感じることがあります。
ドライマウスは、下記の2つに大別できます。
(1) 唾液そのものの分泌が低下した場合
唾液の分泌は以下の要因に影響を受けることがわかっています。
・ 日常生活、とくに食習慣
・ ストレス
・ 薬剤
唾液の分泌量が減少すると、口の中の状態が悪化します。
その結果、日常生活に以下のような悪い影響を及ぼします。
薬の効能書き(説明書)をよく読むと、副作用の欄に「口渇」と言う文字をよく目にします。
口渇とは、その字の通り口が渇くことで、薬を飲むと唾液が出にくくなる場合があることがわかります。
高血圧の薬、骨粗鬆症の薬、最近服用者の多い抗うつ剤や睡眠薬などの中には、唾液分泌を減少させる物が多いようです。
(2) 唾液は出ているが口が乾く場合・・・口呼吸
ドライマウスではないか、と疑って来院される方の中には、十分唾液の出ている方も多く見られます。
この場合、かつては「問題なし」とされることが多かったのですが、最近では呼吸を本来行うべき鼻で行わず、口で行っていることにより唾液が蒸発してしまうのが原因で口が乾くことがわかってきました。
この場合、いくら水分補給しても、口の渇きは改善しません。
口を閉じ鼻で呼吸する訓練や、対策を取る必要があります。
2.ドライマウスによっておこる悪影響
(1) むし歯・歯周病
一般的にむし歯や歯周病は歯磨きが不十分な場合に起こります。
不十分な歯磨きにより、お口の中の食物の残りカスを栄養源として、細菌が増殖します。
細菌が増殖すると、
・ 酸が産生され、歯が溶かされます。 → むし歯
・ 毒素が増加し、歯周組織が破壊されます。 → 歯周病
唾液が不足により殺菌作用が低下すると、抑えられていた細菌が活発に繁殖し始めます。
その結果、より早期に、しかもひどい症状となる場合があります。
(2) 口臭
揮発性硫黄化合物(硫化水素・メチルメルカプタン・ジメチルサルファイドなど)は、硫黄のような独特の強い悪臭を発生します。
この臭いが吐く息と共に口腔外に放出されると、口臭となります。
唾液分泌量が減少すると、口臭が強くなります。
起床時・空腹時に口臭が強くなるのは、唾液分泌量が減少していることが原因です。
(3) インフルエンザ
「唾液は口腔内やのどにウイルスや細菌が付着し感染するのを防ぐ」といわれています。
国立病院機構栃木病院歯科口腔外科医長の岩渕博史先生が、日本人を対象に調査をされました。
その結果、ドライマウスの人は、そうでない人よりも風邪やインフルエンザに約2倍かかりやすいというデータが出たそうです。
(2012年に岩淵先生がが論文発表)
(4) 誤嚥性肺炎
ドライマウスになると口腔が汚れるので誤嚥(ごえん)性肺炎を起こしやすくなります。
また、口の中が渇くと食べ物をのみ込みにくくなるので、不慮の事故の死亡原因で最も多い窒息の危険性も高くなると考えられています。
(5) 食道癌
食道がんの危険因子の一つである逆流性食道炎の人にはドライマウスが多いとの報告もあります。
このことはドライマウスが食道がん発症に関与する可能性を示唆しています。
(6) 舌の痛み
ドライマウスでは唾液分泌量の低下により口の中が乾燥します。
口の中の乾燥により、
・ 舌の乾燥
・ 舌のひび割れ
・ 味覚障害
など様々な症状となって現れます。
(7) 入れ歯(義歯)の痛み
先に述べたとおり、ドライマウスでは唾液分泌量の低下により、口の中が乾燥します。
入れ歯と粘膜の間に唾液が入ることにより、滑りがよくなり、入れ歯も吸い付きます。
口の中が乾燥すると、入れ歯が擦れて、粘膜に傷がつきやすくなります。
その結果
・ 痛くて噛めない
・ すぐ外れる(総入れ歯の場合)
という症状が起こりやすくなります。
3.ドライマウスの治療
生活習慣の改善(食事の摂り方・水分補給など)と、補助的に保湿剤の使用により対応します。
口呼吸が原因の場合は、あいうべ体操(口腔内科のページ参照)や、夜間口にテープを貼って寝るなどの対応をします。