T.歯周病とは
このページでは、歯周病の概要と歯周基本治療を中心に、歯周病治療その他の治療を含めた歯周病治療の流れについて説明します。
1.さくら総合歯科院長が歯周病治療に力を入れる理由
歯周病は、成人の80%が罹患すると言われ、歯を失う原因の第一位です。
歯科医院に来院される方のほとんどは、
『むし歯を治してください』
と言われます。
ところが、
『歯周病を治してください』
と言って来院される方は、少数派です。
(ただし、三重県四日市市のさくら総合歯科には、歯周病治療を希望して来院される方が多数おられます。)
これは、歯周病が手遅れに近い状態にならないと明確な症状が出ないため、
『年寄りの病気』
と認識されていることが原因です。
したがって、
歯周病は『沈黙の疾患』
とも呼ばれています。
しかし、
『いつまでも自分の歯で食べたい』
という患者さんのご要望にお応えするためには、どうしても歯周病に対するアプローチが不可欠となります。
ところが、歯周病の治療はむし歯治療よりはるかに難しく、また、患者さんの自己努力が必要不可欠なため、なかなか進行・再発を防げません。
普通に治療していては進行を止められない場合が多く、
『本当に歯周病を治そう』
と熱意を持って治療している歯科医師は、残念ながら少数派です。
しかし多くの患者さんは、本当は自分の歯を長持ちさせたいから歯科医院に来院されるのではないでしょうか。
四日市さくら総合歯科では、そのご要望に少しでも添えるよう、「どうすればご自身の歯を守れるか」について情報を提供し、お口の健康を保つお手伝いをさせていただこうと、努力しています。
その結果、さくら総合歯科は三重県四日市市の歯科医院ではありますが、鈴鹿市、津市、桑名市、いなべ市、亀山市、菰野町、滋賀県、高知県などからも、歯周病でお困りの方にご来院歴があります。
2.歯周病とはどんな病気?
お口の中に存在するある種の細菌が、歯の周りの構造(歯周組織)を破壊してゆくことにより、歯を支えることが出来なくなって、やがて抜けてしまう病気です。
日本では40歳以上の成人の80%以上がかかっていると言われています。
(歯周病進行のイメージ映像(動画)はこちら(要 WindowMediaPlayer7 以上):あくまでイメージです。)
歯周病は『慢性の病気』です。慢性とは、長年にわたり、ゆっくりと進行する状態を言います。
慢性の病気は、多くの場合よっぽどひどくならない限り、症状がありません。
歯周病にかかっていることに気付くのは、殆どの場合重症か末期になってからです。
その場合、症状のある歯は助けることが出来ないか、助けることが出来たとしても、多くの場合手術が必要です。
他の無症状の歯も、多くは歯周病がある程度進行しています。
そうなってから長持ちしやすい状態にするのは、長年歯周病の治療に真剣に取り組んできた、治療経験の多い歯科医師でも大変です。
歯周病は、『年寄りの病気』ではありません。多くの方は、若い頃から徐々に進行しています。
したがって、症状のない、若い頃から治療しておくことが重要です。
(1) 歯周病の主な症状
歯周病は『沈黙の疾患』とも呼ばれ、強い症状がなく進行します。
しかも重症になると治せなくなる場合があるので、少しでも何らかの症状を感じたら、きちんと歯周病を治せる歯科医院で検査・治療を受けるべきです。
・ 歯ぐきが赤く腫れている。
・ 朝起きた時、口の中がネバネバする。
・ 歯を磨いた時、硬いものを食べた時に血が出る。
・ 歯ぐきがむずがゆい、又は痛い。
・ 口臭が気になる。
・ 硬い物が噛みにくい、又は噛むと痛い。
・ 歯がぐらぐらする。
・ 歯が長くなった。
・ 歯と歯の間の隙間が大きくなった。
これらの症状のうち、一つでも該当するものがあれば、歯周病が疑われます。
ただ、これらの症状がなくても、歯周病が始まっている場合も多いので、注意が必要です。
正確に診断するには、歯周病治療に熱心な歯科医院で検査を受ける必要があります。
(2) 歯周病の原因は?
歯周病は細菌バイオフィルムのしわざ
歯周病は、歯に付着している『細菌バイオフィルム』によって惹き起こされます。
細菌バイオフィルムとは、簡単に言えば歯にこびりついた細菌の塊で、歯磨きで完全に除去することはできません。
色が歯の色に近い白っぽい色をしているので、きたない細菌が歯に付着していることに、なかなか気付きません。
今、爪楊枝で歯の間の汚れを軽く取ってっみてください。
爪楊枝の先っぽには白いネバネバの汚れがついてきたはずです。
実はそれだけの量に、億単位の細菌が含まれています。
健康な人の歯と歯ぐきの境目の隙間には、約1000個程度の細菌が生息しています。
ところが、歯周病となった歯と歯ぐきの境目の隙間には、1000万個以上もの細菌が存在します。
一方、お口の中には約800種類もの細菌が生存可能です。
健康な人のお口場合、このうち約150種類が住みついていると考えられています。
まだまだ未知の細菌が存在すると考えられています。
歯周病の悪玉菌:red complex(レッド・コンプレックス)
上記800種類の細菌の中の一部が、むし歯や歯周病の原因になります。
その中でも、
・ Porphyromonas gingivalis(P.g)
・ Tannerella forsythia (T.f)
・ Treponema denticola (T.d)
が特に歯周病を悪化させる原因となる細菌といわれおり、この3つを “red complex” と呼んでいます。
中でもP.g菌が最も代表的な歯周病原因菌と言われており、様々な研究が行われています。
P.gingivalis菌の線毛の型による分類
P.gingivalis菌の外側には、タンパク質が結合してできた繊維状の構造が存在し、それを線毛(せんもう)と呼びます。
その線毛にはfimAとMfalという2種類が存在し、そのうちfimA線毛のタンパク質には6つの型があることがわかってきました。
Tb :束毛型
U :パンチパーマ型
V :剛毛型
W :スキンヘッド型
X :うぶ毛型
線毛の型別の歯周病発症リスクは、
U>>W>Tb>V>X>T
であり、U型がずば抜けて病原性が高いことがわかっています。
P.gingivalis U型は・・・
正常者にも2%に見られます。
歯周病患者では、59%に存在します。
重度歯周病患者では、90%以上に存在します。
P.gingivalis菌と真菌の関係
『歯周病菌のP.gingivalis菌が、カンジダ菌と呼ばれる真菌(カビ)の影響により歯の周囲の細胞への侵入が増強される』、との論文が奥羽大学の玉井准教授により発表されました。
つまり、歯周病の進行に真菌が関与している可能性があることが示されました。(この件に関しては、歯周病の内科治療に詳しく述べてあります。)
キーストーン病原体仮説
キーストーン病原体とは、少ない数であっても免疫システムを阻害することにより、他の無害であった細菌叢のバランスを変化させ、それを病原性のある状態に転換させる働きをしている病原体(細菌)のことをいいます。
上に述べた代表的な歯周病菌:P.gingivalis菌は、実は単独では歯周病を引きおこすことができません。
しかし、この菌は白血球の機能を障害することにより免疫を操作し、他の細菌を爆発的に増加させ、それにより歯周病を引きおこすと考えられるようになってきました。
口腔のキーストーン病原体による腸管への悪影響
ディスバイオーシス(腸内フローラの異常)がおこり腸管に影響
口腔内の細菌が腸管に到達すると、腸内の細菌バランスの異常(ディスバイオーシス)を引きおこすことがわかってきました。
なかでも、P.gingivalis、S.mutans、Klebsiella pneumoniae、F.nucleatum は腸管の健康に影響を及ぼします。
これらの菌のうち、P.gingivalis、S.mutans、F.nucleatumは3DSという特殊な処置で除菌できることがわかっています。
P.gingivalisは腸管細菌の細菌叢を変える
歯周病を放置しておくと口腔内の細菌の影響で腸内細菌叢のバランスが崩れ、全身の健康に悪い影響を与える細菌が増えてくることがわかっています。
歯周病のもう一つの側面、生活習慣病
バイ菌が感染すれば皆ひどい歯周病になるかといえば、そうではありません。
また、各個人に於いても、全ての歯が同じように歯周病が進行するわけではありません。たとえば、歯周病菌に抵抗するための免疫力は生活習慣に影響を受けます。
その他にも、 歯周病を加速・悪化させる要因は数多くあります。
それが歯周病の治療を難しくしている要因です。
(3)歯周病を悪化させる要因は?
歯周病の原因の除去は、通常は日本歯周病学会の策定したガイドラインに沿って行われています。
また、一部の歯科医師はガイドラインに定められていない抗菌剤や抗真菌剤を使用しています。
ところが、これらの方法で治療しても、歯周病が治るとは限りません。
特に重症の歯周病はその傾向が強く、他の歯科医院で治療したものの治らない、と訴えて当院に来院される患者さんが多数おられることからも、通常の治療のみでは不十分であることがわかります。
重度歯周病を安定した状態に改善するには、ガイドラインに明記されていない様々な歯周病悪化要因にも対応する必要があります。
(a)免疫力の低下
歯周病の原因は、上に述べたように細菌です。
ですから、お口の中の細菌を完全に駆逐し、無菌状態にできれば理論上歯周病は起こりません。
ところが、残念ながらどんなに時間をかけて歯磨きしても、或いは歯科医院に行ってクリーニングを受けても、かなりの数の細菌がお口の中に残ります。
しかし、その人の免疫で対応できるだけの数に細菌を減らしさえすれば、歯周病は発症しません。
免疫力は個人差が大変大きく、また、同じ人でも様々な要因で免疫力は低下します。免疫力を左右する因子の例として、
・ ストレス
・ 食生活
・ 腸内環境
・ 口呼吸
・ 糖尿病
・ 体調
などがあげられます。
例えば、秋口に歯ぐきが腫れて来院される患者さんが、多発します。
これは、夏バテで体が弱っているところに、朝の急な冷え込みが重なり、風邪気味になることにより免疫力が低下することが原因です。
このことから、免疫力が歯周病の発症・進行に大きく関わっていることがおわかりいただけると思います。
免疫力低下に対する対応については、歯周病の内科治療のページをご覧ください。
(b)かみ合わせ
現在、かみ合わせが歯周病の原因ではないものの、歯周病の進行速度を左右する因子であると、考えられています。
かみ合わせが悪いと歯に無理な力がかかります。
この無理な力は歯周病の進行速度を極端に早めます。
かみ合わせは、
・ 先天的な要因によるもの
遺伝
・ 後天的な要因によるもの
舌や唇の癖・成長期の食生活・寝相や頬杖などのくせ(態癖)・姿勢・歯科治療(矯正を含む)
などの影響を受けます。
ほとんどの歯が何ともないのに、かみ合わせの悪い歯だけが重症の歯周病になっている方は、決して珍しくはありません。
かみ合わせや歯ならびと80歳になったときの歯の残存数
歯ならびやかみ合わせが悪いと、年齢が高くなるにつれて歯周病の進行が加速し、80歳になった頃には多くの歯が抜けてしまいます。
下の表は、歯ならび・かみ合わせの状態と80歳になったときの歯の本数を調べた研究です。
ヒトの歯は、全部で24本(親知らずを除く)ですので、多くの歯が失われていることが分かります。
(c)喫煙
喫煙は、歯周病にとって大敵です。
喫煙者の歯周病のリスクが5倍に、受動喫煙でも3倍になります。
たばこを吸っている方の歯周病を治すことは、極めて困難です。
ある著名な先生は
『歯周病の治療は禁煙指導から』
と仰っておられました。
近年禁煙の成功率が高い薬が発売されました。
禁煙外来を行っている内科等に相談されることをお勧めいたします。
●加熱式タバコ
従来のタバコが燃焼時600〜800℃に達するのに対し、加熱式タバコは高温加熱型で240〜350℃、低温加熱型では40℃でタバコ葉を加熱し、ニコチンを揮発させて吸入させます。
加熱式タバコに関する研究は、販売メーカー以外に研究がないのが現状です。
その研究では、
・ 歯ぐきの細胞を培養したものに、加熱式タバコのエアロゾルを曝露したものと、如何なる刺激も与えないものとを比較すると、加熱式タバコのエアロゾルには酸化ストレスや炎症の指標を増加させた
という結果が得られたそうです。
したがって、加熱式といえども歯ぐきに悪影響を及ぼすことが考えられます。
●電子タバコ
電子タバコは、グリセロールやプロピレングリコールを基剤とし、香料・添加物・ニコチンを含む充填液を気化してエアロゾルを発生させ、それを吸引する方式のタバコのことを言います。
・ 電子タバコの充填液は、ヒトの歯ぐきや歯根膜の細胞生存率を低下させたり、炎症反応やDNA損傷を引き起こす。
・ ニコチン非含有電子タバコも、無刺激の細胞と比べると、ヒトの歯ぐきの細胞に対して影響を及ぼす。
・ 非喫煙者より電子タバコ利用者の方が歯周ポケットが有意に深かった。
などの研究があり、たとえ加熱式・電子タバコといえども歯周病の増悪因子になるので、歯周病治療を行う前提として、これらをやめることが必要です。
3.歯周病が全身疾患の原因になる
近年、歯周病菌が他の部位に移行したり血液中に入ること(菌血症)により、他の病気の原因や誘因になることがわかってきました。
歯周病がある程度進行すると、歯磨きや食事を食べるだけでも大量に血管内に進入します。
さくら総合歯科院長が学生の頃は、菌血症はあくまで一時的なものであり、問題にならない、と習いました。
しかし近年では、侵入した歯周病菌は短時間に全身に移行し、様々な部位で病気の原因となることが解明されつつあります。
この項では、歯周病が全身に及ぼす影響について解説します。
A.心臓病と歯周病の関係
歯周病患者の心臓発作の確率は、健康な人の2.8倍も高いという報告があります。
歯周病が進行すると、血管内に歯周病菌が侵入します。
一部の歯周病菌は血小板内に入り込むなどして免疫系から逃れ、血管内壁に血栓の原因を作ります。
それが心臓の血管に詰まると心筋梗塞などの虚血性心疾患の原因となります。
B.脳卒中と歯周病の関係
歯周病患者とそうでない人に比例してリスクが3倍といわれています。
心臓疾患と同様、歯周病菌の血管内侵入が関与していると考えられています。
一般的に体内に入った細菌は、白血球によって食べられてしまいます。
一方、歯周病菌は血小板に取り付くので、白血球は攻撃ができません。
赤血球中の鉄分を栄養として取り込みながら、血小板同士を集めて塊を作り、その中に入り込んでいきます。
これが血管の内側の壁に付着すると、コレステロールなどから形成されたドロドロの物質(アテローム)となり血栓ができます。
この状態を、『アテローム性動脈硬化症』とよびます。
これが脳の血管にできれば、脳梗塞の原因になってしまいます。
アテローム血栓性脳梗塞の患者の血液中には、歯周病菌の抗体価が非常に高いことがわかっており、この事実が歯周病菌と脳卒中に関連性があることを証明しています。
C.ガンと歯周病の関係
歯周病歴のある男性医療専門家を対象にした長期研究で、ガンになる可能性が全体的に14%高いとの結果が、インペリアル・カレッジ・ロンドンのドミニク・ミショー博士らによって報告されました。)
論文では
「喫煙その他のリスク要因を考慮した上でも、歯周病は肺や腎臓、すい臓、血液のガンのリスク増大と大きな関連性があった」
と結論づけています。
(a) 食道ガンと歯周病
お口の中に存在する細菌のなかには、発がん物質「アセトアルデヒド」を作る菌も含まれています。
その影響を最も受けるのが、お口の中(口腔)と食道です。
お口の中の細菌によって産生されたアセトアルデヒドによって
・ 口腔ガン(舌ガン・歯肉ガンなど)
・ 食道ガン
が起こる場合があります。
また、歯周病原因菌の一つT.d菌が食道粘膜に移行してそこに慢性の炎症を起こし、それがガン化して食道ガンとなるという説もあります。
(b) 結腸ガンと歯周病
F.n菌と呼ばれる歯周病原因菌による感染が結腸直腸がんの一因となる可能性があることが、米ケース・ウェスタン・リザーブ大学歯科医学部歯周病学教授のYiping Han氏らの研究で示唆されました。
また、横浜市立大学 肝胆膵消化器病学 日暮琢磨氏等は、大腸癌患者の患部組織と唾液から歯周病原因菌の一種であるFusobacterium nucleatum の共通菌株が4割以上の患者で存在していることを発見し、2018年に発表しました。
これにより、口腔内に由来する F.nucleatum が大腸癌に関与していることが示唆されました。
(c)膵臓ガンと歯周病
2007年、歯周病患者は膵臓ガンのリスクが2倍になる、という論文が発表されました。
詳細は、歯周病は膵ガンリスクにのページをご覧下さい。
D.糖尿病と歯周病の関係
糖尿病は、血液中のブドウ糖(血糖)値を下げるインスリンの分泌が低下し、血液中のブドウ糖が多くなっている状態のことを言います。
歯周病の炎症がある歯周組織では、免疫反応により産生される炎症性サイトカイン・TNF-αと言う物質が増加し、脂肪細胞や骨格筋による等の取込みを阻害します。
そのため、血糖値を下げる働きをもつホルモンであるインスリンの働きが阻害され(インスリン抵抗性)、その結果血糖値が上昇して糖尿病の症状が悪化することがわかっています。
歯周病を治療すると、歯周炎に起因するTNF-α産生量が低下するため、インスリン抵抗性が改善し血糖コントロールが好転すると言われています。
歯周病治療により『糖尿病が改善した』、と結論づけた論文と『改善しない』と結論づけた論文が存在します。
改善した論文の多くは、歯周病専門医が治療した研究、開演しなかった論文の多くは口腔外科医が治療した論文だそうです。
口腔外科医は歯周病治療は通常行っていないため、歯周病専門医と同等の治療は不可能であることが、結果に現れていると考えられます。
E.動脈硬化と歯周病の関係
生活習慣病に直結する動脈硬化症にも、歯周病菌が関係しています。
歯周病菌が動脈硬化部位に見つかることが、カナダや北米の研究グループにより報告されています。
また、腹部動脈瘤の部位に、歯周病菌の1種である Treponema denticola というスピロヘータが見つかったという報告もあります。
歯周病菌が作り出す内毒素:LPSは、血管に入り込んでその内壁に付着します。
内毒素は、好中球やマクロファージといった免疫細胞に取り込まれて血液中を運ばれ、血管壁などで炎症性サイトカインの産生を促し、そこに悪玉のLDLコレステロールが沈着して瘤(コブ)を作ります。
瘤は次第に大きくなり、血流を阻害します。
歯周病菌が動脈硬化を悪化させることは、これまでも統計調査の結果から明らかでしたが、新潟大歯学部の山崎和久教授(歯周病学)の研究グループにより、歯周病菌が動脈硬化を悪化させることの因果関係が証明されました。
山崎教授らは実験用マウスに週2回、歯周病菌を投与し、一定期間経過後に肝臓や血管の組織を調べました。
その結果、動脈硬化のリスクを減らす善玉コレステロールを生み出す遺伝子の発現量が低下していたことがわかりました。
また、動脈硬化を起こしているマウスへ同様に菌の投与を約5カ月間行い、動脈の内側を調べたところ、菌を与えていないマウスでは病変の面積が6%であったのに対し、投与したマウスでは45%という結果が得られました。
F.誤嚥性肺炎と歯周病の関係
震災などの災害で避難生活が長くなると増えることが知られている、誤嚥性肺炎。
口の中に多くの細菌が繁殖すると、当然ながら唾液中の細菌も激増します。
高齢者は嚥下機能が衰え、誤って気管に唾液などが入り込んでしまう(誤嚥)ことが多くなります。
唾液中の細菌が多いと、誤嚥により細菌が気管支や肺に侵入し、気管支炎や肺炎を引き起こします。
現在では、日本人の死因の第3位が肺炎になりました。
肺炎を減少させるための『口腔ケア』の重要性が、歯科ばかりでなく医科に於いても重要視されるようになってきました。
その他、肺気腫・喘息などとの関連も報告されています 。
G.非アルコール性脂肪肝炎(NASH)と歯周病の関係
NASHとは、お酒を飲まないにもかかわらず脂肪が肝臓に蓄積することにより、脂肪肝→慢性肝炎→肝硬変→肝臓ガンへと進行していく病気です。
一方、歯周病が進行すると、お口の中の細菌が血管内に侵入する『菌血症』という状態になります。
歯周病菌は数時間から10時間程度生存し、肝臓に到達するとそこで炎症が起こります。
このことが、NASHの病状悪化に関与している、ということが近年の研究で明らかになってきました。
NASHの患者の唾液中にはP.g菌と呼ばれる歯周病菌の保菌率が健常者より多く、5割の患者にP.g菌が存在することがわかっています。
可逆性である非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD) 患者に感染しているP. gingivalis菌 は fimA 遺伝子解析で毒性の強い II、IV、Ib が多いことが報告されており、これらはNASHとも関連する可能性があると思われます。
“fimA 遺伝子”についてはこちらを参照。
もしお口の中に歯周病菌(特にP. gingivalis菌)が見つかったら、歯周病治療や3DSで除菌することをお勧めします。
H.リウマチと歯周病の関係
関節リウマチは、日本では国民の1%程度が罹患している病気で、自己免疫疾患の一種です。
患者の免疫システムに正常に働かなくなることにより起こります。
リウマチの患者は歯周病にかかっていることが多いので、歯周病とリウマチの関連性が以前から指摘されてきました。
そして2013年9月に、関節リウマチのリスク因子としての歯周病菌の働きが発表されました。
それによると、代表的な歯周病菌であるP.g菌に感染したマウスでは、関節リウマチの発症率が高く、またその進行も早くなることがわかりました。
P.g菌が増えることにより、PADという酵素が作られるます。
PADはある種のタンパク質に作用して、免疫システムの正常な働きを妨げます。
その影響で関節リウマチが進行します。
P.g以外の歯周病菌ではPADは作り出されなかったそうです。
I.アルツハイマーと歯周病の関係
歯周病はアルツハイマー型認知症とも関連している、との論文が発表されています。
論文1
名古屋市立大 大学院の道川誠教授らの研究チームにより、歯周病が認知症の一種、アルツハイマー病を悪化させることがマウスの実験で明らかにされました。実験後にマウスの脳を調べると、歯周病菌に感染してからの約4カ月間で、記憶をつかさどる海馬にアルツハイマー病の原因となるタンパク質が沈着し、歯周病のマウスの方が面積で約2.5倍、量で約1.5倍に増加していました。
論文2
九州大学の武洲准教授らの研究チームは、マウスに歯周病菌を3週間連続で投与する実験を行いました。その結果、マウスの脳内にあるアルツハイマー型認知症を引き起こすと考えられているタンパク質「アミロイドβ」が10倍に増え、記憶力が低下することが分かりました。
歯周病患者の歯ぐきに生じたアミロイドβが、血管を通して体内に侵入して脳内に達し、そこで蓄積されて記憶障害などを引き起こすのでは、と考えられています。
J.早産・死産と歯周病の関係
早産
中・重度の歯周病になっている妊婦は早産の危険が7.5倍も高いといわれています。
妊婦が歯周病の場合、お口の中の歯周病菌が増加し、その結果血液中のサイトカインとよばれる物質が増加します。
それにより、子宮筋の収縮が促されると考えられています。
妊婦に対して歯周病治療を行うと、早産の発生率が有意に下がることが報告されています。
胎盤の細菌叢は口腔と最も近似している、という論文が2014年 Science Translational Medicineという学術誌にて発表されましたが、このことからも口腔内の細菌が胎盤に影響を与える可能性がある、と考えることができます。
胎児の発育に影響
岡山大学の研究グループの研究により、妊娠初期における母体の歯周病が妊娠期間中を通して胎児の発育状況に影響を与えることが明らかになり、2020年1月29日のイギリスの学術専門誌「Scientific Reports」のオンライン版で公開されました。
妊娠中の母体の歯周病が出生時体重と関連する論文はありましたが、胎児の継続的な発育状況を調べた研究は今までありませんでした。
この研究では、妊娠初期の母体の歯周病の有無と胎児の発育の推移が調べられました。
その結果、妊娠初期の母体の歯周病罹患の有無がその後の胎児の発育に影響を与えることがわかったことから、妊娠してから歯科治療を受けるのでは遅く、妊娠前から歯周病を治療・予防することが、生まれてくる子どもの適正な体重に関係する可能性が示唆されました。
死産
口腔内の細菌が原因で、死産となった症例報告が存在します。(下記文献)
Term stillbirth caused by oral Fusobacterium nucleatum.
Obstet Gynecol. 2010 Feb;115(2 Pt 2):442-5
この報告は、35歳のアジア人女性が39週と5日で死産した症例で、下記所見が認められました。
・母親は妊娠関連歯肉炎で出血が認められた
・死産3日前に上気道感染で発熱した
・強い悪臭の血性羊水と悪臭を発する胎児として死産
・強い絨毛羊膜炎と臍帯炎を併発
・絨毛膜・羊膜・胎児の肺と胃には Fusobacterium nucleatum という口腔内の細菌が充満
K.肥満と歯周病の関係
歯周病が肥満を引き起こす可能性
歯周病と肥満歯周病菌が出す毒素をリポ多糖といいます。
リポ多糖をマウスの皮下に4週間連続して埋め込んだ結果、肝臓に脂肪が沈着し、肥満へと結び付きました。
歯周病になると、歯周病菌から出たリポ多糖が、歯肉の炎症部分から血液中に入り込んでいきます。
その結果、歯周病があると肥満に結び付くと言われています。
付) 肥満が歯周病を悪化させる可能性
肪組織でつくられるTNF-αという物質は、歯を支える骨(歯槽骨)を溶かし、歯周病を発症、進行させる作用があります。
肥満の人は、脂肪組織が多いためにTNF-αがより多く産生されます。
その結果、歯を支える骨はより多く溶かされ、歯周病が発症・進行しやすくなると考えられています。
L.脳膿瘍
北九州市立医療センターで脳膿瘍から代表的歯周病菌であるP.g菌が検出されたとの報告が、日本有病者歯科医療学会誌に報告されました。
M.Buerger病(バージャー病)と歯周病の関係
バージャー病は喫煙男性に多く見られる手足の動脈に起こる病気です。
血管が次第に詰まり、場合によっては足が腐ってしまうこともある恐ろしい病気です。
バージャー病の原因や悪化がお口の中の歯周病菌によるのではないか、という研究報告があり、その関連性が示唆されています。
N.新型コロナ感染症(COVID-19)と歯周病の関係
歯周組織の状態が新型コロナ感染症の重症度に影響を及ぼす可能性
ドイツミュンヘンで行われた最近の研究で、炎症性サイトカインであるインターロイキン6の(IL-6)レベルの上昇が、新型コロナ感染症の入院患者における呼吸不全や、人工呼吸器を要する状態となる強力な予測因子となる、と発表されました。放置された歯周病では、炎症性サイトカイン(炎症症状を引き起こす原因因子)が増加します。
一方、歯周病患者に対してSRP(歯石の除去など)を行うと、IL-6レベルが平均3pg/ml下がることが知られています。
新型コロナ感染症の重症例と報告された患者は炎症マーカーや細菌のレベルが高い傾向があり、口腔衛生状態の悪さが新型コロナウイルス感染症の合併症の危険因子となる可能性がある、と著者らは結論づけた。
Dental Tribune Japan Edition 3/2021より
O.高血圧と歯周病の関係
重症歯周病の成人250人と歯周病のない250人を対象とした、英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン イーストマン歯科研究所のFrancesco D'Aiuto氏らの研究によると、収縮期血圧が140mmHg以上の人の割合は、歯周病群が14%、歯周病でない群7%であり、2倍の差があることが示された。また、収縮期血圧/拡張期血圧が130/80mmHg以上の場合を高血圧と定義すると、歯周病群の約50%、歯周病でない群の約42%がこれに該当した。
血圧に影響を与え得る因子を調整した結果、歯周病群は歯周病でない群に比べて、収縮期血圧が3.36mmHg、拡張期血圧は2.16mmHg有意に高かった。
また、収縮期血圧140 mmHg以上の割合は歯周病群が歯周病でない群の2.3倍だった
さらに、歯周病群は歯周病でない群に比較して、血糖値、LDLコレステロール、炎症レベル(高感度CRP、白血球数)が高く、HDLコレステロールは低かった。
この結果について著者は、「歯周病の予防と治療は、全身の慢性炎症を抑制し、血管内皮機能を改善するための費用対効果の高い手段である可能性がある」としている。
(2021年3月発表)
歯周病の予防に関心のある方、歯周病でお困りな方のお問い合わせは まで。
4.歯周病の原因を除去するために、もっとも重要なことは?
(1)基本は毎日の丁寧な歯磨き
歯周病を予防・治療するためには、細菌を極力少なくしなければなりません。
そのために最も重要なことは、毎日の歯磨きです。
ところが、皆様が自己流で時間をかけて磨いても、必ずと言っていいほどたくさんの細菌が残ってしまいます。
歯周病の治療に熱心な歯医者では、必ず歯磨きの指導に時間をかけます。
歯周病からご自身の歯を守りたい方は、必ず歯科医院で歯磨き指導を受けましょう。
ただ、残念ながら多くの歯科医院で行われている程度の歯磨き指導では、細菌の多くが取り切れずに残ってしまいます。
当院で実際指導を受けていただくと、歯に付着した細菌を除去するのは大変難しく、しかも時間がかかることがおわかりいただけると思います。
(2)次に重要なプロフェッショナルクリーニング(PMTC)
そのどうしても取れない汚れを、我々プロフェッショナルが除去する、歯のクリーニングが必要になります。
(これは歯石を取るのではなく、歯の周りのやわらかい細菌を除去する処置です。)
歯のクリーニングは2週間〜3ヶ月に一度必要と言われています。
ただし、定期的に来院された際、クリーニングだけ行っていても歯は守れません。
実は歯のクリーニングより大切なのが、
『ご本人のリスク部位、磨けていない場所を自身で認識していただき、それを意識してセルフケアを行うこと』
です。
定期的なプロフェッショナルケアは、スウェーデンのアクセルソン先生が、30年以上前に始められました。
この先生の行われた方法が、実際に好成績をあげた正しい方法と考えられています。
アクセルソン先生は、
「プロフェッショナルケアの際 歯医者でクリーニングを受けるだけではなく、リスクの高い場所を教えてもらうことが重要である」
「リスクのない歯面にブラシやカップを当てるのはナンセンスだ!」
と来日された際何度も力説されました。
ところが日本では、歯をぴかぴかにし、着色を取ることが重要と誤解され、その誤った考え方が広まりつつあることが危惧されています。
実際、当院には
『他院にて定期的にクリーニングを受けているにもかかわらず、ちっともよくならない』、
『どんどん症状が悪化している気がする』
と来院される方が数多くおられます。
(クリーニングを受ける際の注意点は、こちらをご覧下さい。)
5.歯周病の分類
簡単な分類
感染性歯周炎
高病原性の歯垢(バイオフィルム)によって起こるもので、少量の歯垢で発生するもの。
高病原性の歯垢とは、P.g菌などに代表される、歯周炎を引きおこす性質の強い歯周病菌を含む歯垢のこと。
不潔性歯周炎
低病原性の歯垢(バイオフィルム)によって起こるもので、多量の歯垢が付着することにより発生するもの。
不十分な歯みがきや好ましくない食生活が主な原因となる。
日本歯周病学会による分類(2006年):病態による分類(主要なもの)
T.歯肉病変
1.プラーク性歯肉炎
2.非プラーク性歯肉病変
3.歯肉増殖
U.歯周炎
1.慢性歯周炎
主に成人に認められる一般的な歯周炎で、歯ぐきの下に存在する歯垢(バイオフィルム)中の歯周病菌と戦う免疫応答により、歯周組織が破壊される。
2.侵襲性歯周炎
歯垢が少なく炎症も乏しいにもかかわらず、深い歯周ポケットと重度の骨吸収がおこる歯周病。急速な進行や家族内集積性が認められる。
10〜30代と比較的若年層に発症することが多い。
3.遺伝疾患に伴う歯周炎
EFPとAAPによる新しい分類(2017)
2017年にシカゴ(米国)で開催されたヨーロッパ歯周病学会(EFP)と米国歯周病学会(AAP)の合同ワークショップで決定された新しい分類。
このワークショップには、世界中から100名を超える専門家が参加し、世界中の患者に対する治療の標準化を目的として決定されました。
この分類は、最新のエビデンス(医学的根拠)に基づいて決められており、患者の健康状態全般も考慮されています。
病期分類(Stage)
重症度別に、4つの病期に分けられており、疾患の複雑性、広がりの範囲と分布もみています。
Stage1
レントゲン画像で歯槽骨の喪失が歯冠側1/3または15%未満
歯周炎による歯の喪失なし
歯周ポケット 4mm以下
水平的骨欠損が一般的
範囲と分布
・局所的:全体の30%未満の場合
・広汎性:全体的に起こっている場合
・大臼歯部に集中しているか切歯部に集中しているか
Stage2
レントゲン画像で歯槽骨の喪失が15〜33%
歯周炎による歯の喪失なし
歯周ポケット 5mm以下
Stage3
レントゲン画像で歯槽骨の喪失が歯根中央部の1/3、34%以上
歯の喪失歯周炎により最大4本まで喪失
歯周ポケット 6mm以下
垂直的な骨の吸収が認められる
Stage4
レントゲン画像で歯槽骨の喪失が歯根中部1/3以上
歯周炎による歯の喪失5本以上
歯周組織の破壊により歯ならびの乱れ、噛めない、かみ合わせによる外傷等が生じている
等級分類(Grade)
進行速度による分類。
比較できるレントゲン写真があればよいが、新患で前のレントゲン写真がない場合、進行の間接的根拠として“年齢に対する骨欠損の率”で判断し、加えてリスクファクターも考慮します。
Grade A
進行速度が遅い
直接的な根拠(以前のレントゲン写真との比較ができる場合)との比較で、歯槽骨に5年以上喪失が認められない
骨欠損(%)を年齢で割った数値が0.25未満
破壊は非常に少ない
リスクファクターなし:喫煙していない、糖尿病がない
Grade B
骨欠損(%)を年齢で割った数値が0.25〜1
歯垢沈着度に見合った歯周組織の破壊が認められる
喫煙は10本未満/日
糖尿病患者であってもHbA1cが7.0未満にコントロールされている
Grade C
骨欠損(%)を年齢で割った数値が1.0以上
歯周組織の破壊程度がプラーク沈着から予想できる以上の破壊が認められる
喫煙1日10本以上/日
HbA1cが7以上でコントロールされていない
この分類は、リスクファクターによってグレードが決まる、と言えます。
例えば、5年以上に渡って歯槽骨の喪失がなく、組織破壊もない場合でも、喫煙者であればグレードCになります。つまり、喫煙はそれだけ歯周病のリスク因子となる、ということです。
6.四日市さくら総合歯科の歯周病治療バリエーション
歯周病治療には様々な考え方があり、どれか一つを行えば全てが解決する、と言うことはありません。
したがって、治療する歯科医師の考え方により、治療法は大きく変わる場合があります。
さくら総合歯科院長は、歯周病治療における各分野の著名な先生の考え方を取り入れ、それらを患者さんの症状・生活様式・ご要望に応じて選択し、適材適所の治療を行っています。
当院で行っている歯周病治療は、下記の4つに大別できます。
(1)非外科的療法(手術をしない方法)
・ 手術を行う必要がない軽症の場合、
・ 手術が必要な中等度以上の歯周病であるが、手術がイヤな方
・ 手術が必要な中等度以上の歯周病であるが、手術を希望されても
・ 全身状態等の理由により不可能な方
に行います。
(a) 歯周病の内科治療(薬を併用する方法)
特殊な抗生物質などを使用し、歯周病の症状を劇的に改善しようとする方法です。
『治癒』ではなく、『病状の長期安定』を目指す治療です。
面倒なことはイヤだが、なるべく歯を長持ちさせたい、という方に最適です。
喫煙者や若い方の場合、効果が不十分であったり、長続きしない場合があります。
FMD法・3DSと呼ばれる方法と併用すると、より高い効果が期待できます。
(b) 一般的な治療法(保険診療)
歯周基本治療、簡単な手術、安定期治療(継続治療)などを行います。
歯磨きや歯石取りなど、昔から行われている方法です。
時間をかけた歯磨きが治療の最重要ポイントとなります。
『治癒』ではなく、『病状安定』を目指す治療です。
全て保険で治療が可能ですので、治療費を極力安くしたい方に最適です。
(c) 3DS (Dental Drug Delivery System)
3DSについてはこちらをご覧下さい。
(d) 最新の口腔内科(プロバイオティクスの応用:生物的プラークコントロール)
近年、「菌により菌を制す」という、プロバイオティクスと呼ばれる考え方の研究が進んできています。
例えば、 Lactobacillus salivarius TI 2711 (乳酸菌LS1) は、歯と歯ぐきの隙間の細菌中へと移行し、P. gingivalisと呼ばれる歯周病菌をを減少させるとともに、歯周病の臨床症状を改善する傾向が認められた、との報告があります。
(むし歯菌にも有効との報告もあります。)
ただ、その効果は限定的でした。
一方、最近別の乳酸菌により、むし歯菌や歯周病菌を減少させることができた、というデータを元に開発されたサプリメントが、日本でも発売されました。(グラフ)
市販の洗口剤などに含まれる殺菌剤は悪玉菌にあまり効果がなく、むしろ善玉菌を多く殺してしまう傾向が強いのに対し、この方法は、主に悪玉菌を減少させる目的で使用されます。
単独では効果が充分ではありませんが、他の方法と組み合わせると効果的です。
当院では、
・「薬を使いたくない」
・「薬を使用した後で、更にお口の中の細菌の状態を改善したい」
・「歯石取りの効果を高めたい」
・「歯磨きだけでは不安なので、サプリメントの助けを借りたい」
という方などに使用します。
(2)歯周外科(手術を行う方法)
手術により、骨の形を整えたり、歯周組織(歯ぐきや歯を支える骨)を再生する方法です。
中等度以上の歯周病に対して行います。
『治癒』=『進行停止』を目指す治療です。
とにかく極限まで自分の歯を長く使用したい、という方に最適です。(当院で行う手術は、通常痛くありません。)
なお、保険治療における手術は『病状安定』をめざすもので、『治癒』をめざす治療とは言えません。
治療成績の良い『治癒』をめざす手術法は、保険外診療となります。
(3)歯周内科と歯周外科併用法
歯周外科を行う前に、骨の再生などの手術成績を向上させる目的で、歯周内科治療を行う方法です。
歯周病の超悪玉菌がお口の中に存在する場合に、最も良い結果が得られます。
詳細については、後述します。
(4)分子栄養学的対応
歯周外科や歯周内科を行っても結果の好ましくない場合があります。
そういう方や、手術を回避したい方の治療成績を向上する目的で、分子栄養学的対応を行います。
分子栄養学とは物理学者である三石氏が提唱した考え方です。
受け入れ側の身体を分子レベルで考え、各栄養素の役割を最大限に把握し、個人個人の身体の状況に応じ必要な栄養素を検査で明らかにし、必要な栄養素を吸収させることにより、病気を予防することを目的としています。
分子栄養学では、
・ 高タンパク
・ 高ビタミン
・ 活性酸素の除去
を重視することにより、遺伝子をフルに活動させるための栄養素を補充します。
この方法は血液検査を含む、多くの検査を必要とします。
7.歯周病治療の流れ
歯周病には様々な治療法がありますが、歯周病の進行程度に関係なく、最初に行われるべき治療を歯周基本治療といいます。
以下に、歯周基本治療を中心とした、歯周病治療の流れについて説明します。
三重県四日市市の歯医者、さくら総合歯科では、概ね下の順で治療を進めてゆきます。
歯周病治療は、歯科医師と歯科衛生士や管理栄養士が協働して行います。
さくら総合歯科歯周病治療の流れ
初診カウンセリング
↓
お口の中の写真撮影(12〜14枚)
唾液検査・簡単な歯周病リスク検査
歯周病の精密な検査
位相差顕微鏡によるお口の中の細菌検査
↓
レントゲン撮影(デンタル14枚+咬翼法2枚)
↓
歯磨き指導
↓
歯ぐきの上の歯石除去
↓
体組成3D解析装置による簡易計測
簡単なむし歯予防食事指導
唾液検査結果説明
↓
歯周病の精密な再評価検査→治療の難しい方※(下へ)
↓治療の簡単な方
歯ぐきの下の歯石除去(数回)
↓
歯周病の精密な再評価検査
口腔内写真
↓
唾液検査など
↓
リスクが下がったことを確認してから、歯周病以外を治療
★リスクが下がらない限り、次のステップには進みません
↓
むし歯治療・歯のないところの治療など
↓
ナイトガード装着
↓
歯周病継続治療(SPT)
※治療の難しい方
・CT撮影
・全身写真→姿勢のチェック
・足趾・足のチェック
・お口の中の模型作成
・高感度CRP計測
・体組成3D解析装置による未病の把握と保健指導
・歯周病に対する徹底した食事・栄養指導
・歯周内科
・歯周外科
・歯周補綴
・歯周矯正
・インプラントや入れ歯(義歯)
・TPC装着
・メインテナンス
・3DS
などで対応する場合があります。
歯周病以外の治療を含めた診療の流れについてはさくら総合歯科・治療の流れ図もご覧下さい。
以下に治療の詳細について説明します。
(1)各種検査
a) レントゲン検査
歯周病は、直接見ることが出来ない骨が吸収してなくなることにより、歯を失う病気です。
したがって、骨を視覚的に観察することの出来る、レントゲン検査が必須です。
一般的に初診時には、パノラマと呼ばれる断層撮影法が用いられますが、歯周病の治療を目的とする場合、デンタルと呼ばれる小さなフィルムを用いて、お口全体を撮影します。
(a) パノラマX線撮影(オルソパントモグラフィ)
お口の中だけではなく、下あごの骨全体と、頭部の下半分程度まで幅広く撮影できる、断層撮影です。
お口の中以外の情報も得られるので、初診の方に多く用いられます。
ただ、断層撮影は画像がぼんやりしており、細かい異常が発見しにくいのが欠点です。
したがって、歯周病の治療を厳密に、徹底的な治療を行う場合には適していません。
(b) デンタル10〜18枚法
デンタルフィルムと呼ばれる小さなフィルムを10〜18枚用いて、お口全体を撮影する方法です。
多くの場合12枚撮影しますが、歯の大きさや親知らずの有無により数枚追加して撮影します。
逆に、より正確な診断のため、18枚程度のフィルムを使用して撮影することもあります。
さくら総合歯科は、平成26年5月よりメディカルトリートメントモデルの考え方に基づき、多くの初診患者さんのこの方法でレントゲン撮影を行っています。
特に、 歯周病の治療を目的として来院された方や、歯周病治療が目的でなくても歯周病が中等度以上に進行した方に対してこの方法での撮影を行います。
b) 口腔内カラー写真
お口の中の写真を5〜12枚撮影します。
歯周病治療に於いて、歯ぐきの変化は治療の効果をご理解いただくために、もっとも重要な所見です。
治療の効果をご自身にわかりやすく確認していただくため、初診時、検査時等にお口の中の写真を撮影します。
他に、歯の形、色、歯ならび、その他病変の記録としても役立ちます。
c) 歯周病の検査(簡単な検査または精密な検査)
歯周ポケット(歯と歯ぐきの間の隙間)の深さ、歯の動揺(ゆれ)などを測定します。
精密な検査を行う場合、保険診療で指定されない項目も、(サービスで)検査する場合があります。
d) 唾液の検査
唾液の性質や、その中に存在するむし歯や歯周病の原因となる細菌・真菌(カビ)を検査します。
詳しくは、唾液検査のページをご覧下さい。
e) 歯周病関連菌検査
歯周病原因菌の中でも悪玉度の高い(簡単に言えば毒性の強い)下記細菌の一部について、個々の患者さんにどれくらいの割合で存在するかを調べる検査です。
・ Porphyromonas gingivalis
・ Tannerella forsythia
・ Treponema denticola
・ Fusobacterium nucleatum
・ Prevotella intermedia
当院では、
・ 信頼性の高いゲノム解析により、特定の細菌の数を調べることが出来る方法(PCR法)
・ 信頼性の高いPCR法と同時に、P.g菌の遺伝子型を検査する方法(追加オプション)
・ 院内で検査できる簡易的な検査
の3種を適宜使い分けています。
f) 位相差顕微鏡の検査
歯にへばりついている歯垢(細菌の塊)を採取し、位相差顕微鏡で観察します。
この検査により、お口の中には膨大な細菌が活発に活動していることが、お解りいただける利点があります。
しかし残念ながら、顕微鏡の検査では歯周病やむし歯の細菌が実際に存在するか否か、また、存在する場合その割合はどれくらいか、については確定することが出来ません。
ただ、細菌の大まかな種類や活動の度合いはある程度分かりますので、活発な細菌の活動が認められた場合は、上記歯周病関連菌検査やむし歯菌検査を行う必要があります。
それにより、本当に歯周病やむし歯の細菌が存在するか、また、存在する場合どの細菌がどれくらいの割合で存在するかを正確に調べることが可能です。
また、この検査は当院では無料で行っておりますので、継続的ご来院時に顕微鏡で観察することにより、手軽に細菌の活動状況の推移をご理解いただくのに役立ちます。
但し、細菌を採取した場所、顕微鏡で観察する際にプレパラート(細菌をスライドグラスに乗せた標本)上のどこを見るかにより、観察できる細菌の種類がまちまちで、しかも細菌の活動状況は大きく変動します。
よって信頼性に乏しく正確な診断とは言えません。
また、顕微鏡で見える細菌がどのような種類のものか、本当のところは細菌学の専門家でもわからないそうです。
あくまで傾向をつかむ程度の検査、とお考えください。
当院では位相差顕微鏡による結果はあくまで参考程度にとどめ、治療の効果をわかりやすく患者さんに説明するための手軽な手段として、有効利用しています。
g) 唾液の潜血検査
免疫学的に唾液のヘモグロビンを検出する方法です。
これにより唾液中に混入している微量な潜血の有無を検出し、歯周病に見られる出血を簡単・迅速に調べることが出来ます。
h) 口臭検査
歯周病治療を希望して来院される患者さんのなかに、実は、口臭を気にしておられ、その改善が本当の目的の方も多いようです。
その様な方のために、当院では非常に精度の高い口臭測定器、『オーラルクロマ』による三大口臭原因物質の測定も行う場合があります。
詳しくは、「口臭が気になる方」のページをご覧下さい。
(2)歯磨きの指導 <歯周病治療の基本・大原則>
a) 歯磨きの目的
a)-1 歯を磨くことは、命を磨くこと
『歯を磨くことは命を磨くこと』
ちょっと大げさなのでは、と思われるかもしれません。
a)-2 歯周病の治療の大原則
歯周病の治療は正しい時間をかけた歯磨きなくしては成り立ちません。
歯磨きは、歯の周りにこびりついた歯垢と呼ばれる細菌のを除去するために行います。
決して『食べかす』を除去するためではありません。
b) 歯ぐきのマッサージは不要
また、歯ブラシで歯ぐきのマッサージを行う必要はありません。
未だに『歯ブラシで歯ぐきのマッサージを行いましょう』と言われる先生もおられますが、歯周病の治療に真剣に取り組んでいる先生であれば、その様なことは言われません。
考えてもみて下さい。顔や体をマッサージするとき、硬いブラシを使いますか?
ましてや、お口の中の粘膜と呼ばれる部分は、皮膚より柔らかく傷つきやすいのです。
当然ブラシでこすれば強いダメージを受けてしまいます。
ただし、指でマッサージすることは、場合によってはプラスとなることがあります。
c) 歯ブラシの形について
最近、大規模量販店やホームセンターには、大変多くの種類の歯ブラシが販売されています。
しかし、その多くは歯周病やむし歯の予防にとって好ましい形状ではありません。
市販されているものは、『歯のため』であることは二の次で、『売れること』が目的となっています。
売るためには、何か目立つ特徴がなければなりません。
そのためには、
・山切りカット
・毛先が丸い
・毛先が細い
・柄が曲がる
・毛が素直な形に並んでいない
など、きれいに磨くのに不適切な特徴ばかりが、付与されています。
(東急ハンズなど一部の量販店では、良い歯ブラシも販売されています。)
一方、歯科医院に売っている歯ブラシは、殆どが『素直な形で、毛先がコンパクト』です。
一部例外もありますが、歯周病治療に真面目に取り組んでいる歯科医師であれば、素直な形状のものを選択します。
特に最近、毛先が細い歯ブラシが流行しています。
『毛先が細いので歯周ポケットの中まで毛が入る』
のがうたい文句ですが、歯磨きに詳しい歯科医師の多くはこの考え方を否定しています。
歯磨き指導の分野で第一人者の一人、今村先生は、
『毛先を歯周ポケットの中に入れる必要性などない、と断言できる!』
と仰っていました。
逆に、そのような磨き方をすることにより、歯ぐきを痛めつけてしまいます。
歯ぐきの上に見えている細菌を取り除いただけで、歯ぐきの下に隠れている細菌の質が改善し、歯周病は改善します。
歯科治療に関するマスコミからの情報は、治療に真面目に取り組んでいる歯科医師にとって、首をひねりたくなるものばかりです。
当院では、本当に正しい情報を皆様にお伝えするよう、常に心がけています。
d) 歯磨きで脳を活性化
ところで、花王の研究によると、疲れたあとに歯磨きをすると、脳が活性化し、気分がリフレッシュする
との結果が得られたそうです。
歯磨きと脳の活性化についてのページはこちら。
e) 歯磨きで食道ガン・お口のガン予防
お口の中には、様々な細菌が存在します。
それらの中には、発がん物質「アセトアルデヒド」を作る菌も含まれており、殆どの人のお口の中に存在します。
その影響を最も受けるのが、お口の中(口腔)と食道です。
お口の中の細菌によって産生されたアセトアルデヒドによって、
・ 口腔ガン(舌ガン・歯肉ガンなど)
・ 食道ガン
が起こる場合があります。
お口の中のガンは、治療により食事や顔貌に多大な影響を及ぼします。
食道ガンは発見しにくく、転移も早いやっかいなガンです。
これらのガンを予防するのためには、アセトアルデヒドを産生する細菌を減らさなければなりません。
その細菌を効果的に減らす方法として、歯磨きが有効である、と考えられています。
歯磨きで、お口の中の発ガン物質を減らしましょう!
f) 歯磨きなどの口腔ケアで、インフルエンザ予防
インフルエンザウィルスが体中に入って増殖し、インフルエンザを発症するためには、まず気道の粘膜を通過しなければなりません。
しかし、粘膜にはタンパク質の覆いのようなものがあり、ウィルスが簡単にくっつかないようになっています。
ところが、歯垢、歯石、舌苔(ぜったい)などから発生する酵素(プロテアーゼ)がそのタンパク質を破壊してしまい、ウイルスが侵入しやすい状態をつくると、そこで増殖します。
ある大学の研究によると、口腔ケアにより口の中の細菌を減らしたところ、プロテアーゼ量の減少することがわかりました。
その結果、インフルエンザの発症が抑えられるのです。
つまり、正しい歯磨きで歯と歯ぐきの間の歯垢を除去し、舌をやさしくお掃除し、歯科医院で歯石などを除去することが、インフルエンザの予防につながるといえます。
インフルエンザ予防には、「手洗い、うがい」「マスク」とともに「口腔ケア」も重要であることがわかってきたのです。
皆さんも、歯磨きを丁寧に行って、インフルエンザの予防をしましょう!
g) さくら総合歯科での歯磨き指導
当院では歯磨きの正しい技術を習得していただくために、患者さんのライフスタイル・ご要望に応じ、1回15分〜1時間かけて数回に渡り、歯磨き法を指導しています。
細かい内容については御来院された際に御説明致しますが、重要なポイントは以下の通りです
・ 必ず鏡を見ながら磨く
・ 力を入れすぎないこと
・ 時間をかけること
歯磨きには、下の写真のような器具を使用します。
写真をクリックすると、使い方のページに移動します。
通常の歯ブラシだけで磨く方法もありますが、難易度が高くお勧めできません。
写真 上から
・ 歯ブラシ(小さめの素直な形のもの)
・ 歯間ブラシ (使用法(動画)はこちら(要 WindowMediaPlayer7 以上))
・ インタースペースブラシ・・・類似品としてワンタフトブラシ
・ デンタルフロス (使用法(動画)はこちら (要 WindowMediaPlayer7 以上))
なお、電動歯ブラシは多くの場合お勧め出来ません。
何故なら、多くの電動歯ブラシは、歯周病の原因になる細菌の蓄積しやすい場所に届かないからです。
ただ、現在一部の製品に、今までの電動歯ブラシの欠点を補うものが登場してきました。
有用な電動歯ブラシに関する情報を、さくら総合歯科では必要な場合に御説明しています。
(3)食育指導
健康な食生活を営むために食事に関する知識と食を選択する能力を身につける人間を育てることを“食育”といいます。
当院には進行した歯周病患者さんが多数来院されますが、若い人を中心に食生活に多くの問題を抱えた方の割合が高いようです。
三重県四日市市のさくら総合歯科では、進行した歯周病患者さんに対しては、
・ 体組成3D解析装置
・ AGE測定器
・ 高精度体成分分析装置
・ 指先血管用顕微鏡
・ 血圧測定器
を使用した上で改善点を指導する、本格的な食育指導を行います。
(詳細は歯周病内科治療のページ参照)
(4)分子栄養学的対応 ・・・ 免疫力をアップさせる
免疫力は
・ ストレス
・ 食生活
・ 腸内環境
・ 口呼吸
・ 体調
など、様々な要因によって影響を受けます。
ストレスは、歯科医院での根本的解決は難しい側面がありますが、四日市さくら総合歯科では出来るだけお話を伺ことにより、ストレスを少しでも軽減して戴ければ、と考えています。
食生活については、歯周病内科治療のページをご覧ください。
腸内環境の改善
腸内環境は、免疫力に最も影響を与える因子の一つです。
四日市さくら総合歯科では分子栄養学的血液検査(一般的な検査とは項目が異なります)を行い、患者さんに不足している栄養素を調べます。
そこで、場合によっては便検査なども行って腸内細菌叢などを調査し、腸内環境の向上により免疫力アップを図る試みも行うことがあります。
口呼吸の改善
口呼吸も免疫に影響を与えます。
四日市さくら総合歯科では、鼻呼吸を行うための訓練(MFT)について指導しています。因みに、口呼吸はお口の中を乾燥させ、このことも歯周病悪化の要因になります。
(5)生活習慣の指導
生活習慣は、歯周病の進行に大き影響を及ぼす場合があります。
特に影響が大きいのが喫煙です。
仕事の姿勢や癖も、影響を及ぼす場合があります。
a)禁煙指導
喫煙は、細菌を退治する能力が落ちるなど、歯周病にとって大敵です。
ある歯周病治療で有名な歯科医師は、
『歯周病治療は、禁煙指導から』
と言っておられます。
たばこを吸っていると、通常は歯周病が進行しにくい、上の前歯の裏側の歯周病がひどくなる傾向があります。
これは、たばこの煙が最も高い濃度で接触することが、その原因と考えられます。
残念ながら、どんなに歯磨きを頑張っても、歯科医院に根気よく通っても、いかなる手術を受けても、喫煙をやめない限り、歯周病の進行を完全に止めることはできません。
また、喫煙者は手術内容が限定されるので、更に条件が不利になります。
歯科医院では、現在本格的な禁煙外来はできませんが、簡単なアドバイス等は行うことが可能です。
三重県四日市市のさくら総合歯科にご来院いただいた患者さんの中にも、禁煙を成功させ、おかげで長期的に安定した状態を維持している患者さんが、何人もおられます。
b)態癖指導
学会で興味深い発表がありました。
メタボ防止のため、電車通勤をやめ、自転車で通い始めた中年男性の症例でした。
その後奥歯の調子が悪くなり、治療を受けてもあまり良くならなかったそうです。
スポーツタイプの自転車に乗っていたので、通勤時は上を向いた状態になります。
主治医の先生は、上を向くと奥歯に負担がかかり、それが関係しているのではないか、と考え、徒歩通勤に変えてもらったそうです。
すると、今まで悩まされていた奥歯の炎症が落ち着いたそうです。
歯周病の原因は、あくまで細菌です。
しかし、このように様々な要因によって影響を受ける、大変複雑な病気です。
頬杖などの外力によって、歯は簡単に影響を受けます。
それが歯周病治療の妨げ、歯周病進行の一因となっている場合が少なくありません。
当院では、この点についても詳しく調査し、指導しています。
(6)咬合調整
無理な力のかかった歯は歯周病が進行しやすく、治りにくくなります。
咬合調整とは、噛んだとき(かちかち噛んだときや、歯ぎしりをしたとき)に無理な力のかかる歯のかみ合わせを、歯を少しずつ削ることによりなるべく無理な力がかからないように調整することをいいます。
(7)循環障害に対する対応
血液の流れが悪いと、歯周病は治りにくくなります。
さくら総合歯科では、具体的どのような場合に問題があり、どうすれば良いかについても説明します。
(8)簡単な歯石除去
歯石は、口の中の細菌の死骸などに、唾液や血液中のカルシウムがこびりついたものです。
歯石は歯と歯ぐきの境目付近と、歯ぐきの下の見えない部分に付きます。
この段階では、歯磨きをする際に邪魔になる、歯ぐきの上についている歯石のみを除去します。
(歯石除去の動画はこちら (要 WindowMediaPlayer7 以上))
(歯科医院に『歯石を取ってください』といって受診した場合、歯ぐきの上の歯石のみを取るだけで、歯ぐきの下の見えない部分についている歯石は取っていない場合があります。)
8.歯周病は簡単には治せる病気ではありません!
歯周病の治療は、真剣に取り組めば取り組むほど、その難しさを痛感し、
『歯周病は治らない』
と断言する歯科医師も、少なくありません。
一方、重度の歯周病になった患者さんが、数十年進行せず、歯を1本も抜かなくてすんだ症例が、報告される場合があります。
歯周病治療で有名な先生には、以下のような様々なタイプが存在します。
・ 再生療法と呼ばれる手術を多用する先生
・ 切除療法と呼ばれる手術を多用する先生
・ 歯磨き指導と歯石取り・メインテナンス(非外科)のみで対応する先生
・ メインテナンスと称し、クリーニングを繰り返すことを最重要視する先生
・ クリーニングより、歯磨き指導を徹底することが重要、と主張する先生
・ さっさと抜いて、インプラントにする先生
・ 薬を使用する先生
・ 歯磨きや歯石取りだけでは治らないので、毎朝小松菜ジュースを飲むことにより、体質改善を図ることを奨励する先生
・ 次亜塩素酸が主成分の機能水を使って、細菌を激減させようとする先生
・ アロマを利用し、細菌数の減少等を図り、歯周病治療を支援しようという先生
・ サプリメントの応用により、お口の中の悪玉菌を抑制し、歯周病を改善しようと試みている先生 etc
では、いったいどの先生の治療が正しいのでしょうか?
答えは・・・どれも正しくないと言えるし、どれも正しいとも言えます。
つまり、答えがないのです。
ただ、一つ言えることは、定期的にクリーニングをしただけでは、歯周病菌のコントロールは出来ず、多くの患者さんを救うことは出来ません。
歯周病治療に長期にわたり真剣に取り組んでいる歯科医師であれば、的確なホームケア(歯磨きなど)が必須であることを、必ず強調されます。(若い先生の中には、そのことに気付いていない先生もおられるのかも知れません。)
歯周病は薬で治る?
また、『歯周病は薬で治る』『歯周病が薬で○○%完治する』などの誇大広告が見受けられますが、歯周病は薬だけで『完治』することはありません。
さくら総合歯科では、一つの方法に固執せず、患者さんにあった治療法を探し出し、お勧めするよう心懸けています。
パーフェクトペリオについて
次亜塩素酸を使用した「パーフェクトペリオ」という商品を使用した歯周病治療がTBS系列で放映され、一時話題になりました。
しかし、現在同製品は製造が中止され、医療用器具としての認可を得るための申請中とのことですが、その後許可を得られたという情報は、私の知る限りありません。
日本歯周病学会のホームページに、この方法に関する以下のような公式見解が発表されています。
「研究途上の段階で科学的根拠が十分であるとはいえず、日本歯周病学会としては安全性や有効性について学術的な場で充分な討議が行われた後に、臨床に応用されるべきであると考える。」
パーフェクトペリオは高額機器(数百万円)のため、その分治療費が高くなってしまいます。
当院では従来から、それほど高額でない機器(数十万円)を選び、
・ 次亜塩素酸を含む安全性の確立された弱酸性の低濃度機能水は
・ 次亜塩素酸を含むアルカリ性〜中性の高濃度機能水
・ オゾン水
を併用し、治療に応用しています。
歯周病と口臭の関係
歯周病を起こすバイ菌は、VSC(揮発性硫黄化合物)と呼ばれる強い悪臭を発する物質を産生します。
これが口臭の原因となります。
VSCのうち、歯周病患者で検出されるのが
『 メチルメルカプタン 』
と呼ばれる物質です。
メチルメルカプタンは「毒物および劇物取締法」などの法律で毒物に指定されており、その毒性は青酸ガスに匹敵、あるいはそれ以上といわれています。
もう一種のVSCである硫化水素も、人体に有害な毒ガスであることは、多くの方がご存じのことでしょう。
また、近年この物質が、歯周組織に悪影響をもたらし、歯周病を悪化させる因子となっている可能性が高い、との説が有力になってきています。
口臭には“生理的口臭”と“病的口臭”があり、歯周病によって起こるのは後者の病的口臭です。
何れにしても、歯周病と口臭は「切っても切れない関係」といえるでしょう。
口臭については、『口臭が気になる』のページをご覧下さい。
歯周病の予防に関心のある方、歯周病でお困りな方のお問い合わせは まで。
U.歯周病の基本治療
歯周病の基本治療とは、全ての歯周病患者さんに必要とされる、基本的な治療のことで、“初期治療”と呼ばれることもあります。
この基本治療をおろそかにすると、他の治療法(手術など)を行ったとしても、よい治療結果・長期的に良好な状態の維持は実現出来ません。
1.歯周組織検査
まず、歯周病の程度を調べるための“歯周組織検査”を行います。
歯周組織検査では、歯周ポケット(歯肉溝)の深さ、歯ぐきの出血状況、歯垢の付着状況、歯の動揺(揺れ)などを測定します。
歯周組織検査には、
・1本の歯につき1点の歯周ポケット(歯肉溝)を測定する“歯周基本検査”
・1本の歯につき4点から6点の歯周ポケット(歯肉溝)を測定する“歯周精密検査”
があります。
当院では、主に6点の歯周ポケット(歯肉溝)を計測する、“歯周精密検査”を行っています。
註)歯周ポケットと歯肉溝計測の違い
何れも歯と歯ぐきの境目にあるすき間(溝)の深さを計りますが、“歯周ポケット”とは歯周病になった状態のすき間、“歯肉溝”とは健康な歯ぐきの溝、と考えて下さい。
2.動機付け
・ 現在の歯周病の進行状況を説明
・ 歯周病とはどのような病気かを説明
・ 放置すると歯がどうなっていくか
・ 放置すると全身にどんな影響を及ぼすか
などについて説明し、ご理解いただいた上で
・どのように治療していくか
を説明して、治療に取り組む意欲を高めることを、動機付けと言います。
3.歯磨き指導(プラークコントロール)
基本は毎日の自己管理(歯磨き)
歯周病 歯磨き正しく時間をかけた歯磨き無しでは、歯周病の治療は成り立ちません。正しい歯磨きは、専門家による継続的な指導管理の下でのみ、可能となります。自己流で時間をかけて磨くと、殆どの方が歯ぐきを傷つけ、逆にお口の中の環境を悪化させてしまいます。
最近『知覚過敏』に効く、と言う歯磨き粉が次々販売されるようになりました。
これは、歯磨きの重要性が認知され、一生懸命歯を磨く方が増えているものの、 自己流で磨いているため、知覚過敏の方が増えていることが原因です。
4.歯石除去(スケーリング)
ついてしまった歯石はとる必要があります
かつて、『歯石を取れば歯周病が治る』、と考えられていました。
しかし繰り返し歯石を取っても、歯周病は治らないことがわかってきました。
歯周病の原因は、現在ではバイオフィルムと呼ばれるバイ菌の塊が原因であることがわかってきました。
ただ、歯石がついていることにより、このバイオフィルムが滞りやすくなります。
バイ菌たちは、歯石を足場として住みついています。
したがって、足場をなくすことを目的として歯石を取ることは、重要な治療の一つです。但し一度除去した後、再びつかないよう、自己管理と専門家による管理が必要です。
5.咬合調整(かみ合わせの調整)
歯周病を進行を加速する因子として重要なのが、歯に無理な力がかかること、即ち悪い咬み合せです。
咬み合せの悪い歯は、歯の表面やかぶせ物などを削り、食事や歯ぎしりの際に局所的に無理な力がかからないように調整します。
これを、咬合調整と呼びます。
6.再評価検査
“1.歯周組織検査” と同じ検査を行い、ここまでの治療の効果を調べます。
ごく初期の歯周病や歯肉炎では、ここまでで基本治療が終了し、後で述べる歯周安定期治療(SPT)やメインテナンスに移行する場合があります。
一部でもやや進行した歯周病の歯が存在する場合は、次のステップ(SRP)に進みます。
7.SRP(スケーリングルートプレイニング)
歯周病の歯の歯ぐきの下に隠れている根の部分には、黒っぽい歯石がたくさん付着している場合があります。
ここでは、歯ぐきの下の歯石を時間をかけて除去します。
歯周病の進行した方では、何度にも分けて歯石を取ることがあります。
8.再評価検査
再び “1.歯周組織検査” と同じ検査を行い、ここまでの治療の効果を調べます。この時点で問題ないと判断した場合は、歯周安定期治療(SPT)やメインテナンスに移行します。
問題が残った場合は、“7.SRP”に戻るか、後で述べる歯周外科治療(手術)や内科的な歯周病治療が必要になります。
歯周病の予防に関心のある方、歯周病でお困りな方のお問い合わせは まで。
V.歯周病の内科治療
1.はじめに
三重県四日市市のさくら総合歯科では、基本的な歯周病治療から、再生療法・切除療法などの外科的治療まで、幅広く取り組んでいます。
更に、独自のスーパー口腔内科治療をはじめとした口腔内科、歯周内科的治療にも取り組んでいます。
歯周病は簡単に治る病気ではありません。
したがって、様々な治療法を症状や状況、ご要望に応じ、取捨選択して治療を行い、少しでも皆様の楽しい食生活を支援できるよう取り組んでいます。
この項では、その中でも手術を行わず内科的に治療する必要性と、その方法についてご説明致します。
2.なぜ内科的歯周病治療が必要なのでしょう?
歯周病は、たとえ現在軽症でも将来重症になるかもしれません。
そのリスクを調べる方法として、お口の中にどのような細菌が存在するかを調べ、悪玉度の強い細菌が存在すれば、それらを抑制(理想はゼロ)しておくことが、リスクの低減につながります。
また、既に進行した歯周病の場合、基本的な治療で良好な状態にならない場合が多く、別の方法で対処する必要があります。
このような場合に有効な方法の一つが口腔内科治療です。
(1)細菌のコントロールとして
(a) 局所の細菌をコントロール
歯周病の原因は、歯周病菌です。
歯周病菌が存在しなければ、歯周病にはなりません。
ただし、歯周病菌を完全に駆逐することは困難です。
現実的には歯周病菌を低いレベルに保つことにより、歯周病の進行や再発を抑制するという対応が必要になります。
この目的で行われる歯周病の基本治療だけでは、細菌抑制は一時的で、相当丁寧な歯磨きを行わない限り短期間に再び細菌が増殖してしまいます。
そこで、薬、光殺菌、次亜水、オゾン水、3DS、FMDなどを使用して、細菌をコントロールする口腔内科的治療が必要となります。
(b) 全身への細菌拡散をコントロール
近年お口の中の細菌が血液中に侵入し、全身の臓器に悪影響を及ぼしていることが、研究により明らかにされてきています。
血液中に細菌が侵入することを「菌血症」といいます。
お口の中の悪玉菌を減らすことにより、全身の病気の抑制にもつながります。
イ) 歯周病治療と菌血症
歯周病の治療や外科処置(抜歯など)を行うと、大量の細菌が血管内に侵入します。
上の表は、歯周病治療を行うことにより、どのくらいの確率で血管内に細菌が侵入するかを示したものです。
治療行為のほとんどにおいて、かなりの確率で細菌の侵入が起こっていることがおわかり戴けると思います。
たとえば、歯ぐきの下の歯石取り(SRP)は、歯周ポケット内の細菌は減少させますが、逆に細菌を血管内に押し込んでいるとも言えます。
健常者においては、一時的な発熱等以外に急に健康を害することはありませんが、長い目で見れば全身への悪影響は否定できません。
一方、心疾患のある方や人工関節のある方などでは、直ちに重篤な問題を起こすことが有り、より注意が必要です。
歯周病を治療することにより、全身の健康に悪影響を及ぼすことは好ましいことではありません。
そこで、あらかじめお口の中の細菌を大幅に減少させ、歯周病菌が再び増殖する前に短期間で一気に治療を行えば、細菌の侵入はごく微量になり全身への悪影響もほとんど無視できます。
子のために必要な方法が、「歯周内科・FMD」とよばれる方法で、さくら総合歯科における口腔内科的治療の中でも重要な項目です。
ロ) 歯磨きと菌血症
「歯周病治療で細菌が血管に入るのであれば、治療しない方が良いのでは?」
とお考えになる方もおられることでしょう。
しかしそうではありません。
この表は歯磨きを行うか否かと、歯周病菌などの細菌中に存在する内毒素(エンドトキシン)が血液中にどのくらい存在するかを調べた研究の結果です。
歯磨きを実験的に中止した期間では、当然ながら歯垢(歯に付着する細菌)が増え、結果的に歯ぐきの炎症も悪化します。
しかし問題はそれだけに留まりません。
血液内に歯周病菌など由来の内毒素(エンドトキシン)が侵入し、白血球も活動が活発化しています。
しかし、歯磨きを再開することにより、これらの数値はほぼ元に戻っています。
イ)で述べたように、歯磨きだけでも菌血症は起こりますが、だからといって歯磨きをやめてしまうのは更に危険であることが、おわかり戴けたと思います。
むしろ、歯磨きをしても菌血症が起きないような口腔環境を整えること、即ち
・ 歯周病があればきちんと治療すること、
・ 出来れば歯周病にならないよう予防すること
が重要です。
ハ) 咀嚼と菌血症
ある研究によると、食事のために噛む(咀嚼)するだけでも、17〜51%の確率で血管に細菌が侵入します。
歯周病が進行し大きく揺れている歯では、その動きがポンプの働きをし、大量の細菌が血管内に送り込まれます。
したがって、重度歯周病の歯をあまり無理して残すことは、健康上好ましくないと考えられます。
ニ) 日常性菌血症と治療による菌血症
イ)で述べたように、歯周病の治療で大量の細菌が血管内に侵入します。
それに比べると咀嚼や歯磨きによる細菌の侵入数は、それほどでもありません。
しかしこの日常習慣による菌血症は、長期間継続するため細菌の血管内への累積侵入数は圧倒的に、この「日常性菌血症」の方が多いので、軽視できない問題と言えます。
(2)免疫力をアップするために
細菌がゼロに出来ない以上、存在する悪玉菌を増殖させない『免疫力』のアップも重要です。
しかし、免疫力アップはそう簡単に出来るもことはありません。
免疫力をアップするために、さくら総合歯科では各個人の健康状態や生活を検査・調査し、オーダーメイドの対応を行っています。
3.どういう人に内科的歯周病治療が必要なのでしょうか?
主に以下のような方が対象となります。
・ ご自身のお口の健康を保つためには何でも行いたい、という方
・ お口の健康だけでなく、全身の健康にもつなげたい、という方
・ 歯周病の手術の結果をよりよくしたい、という方
・ 手術はしたくないが、なるべくお口の健康を保ちたい、という方
・ 面倒なことはイヤだが、なるべく歯を長持ちさせたい、という方
・ 短期間で治療を行いたい方
その他、お子様への歯周病菌感染を予防したい、という方などにも行います。
4.歯周病内科的治療の種類
四日市さくら総合歯科における歯周病の内科的治療の項目として、以下の項目を取り入れています。
・ FMD法
・ 歯周内科(antibiotics)
・ 次亜水・オゾン水の利用
・ 光殺菌療法
・ 乳酸菌(probiotics)
・ 食事療法(prebiotics)
・ 栄養療法(分子栄養学的対応)
・ サプリメント
・ 3DS
・ 漢方薬
・ 口呼吸から鼻呼吸へ
・ その他
以下にその概要を説明します。
5.FMD法
FMD(full mouth disinfection)とは、24時間以内にお口の中全ての感染物を排除する方法のことをいいます。
感染物の除去は、歯周病の原因となるバイオフィルムや歯石を除去することにより行います。
部分的に何回にも分け歯ぐきの下の歯石を取る(SRP)従来の方法では、歯石を取っていない部分から先に歯石を取った部分に歯周病菌が再感染してしまう、と言われています。
FMD法は「感染物の除去」という処置を伴うので、厳密には内科治療ではなく、歯周基本治療に属する処置ですが、歯周内科や特殊な殺菌水を使用す治療を行う際に必要な処置ですので、この項に分類しています。
再感染を防止する目的で、消毒剤などによる歯周ポケット内洗浄を伴う方法や、内服抗菌薬を併用して歯周病菌を激減させ、その結果術中・術後の血管内への細菌侵入(菌血症)も最低限に留める方法があります。(後述する歯周内科)
本法の詳細については、FMD法のページもご覧下さい。
歯周病の予防に関心のある方、歯周病でお困りな方のお問い合わせは まで。
6.歯周内科
(1) 歯周内科とは
歯周病の治療は、原因となる細菌バイオフィルム(細菌の集団)を機械的に除去することに重きを置くのが一般的です。
それに対し、特殊な薬剤を使用することにより、歯周病菌を除菌し、内科的に病状の安定化を図る方法のことを、歯周内科と言います。
短期間に集中して行う歯石除去と同時に行うと、患者さんご自身にはっきりわかるほど症状が短期間で改善されるのが特徴です。
ただ、歯周病そのものが完全に治るわけではないので、薬を使うだけで歯周病に打ち勝った、と早合点してはいけません。
歯周内科は、
『歯の健康を取り戻す第一歩』
として有効です。
(2) 歯周病関連菌検査
(a)歯周病菌の検査
まず、歯周病原因菌の中でも毒性の強い細菌(下記)が歯周病の病巣内にどれくらい存在するかを調べるPCR法検査を行います。
・ T.f (Tannerella forsythia)
・ T.d (Treponema denticola)
・ A.a (Aggregatibacter actinomycetemcomitans)
・ F.n (Fusobacterium nucleatum)
・ P.i (Prevotella intermedia)
PCR法と呼ばれる細菌のDNAを検査する信頼性の高い方法を用いて検査します。
更に、全体的に重症の方には、P.g菌の遺伝子型をオプションで検査することも可能です。
(b)真菌の検査
歯周病菌の上皮内侵入を手助けするという説もある真菌(カンジダ:カビの一種)がお口の中に存在するか検査を行います。
真菌と歯周病の関連性には諸説ありますが、詳細は後述します。
(c) 歯周病の原因はバイオフィルム
バイオフィルムとは、細菌などの微生物が排泄する物質(グリコカリックス)で囲まれた、微生物の集合体のことを言います。
バイオフィルムを形成した細菌は、抗生物質に対して約1000倍も強くなるといわれています。
歯の表面についた細菌は、このバイオフィルムという状態でこびりつきます。
したがって、市販の薬用歯磨きや殺菌作用のある洗口剤はもちろんのこと、一般的な抗生物質でさえもこれらの細菌をやっつけることはできません。
(ただし、お口の中を漂っている細菌には効果があるので、洗口剤を寝る前に使用すると朝お口の中がすっきりすることがあります。しかし、歯の表面の細菌は死んでいません。)
歯周病が簡単に治らないのは、原因となる細菌がバイオフィルムを形成しているからに他なりません。
バイオフィルム中の細菌は、同じ細菌のみならず異なる細菌たちとも互いに情報伝達を行っています。
これを『クオラムセンシング』と呼びます。
歯周内科で使用するマクロライド系抗生物質は、このクオラムセンシングを阻害する可能性が示唆されており、バイオフィルムの形成を抑制および破壊するのではないか、と考えられています。
したがって、他の抗生物質とは一線を画す効果が期待できます。
(3) 歯周内科についての学会や研究会の見解
歯周病の二大学会(日本歯周病学会・日本臨床歯周病学会)では、歯周病菌検査を行わず歯周病治療に抗生物質を使用するのは、耐性菌(抗生物質の効かない菌)増加の原因となるので避けるべきである、との見解が主流となっています。
一方、歯周内科を提唱・推進している国際歯周内科学研究会の2011年秋季カンファレンスの中で講演された王宝禮先生(大阪歯科大学教授)は、以下の様に述べられました。
『わが国では、歯周病治療に対する抗菌薬の使用法は混迷を極め、国民に誤解を与えています。例えば、「歯周病を抗菌薬で治す」という表現は間違いであり、「抗菌薬は歯周病関連細菌に有効である」が正しい表現です。』(抄録より引用)
『抗菌薬の適正使用を考える際に、個人的防衛的な観点から感染病態をできるだけ早期に診断し、原因菌を的確に捉え、原因菌に抗菌力を示す薬剤の中から最も抗菌力の高い薬剤を選択することが必要です。また、集団的防衛的な観点からは、耐性菌蔓延対策を如何に抑制し、現有効菌薬の寿命を如何に延ばすという点が課題です。』(抄録より引用)
つまり、『歯周病は薬で治る』というキャッチフレーズを掲げていた国際歯周内科学研究会も、むやみやたらと薬を処方するのは好ましくない、という考えに方向転換しつつあるようです。
その一環として、必ずしも正確が診断の出来るとは言えない顕微鏡検査だけでなく、PCR法と呼ばれる正確な方法も導入し、適切な薬の使用を心掛けるようになるようです。
(4) 歯周病学会の歯周病と真菌の関係に関する見解
学会では、真菌に対する薬(抗真菌剤)の使用に否定的ですが、他の薬を使用しても症状が改善されない場合、真菌が歯垢の中に存在するか検査を行い、多くの真菌が存在することを確認した場合にのみ、当院でも使用することがあります。
この件に関して、日本歯周病学会のホームページに、正しい歯周治療の普及を目指して―抗真菌剤の利用を批判する―という論文が掲載されています。
(5) 国際歯周内科学研究会の歯周病と真菌の関係に関する見解
一方、国際歯周内科研究会では、抗真菌剤の使用を推進しています。
(国際・・・と銘打ってはいますが、現在のところ日本を中心とした研究会です。)
抗真菌剤を歯周内科に使用することは、健康保険では認められておらず、保険診療との併用は出来ません。
保険診療で真菌に対応する場合は、真菌に作用するといわれている、ある特殊な歯磨剤(液)を代わりに使用します。
(6) 奥羽大学 玉井利代子准教授の、歯周病と真菌の関係に関する研究
奥羽大学歯学部 玉井利代子准教授は、2011年以降、
『歯周病原性細菌の宿主細胞への侵入における真菌の増悪効果に関する分子生物学的研究』
と題する研究を行いました。
その研究で玉井准教授は、歯周病原性細菌のP.gingivalisによる歯周組織構成細胞などの宿主細胞への侵入機構と、真菌であるCandida albicans(カビ)またはその菌体成分によるP.gingivalisの侵入増強メカニズムについて、検討しました。
その中で、
培養された歯肉(歯ぐき)の細胞が Candida albicans(カビ)と触れた場合、触れていない細胞に比べて歯周病菌を3倍取り込みやすい
ということをつきとめました。。
つまり、歯周病の進行に真菌(カビ)が関与している可能性があることがわかったのです。この研究は2014年まで科学研究費補助金が下りているようなので、更にそのメカニズムまで解明されることが、期待されます。
(7) 歯周内科の注意点:歯周内科の実情
『歯周病は薬で治る』
最近、こう書かれているホームページを目にする機会が増えています。
更に、
『歯周病が歯周内科で○○%完治する』
との記述さえ見られます。
しかし、歯周病は様々な因子により進行・悪化しますので、薬を使っただけで殆どの歯周病が完治することはあり得ません。
また、当院を受診された患者さんの中には、歯周内科に使用される抗生物質を個人輸入で購入され、使用した方もおられました。
しかし、薬を飲んだだけでは歯周病菌が残存し、結果的に耐性菌を増やす原因にしかなりません。
実際その患者さんの歯周病は自覚症状はないものの重症のままでした。
薬を自己判断で購入、使用するのはお避け下さい。
近年、位相差顕微鏡を使用して患者さんのお口の中の細菌を見せ、それらに有効な抗生物質を使用した歯周病治療(歯周内科)を行っている歯科医院が増えています。しかし、顕微鏡では細菌の種類は特定できないので、歯周病菌の存在を確定することはできません。
したがって、PCR法と呼ばれる精度の高い検査を行って、まず歯周病菌の存在を確認することが必要です。
ただ、正確な歯周病菌の検査はコストがかかるため、通常はせいぜい1〜2本の歯しか検査ができません。
一方、顕微鏡検査はコストがかからないので、何カ所からでも細菌を採取できます。
その点において、顕微鏡検査は有用といえます。
また、唾液中の細菌を検査すれば、お口全体の細菌を検査することも可能ですが、よりコストがかかります。
(8) 歯周病菌に用いられる薬
現在歯周内科で一般的に使用される薬剤は、
・アジスロマイシンというマクロライド系抗生物質
・アムホテリシンBという真菌(カビ)に作用する薬剤(抗真菌剤)
を使用します。
抗真菌剤を保険診療で歯周病治療に使用することはできませんので、保険診療を望まれる方には、真菌(カビ)抑制作用のあるといわれている、特殊な液体歯磨剤を使用します。
上記抗生物質を歯周内科のために使用することは保険診療では認められていません。
(a) 歯周病菌を大幅に減少させることの多い薬剤
ここではまず、アジスロマイシンについてお話します。
アジスロマイシンは、他の種類の抗生物質と異なり細菌バイオフィルム(歯にこびりついた細菌の塊)のバリアを破壊して、細菌の集団の中に有効成分が浸透します。
しかもこの薬は白血球の中に入り込むので、白血球のたくさん集まるところ、つまり歯周病が進行し細菌が多数存在する場所に高濃度に移行します。
その結果、歯周病の進行した部位の細菌を約1週間集中攻撃し続け、歯周病菌を激減させます。
きちんと研修を受けた歯科医師であれば、この薬の乱用にならない使用方法を心得ていますが、残念ながら見よう見まねでこの薬を使用している歯科医師が多いのが現状です。
その結果、耐性菌(抗生物質の効かない細菌)が増えることが、懸念されています。
当院では、精度の高い検査法(細菌のDNA分析)で原因となっている細菌を調べ、悪玉度の高い細菌が検出された場合にのみ、それに効果のある抗生剤を投与することにより、原因となる細菌を大幅に減少させる事に成功しています。
(b) 歯周病細菌学の父:ソクランスキー先生の見解
歯科医師向け冊子『歯界展望』2009年7月号に、横浜の武居先生とソクランスキー先生の対談が掲載されました。
ソクランスキー(Sigmund Socransky)先生は歯周病細菌学の権威で、その研究は歯周病学の今日の発展に大きく貢献しています。
武居先生は単身ボストンに渡り、かつて留学していた際の伝手を頼りに面会を申し込み、その熱意に押された先生が快諾し、対談が実現したそうです。
武居先生の所属するスタディーグループは、歯磨き指導を中心にした歯周病治療を古くから実践し、手術をなるべく行わず、歯周病治療に薬を使うことを否定するグループです。
一方、ソクランスキー先生は既に第一線を退いておられますが、現役時代は歯周病治療に抗菌剤を併用することを、研究しておられました。
武居先生は、歯周病を徹底した歯磨き指導で治し、しかも長期的に安定した良好な経過をたどっている治療例を、ソクランスキー先生にプレゼンテーションしました。
その上で、『私たちのグループは、歯周病治療に抗菌剤を使用する必要性を見いだせない。もし(ソクランスキー)先生が薬を使用する必要性を私たちに示していただけるのであれば、我々も薬を使いたい』 という趣旨の質問をしたそうです。
それに対しソクランスキー先生からは、
『抗菌剤を使用すると、ほんの少し治療の成績が向上するが、その代償として抗菌剤の副作用のリスクを患者に与えてしまうことになりかねない』
『35歳以下の急速に進行した歯周病や、なかなか治らない歯周病など、一部の特殊な場合を除いて、できれば薬を使用せず治したい』、
という、意外な答えが返ってきたそうです。
歯周病微生物学の父とも言われるソクランスキー先生のお言葉は、非常に重いと言えます。
当院では、薬を使用した歯周内科の効果を認めつつも、その応用を慎重に選択し、必要性の高い患者さんに限定して行っています。
(c) カビ(真菌)に作用する薬剤・液体歯磨き剤
また、真菌と呼ばれるカビの一種が、治りにくい歯周病の一因になっているのではないか、という説があり、抗真菌剤(カビの薬)を投与する場合があります。
当院でも、希望される方には抗真菌剤を使用します。(自費診療)
保険診療においては、薬でない下記の歯磨剤(液)を代わりに使用します。
(この歯磨き液は歯磨き粉と同じ扱いですので、保険給付対象となりません。)
(d) 真菌に作用すると言われている特殊な歯磨き液
この歯磨き液は、もともと肉類腐敗防止剤の目的で食品として開発されたもので、人体に安全な天然成分だけで作られています。
したがって、飲み込んでも問題はありません。
通常の歯磨き剤には、ラウリル硫酸ナトリウム(界面活性(石油科学系物質))など、多くの化学成分が含まれています。
一方、この歯磨き液には化学物質が含まれず、天然成分だけで構成されています。
よって安全な歯磨き剤といえます。
その効果は抗真菌剤には及ばず、また、医薬品ではありませんので、『真菌に効く』と言う医学的データはありません。
しかし、使用した歯科医師の実感として、約8割程度の効果を有するのではないか、と主張している歯科医師も存在します。
(9) 歯周内科の注意点
歯周病に薬を併用する方法は、手軽に習得できるので今後取り組む歯科医院が増えると思われます。
この方法により、(見かけ上の)症状の改善、経過の安定化に役立つ場合があります。
この方法を慎重に選択すれば、良好な結果が得られる場合もあり、当院でも以前から時々採用しています。
しかし、全ての歯周病が『治る』わけではありません。
歯周内科といわれる方法で抗生物質を投与されると、症状が急激に改善されます。
ただ、、症状がなくなっても、多くの場合歯周病そのものが『治る』 わけではなく、歯周病の病状を長期にわたり安定化させているだけですので、薬だけで全てが解決、とはいきません。
歯周病を治すためには、時間をかけた歯磨きが最も重要です。
ただ、それだけでは充分な病原菌の除去は出来ませんので、専門家による歯の周囲の定期的なお掃除も必要です。
重症の方には手術も必要になる場合があります(歯周病の外科治療のページ参照)。
歯科医院のホームページには、いとも簡単に良い結果が出る様な情報が氾濫していますが、実際は一つの方法で充分な結果が得られるとは限らないことを、是非知っておいてください。
(10) 当院の歯周内科
当院でも歯周病の薬物治療(歯周内科)を行っています。
ただし、行う患者さんは、厳選しています。
位相差顕微鏡における観察のみで、先に説明した薬剤を使用する場合もあります。
ただし、特に全体的に歯周病が進行し、とりあえず進行を一旦安定させる必要性の高い方を中心に行っています。
当院で時に行う方法は、正確な歯周病細菌検査(細菌のDNA分析)を行ったのち、検出された細菌に有効な薬剤を、機械的にバイオフィルムを除去した瞬間から投薬し、的確な除菌を行う方法を用いています。
悪玉菌が検出されない場合は、薬剤は使用しません(必要性が低いため。)
三重県四日市市のさくら総合歯科では、何度も説明しているとおり、適材適所、他の方法と併用して使用します。
さらに、歯周内科を更に発展させた、希望される方には『スーパー口腔内科』も行っております(自費診療)。
(11)歯周内科と歯周外科併用法
歯周外科を行う前に、骨の再生などの手術成績を向上させる目的で、歯周内科治療を行う方法です。
歯周病の超悪玉菌がお口の中に存在する場合に、最も良い結果が得られます。詳細については、後述します。
歯周病の予防に関心のある方、歯周病でお困りな方のお問い合わせは まで。
7.次亜水・オゾン水の利用
海外では、歯周病菌やむし歯菌の殺菌に、クロルヘキジンとよばれる消毒薬が使用されています。
しかし、日本では同薬の有効濃度でのお口の中への使用が原則許可されておりません。
その代わりとして近年歯科の分野で利用されているのが、次亜水とオゾン水です。
(1) 次亜水
次亜水は次亜塩素酸水ともよばれています。
好中球(白血球の一種)は、侵入してきた細菌に対して次亜塩素酸(HClO)を産生することにより殺菌しています。
次亜塩素酸は人体における殺菌能力の本質であるとも言えます。
この次亜塩素酸を含んだ水を次亜水と呼び、近年医療の分野を始め様々な分野で使用されています。
次亜水の利用法として、
・ 歯周ポケット内の洗滌や歯ぐきの下の歯石取りの際に使用
・ 毎日のうがい薬として使用
などがあります。
うがい薬として継続的に使用するのは、未知の副作用の問題やお口の中の善玉菌まで殺してしまい、細菌のバランスが崩れることなど欠点も多いことから、当院では推奨していません。
(2) オゾン水
オゾン(O3)は酸素原子3個からなり、それを水に溶かしたオゾン水は強い殺菌力を有し、脱臭力もあります。
オゾンは食品添加物としての使用も認められています
ヨーロッパでは水道水の殺菌はオゾンで行われています。
しかも、オゾン水に含まれるオゾンは分解されて酸素に変わるため、無害で安全性が高いといわれています。
したがって多くの医療機関で利用されています。
歯石を取るときや、歯周ポケット内の洗滌等で使用される場合があります。
次亜水と異なり、生成後すぐに使わないと効力がどんどん落ちてしまいます。
水道水を原料とした場合、約30分後には濃度が半分になってしまいます。
8.3DS(Dental Drug Delivery System)
患者さん個人にあったドラッグリテイナーという器具を作成し、その中に様々な薬剤を流し込んでお口の中に一定時間装着し、歯に付着した細菌や、歯周ポケット浅部に存在する細菌を大きく減らし、歯周病やむし歯、菌血症を防ぐ方法です。
詳しくは3DSのページをご覧ください。
9.光殺菌療法(aPDT)
青い色素(光感受性ジェル)を歯周ポケット内に挿入し、専用の照射器で歯周ポケット内や歯ぐきの表面から強力な光を照射することにより、歯周ポケット内に活性酸素を発生させて、色素に染色された細菌を選択的に殺菌する方法を、光殺菌療法(aPDT)と呼びます。
医科では既に1990年頃から早期ガンに対して使用されてきましたが、歯科では数年前から使用されるようになりました。
詳しくは、光殺菌療法 aPDTのページをご覧ください。
10.プロバイオティクス
近年、「菌により菌を制す」という、プロバイオティクスと呼ばれる考え方の研究が進んできています。
例えば、 Lactobacillus salivarius TI 2711 (乳酸菌LS1) は、歯と歯ぐきの隙間の細菌中へと移行し、P. gingivalisと呼ばれる歯周病菌をを減少させるとともに、歯周病の臨床症状を改善する傾向が認められた、との報告があります。
(むし歯菌にも有効との報告もあります。)
ただ、その効果は限定的でした。
一方、最近別の乳酸菌により、むし歯菌や歯周病菌を減少させることができた、というデータを元に開発されたサプリメントが、日本でも発売されました。(グラフ)
市販の洗口剤などに含まれる殺菌剤は悪玉菌にあまり効果がなく、むしろ善玉菌を多く殺してしまう傾向が強いのに対し、この方法は、主に悪玉菌を減少させる目的で使用されます。
単独では効果が充分ではありませんが、他の方法と組み合わせると効果的です。
四日市のさくら総合歯科では、
・「薬を使いたくない」
・「薬を使用した後で、更にお口の中の細菌の状態を改善したい」
・「歯石取りの効果を高めたい」
・「歯磨きだけでは不安なので、サプリメントの助けを借りたい」
11.食事療法(プレバイオティクス):食育指導
免疫力をアップさせるために、食生活の改善は必須です。
さくら総合歯科では管理栄養士・健康管理士による食事指導を行っています。
(詳細は後述)
(1) 食育とは?
食育とは、国民が生涯を通じて健全な食生活を実現し、健康の確保等が図れるように、自らの食習慣や食に関する様々な知識と、食を選択する判断力を身に付けるために行う取組みのことをいいます。
近年、食育指導を歯科医院で行う必要性が高まりつつあります。
三重県四日市市のさくら総合歯科には管理栄養士が常駐し、あなたの健康を広い視点から支援していきます。
また、院長も健康管理士として、食事に関するアドバイスを随時行います。
(2) 管理栄養士が必要な理由
管理栄養士が常駐している歯科医院は、全国的に見てもまだまだ希な存在です。
それでは、なぜさくら総合歯科には管理栄養士が配置されているのでしょう。
それは、歯科治療にとって実は食育指導が非常に重要で、歯科でそれを行う事により、様々な全身疾患の予防にもつながるからです。
歯科医師法第一章第一条には、
『歯科医師は、歯科医療及び保健指導を掌ることによつて、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保するものとする。』
と記載されています。
ここで重要なのは、
「歯科保健指導を掌る」ではなく「保健指導を掌る」
とされいることです。
つまり、「命の入り口、心の出口」とも言われるお口からは、生きるのに欠かせない栄養だけでなく、様々な病原体も入ってきます。
これらの入り口であるお口の健康を向上さあ競ることが、結果的に全身な健康向上にもつながることがわかってきました。
しかし、歯科衛生士には栄養学的な基礎知識はほとんど無く、歯科医師は栄養学や生化学は習っているものの、栄養指導の実践的な教育を受けているわけではありません。
だから栄養指導に関する専門教育を受けた、管理栄養士が必要なのです。
また、四日市さくら総合歯科では、
高精度体成分分析装置
AGE測定器
指先血管用顕微鏡
高感度CRP・HbA1c測定器
簡易血糖測定器
血圧測定器
などを併用し、食事・栄養指導に役立てています。
体組成3D解析装置は、2分間で全身の状態を把握し、体の異変の早期発見に役立てます。
高精度体成分分析装置では、体の4大構成成分、骨格筋、脂肪、部位別の筋肉バランスを高精度に調べて、これも指導に役立てています。
(3) 歯周病と食育
近年、比較的若い世代の重症歯周病患者さんが、多数来院されます。
それらの方の多くは、生活が不規則であったり、食習慣に問題がある場合が多いようです。
偏った栄養、清涼飲料水など糖類を含む飲料の多飲、スナック菓子の多食など、食生活の西洋化が進んでいます。
特に、糖類の過剰摂取は歯ぐきの血管に何らかの障害を来し、糖尿病になる前から歯ぐきに悪影響及ぼしているのではないか、と考えられています。
日本人が長寿なのは、『和食』がバランスのとれた、体に優しい食事であることが大きな理由です。
日本人は元々インシュリンを出す能力が欧米人より少なく、そのような民族が欧米人のような食事を摂れば、健康により大きな影響を及ぼすのは明白です。
歯周病は簡単に治る病気ではありません。
食生活がバランスのとれた健全なものでなければ、歯周病は多くの場合、治療しても再発・進行します。
また、歯周病が進行すると、
噛めない → 軟食を好む → 炭水化物に偏った食事→ 重要な栄養素の欠乏
により、更に進行してしまう、という悪循環に陥ります。
当院では、進行した歯周病患者さんには、食生活を調査し、改善点を指導しています。
12.栄養療法・・・免疫力をアップさせる
(1) 免疫力低下の要因
免疫力は様々な要因で低下します。
免疫力を左右する因子の例として、
食生活、ストレス、腸内環境、口呼吸、睡眠不足、運動、喫煙、低体温
などがあります。
バランスの良い食生活こそが、免疫力アップのために重要な要素です。
食生活については、『11.食事療法(プレバイオティクス):食育指導』をご覧下さい。
ストレスの解消
ストレス解消は、歯科医院での根本的解決は難しい側面がありますが、さくら総合歯科では出来るだけお話を伺ことにより、ストレスを少しでも軽減して戴ければ、と考えています。
また、ご自身でも積極的に適切な休養を取るよう心がけていただき、趣味などでストレスを発散することも重要です。
腸内環境の改善
腸内環境は、免疫力に最も影響を与える因子の一つです。
さくら総合歯科では分子栄養学的血液検査(内科などで行う検査とは検査項目が異なります)を行い、患者さんに不足している栄養素を調べます。
ただ、不足している栄養素を食事又はサプリメントで摂取したとしても、なかなか効率的に体内に取り込まれません。
そこで、便検査なども行って腸内細菌叢などを調査すると共に、それが効率的に吸収される環境を整えることにより、免疫力の向上を図ることにも取り組んでいます。
睡眠
また、睡眠が十分でないと、免疫力が低下します。
このことは、動物実験によって確かめられています。
20分程度のお昼寝も免疫力をアップするといわれています。
適度な運動
適度な運動でも、免疫系の細胞が活発になり、免疫力がアップします。
ウォーキングなど軽めの有酸素運動の継続は、免疫力アップに効果的です。
口呼吸
口呼吸も免疫に影響を与えます。
さくら総合歯科では、鼻呼吸を行うための訓練についても指導しています。
因みに、口呼吸はお口の中を乾燥させ、このことも歯周病悪化の要因になります。口呼吸については、15.口呼吸から鼻呼吸への項をご覧下さい。
禁煙
喫煙により、歯肉溝・歯周ポケットへ免疫細胞が集まる能力が減少します。
また、喫煙をしている方は歯肉の線維化と毛細血管の減少が生じ、その結果、歯肉の血流が減少することにより、局所の免疫が低下します。
よって、喫煙者にとっては禁煙が最大の免疫力アップと言っても過言ではありません。
低体温の改善
体温が低いと免疫力が低下します。
低体温の改善には、毎日20分程度の運動を行ったり、タンパク質の摂取が効果的だそうです。
ただし、日本人は胃酸の分泌が不足している方が多く、そのような方がタンパク質を多く摂っても消化吸収できません。
(2) 分子栄養学的対応
歯周外科や歯周内科を行っても結果の好ましくない場合があります。
そういう方や、手術を回避したい方の治療成績を向上する目的で、分子栄養学的対応を行います。
分子栄養学とは物理学者である三石氏が提唱した考え方です。
受け入れ側の身体を分子レベルで考え、各栄養素の役割を最大限に把握し、個人個人の身体の状況に応じ必要な栄養素を検査で明らかにし、必要な栄養素を吸収させることにより、病気を予防することを目的としています。
分子栄養学では、
・ 高タンパク
・ 高ビタミン
・ 活性酸素の除去
を重視することにより、遺伝子をフルに活動させるための栄養素を補充します。
この方法は血液検査を含む、多くの検査を必要とします。
さくら総合歯科は、歯周病に抵抗する免疫力を確保することに特化した栄養療法に取り組んでいます。
(3) 生活習慣病などに対する不要な薬の服用をやめる
高脂血症治療薬であるプラバスタチンによる冠動脈疾患(狭心症・心筋梗塞)の発症抑制効果について、5.3年間に渡る4000人規模の研究が行われました。
その結果、5.3年間に冠動脈疾患を発症したのは、
・ 食事療法+プラバスタチン群 → 1.71%
・ 食事療法単独群 → 2.55%
でした。
つまり、プラバスタチン服用による冠動脈疾患抑制効果は、
・ 相対リスク 33%減
・ 絶対リスク 0.84%減
という結果となりました。
「33%減」という数字を見ると、まあまあの効果があるのでは?
と思われるかもしれませんが、そうではありません。
この結果を別の表現で表すと、119人に5.3年間治療すると、一人の冠動脈疾患を予防できるということになります。
つまり、メバロチン(プラバスタチンの商品名)の薬価を136円/日とすると、一人の人間を冠動脈疾患から救うために、3149万円が必要という、大変効率の悪い、コストがかかる治療であると言えます。
したがって、ある有名な内科の先生は、
「高脂血症の患者には、抗酸化作用のあるサプリメントなどで対処すべきである」
と主張しておられます。
その副次的効果として、歯周病の改善の助けにもなる可能性があります。
ただし、そのような治療法に理解のある内科医の指示を仰いでから減薬や断薬を行う必要があります。
13.サプリメント
(1) ラクトフェリン
ラクトフェリンは1939年に牛乳から発見されたタンパク質です。
ラクトフェリンは唾液にも含まれており、お口の中の病原微生物や歯周病菌に対する抗菌活性を有します。
ラクトフェリンを摂取した研究によると、
・ 歯周ポケット内の歯周病菌数が減少し、歯周病の症状が改善
・ 歯周病菌から分泌されるLPS(毒素)をラクトフェリンが中和し、TNF-αと呼ばれる炎症性サイトカイン(細胞間の情報を伝達する微量タンパク質)の産生を抑制することで、歯周組織の炎症や歯周組織の破壊を防ぐ
などの効果が認められています。
MMP-1(matrix metalloproteinase 1)とは、コラーゲンを分解・断片化するタンパク分解酵素のことを言います。
歯周病菌毒素(LPS)が存在すると、このMMP-1が多く産生されます。
ところが、LPSにラクトフェリンを加えると、MMP-1の産生量が抑制されます。(右上グラフ)
その結果、ラクトフェリンを加えることによりコラーゲンの合成量が増えます。(右下グラフ)
これは、ラクトフェリンがコラーゲンを産生する線維芽細胞の遊走(方向性を持った移動)を促進することによります。
歯周病などで出来た傷の治り(創傷治癒)は、線維芽細胞がコラーゲンを産生し、そのコラーゲンを足場に毛細血管が発達し、流れ込んだ血液が線維芽細胞に酸素や栄養を供給し、更にコラーゲンの産生が進むことにより傷口に侵入し修復します。
したがって、ラクトフェリンは歯周病などによって出来た傷の治りを助ける作用があると考えられます。
(2) 活性酸素を除去するサプリメント
活性酸素は、白血球が細菌を攻撃するときに出される、体にとって重要な物質です。
ところが、この活性酸素は細胞を劣化させる原因(遺伝子を攻撃するなど)となり、歯周病の進行にこの活性酸素が関与している、という説もあります。
一方、体内には活性酸素を取り除く SOD(スーパーオキシドジスムターゼ)という酵素が存在します。しかし、 活性酸素が大量に発生すると体内に元々あるSODだけでは処理しきれなくなります。 そこで、SODのように抗酸化作用を有する物質:SOD様物質を含んだ食品やサプリメントを摂取することにより、 活性酸素を除去することが、歯周病進行の抑制につながる、と考えられます。
代表的な活性酸素の種類は、下の4つです。
・ スーパーオキシドアニオンラジカル
・ 過酸化水素
・ ヒドロキシルラジカル
・ 一重項酸素
代表的な抗酸化物質『アスタキサンチン』は一重項酸素に対してずば抜けた抗酸化作用を有しますが、当院で取り扱いのあるサプリメントはSOD様食品を原料としており、上記4種の活性酸素に対するバランスの良い抗酸化作用を有します。
14.漢方薬
体質改善を目的として、補助的に漢方を使用する場合もあります。
15.口呼吸から鼻呼吸へ
口で呼吸するとお口の中が乾燥し、唾液の抗菌作用が弱まり、歯周病が進行する一因となります。
したがって口を閉じて鼻で呼吸することが重要です。
しかし、長年の習慣を簡単に変えることは出来ません。
鼻呼吸を実現するために様々な訓練法がありますが、最も簡単で長続きするのが、福岡のみらいクリニックの今井先生(内科医)が考案された『あいうべ体操』です。
(1) あいうべ体操
下の写真のように、『あ』、『い』、『う』と声を出しながらゆっくり口を動かし、最後に『べー』と舌を思い切り出します。
(声は出さなくても良いそうです。)
これを10回連続で行い、1日3回行います。(計30回)
皆様もあいうべ体操を一度行ってみて下さい。
顔と舌の筋肉が疲れることがおわかりになると思います。
したがって、これを毎日続けると顔と舌の筋肉が鍛えられ、口を閉じて鼻呼吸がしやすくなります。
もちろん、日頃から鼻で呼吸をすることを意識することも重要です。
(2) 就寝時 口にテープを貼る
歯周病の進行した方に多く見られる口呼吸の影響を少しでも軽減するため、夜寝るときに口にテープを貼ると効果的です。
口にテープを貼って寝ると、風邪をひきにくくなることも多いようです。
四日市のさくら総合歯科では、口にテープを貼る生化学的理由、注意事項等を必要に応じて説明しています。
詳しくは、口腔内科のページをご覧ください。
16.より良い状態をお望みの方に・・・歯周外科
歯周内科は、あくまで病状の安定化を狙った治療法です。
重症の歯周病になってしまった方は、多くの場合、手術をした方が歯は長持ちします。
歯周病系の学会の認定医や専門医になるためには、複数の手術を伴う治療例を学会に提出しなければなりません。
なぜなら、重症の歯周病は手術をしなければ治せない場合が多いからです。
当院では、手術が必要な方にも、以下の目的で歯周内科を併用しています。
・ 手術が出来ない方の病状安定化
・ 手術を望まれない方の病状安定化
・ 手術を行う方に対しても、その成功率を高める目的
・ 重症の歯周病の進行抑制(のんびり治療していると、どんどん悪くなりそうなケース)
歯周病の手術にご興味のある方は、歯周病の外科治療のページをご覧下さい。
17.再発防止処置(メインテナンス)又は継続治療(SPT)
如何なる歯周病治療を行った後も、自己管理だけで歯周病の再発を防止することは困難です。
6ヶ月以内に1回の頻度で(通常は3ヶ月に1回)で継続的に管理を行うことが必須です。
この件に関しては、歯周病と基本治療のページをご覧下さい。
歯周病の予防に関心のある方、歯周病でお困りな方のお問い合わせは まで。
W.歯周病の外科治療
1.歯周病の外科治療(手術)の目的
歯周病が中等度以上に進行した場合、手術(歯周外科)が必要になることがあります。
手術には様々な方法がありますが、目的は何れも
『歯周病が進行すると、どう頑張ってもご自身では清掃できない部分(深い歯周ポケットなど)が出来るので、手術はこの状態を改善し、ご自身で清掃できる形にする』
ことです。
つまり、手術をしてそれが成功したとしても、生活(歯磨き・食事等)が今まで通りであれば短期間で歯周病は再発・進行してしまいます。
また、手術を希望して来院なさる方もおられますが、他の様々な問題について事前、あるいは同時に対応しておかなければ、手術を行ってもよい結果が得られません。
歯周病は手術さえ行っておけば治る、という単純な病気ではありません。
更に、手術を希望して来院される方の多くは、かなり進行してから来院される場合が多く、すでに手遅れの場合も少なくありません。
したがって、手術の是非や必要な歯周病の手術の種類などについての詳細は、診察を受けて戴いてからでないと判断は不可能です。
歯周病手術の方法は、多岐に渡ります。
各個人の病状、体質、全身状況、生活習慣、年齢を等を考慮した上で、手術の必要性の有無、手術法の選択を行います。
なお、手術が必要な方でも、ご本人の要望により手術をしない場合もあります。
手術と聞くと、皆様は『痛い』のでは?、と二の足を踏まれるかもしれません。
しかし、さくら総合歯科の手術は、原則として痛みはありません。
麻酔も何回かに分けて、ゆっくり行いますので、殆ど痛くありません。
痛がりの方にも、安心して受けていただいております。
2.歯周病の手術の種類
手術は『切除療法』と『再生療法』に大別されます。
一般的に行われているのは切除療法の一種(保険診療)ですが、その方法では多くの場合再発してしまいます。
この手術は『病状安定』をめざすもので、『治癒』をめざす治療とは言えません。
治療成績の良い『治癒』をめざす手術法は、保険外診療となります。
但し、痛みや腫れは当分の間起こりませんので、患者さんは安心してしまうのですが、実はひそかに歯周病が再発・進行し、気がついた時には治療不能状態になってしまいます。
当院で主に行っているのが、手術により骨の形を整えたり、歯周組織(歯ぐきや歯を支える骨)を再生する方法です。。
中等度以上の歯周病に対して行います。
『治癒』=『進行停止』を目指す治療です。
とにかく極限まで自分の歯を長く使用したい、という方に最適です。
(当院で行う手術は、通常痛くありません。)
手術は、軽症の方では必要ありません。
重症の方でも手術をしない場合がありますが、長期予後(長期間経過後の状態)に差が出ます。
再生療法は適応症が限られ、また確実性が高いとはいえませんが、その必要性の高いと判断したときに行っています。
(A) 切除療法
(a) 一般的な手術(MWF)
歯石を直接見える状態にして、歯の根を掃除する方法です。
簡単な方法ですが、治療後の組織の状態(顕微鏡で見たときの状態)が元々の状態(健康な状態)と大きく異なるので、非常に再発しやすいのが欠点です。
歯周病の手術を始めて間もない歯科医師は、まずこの方法で手術を行います。
ところが、治療成績が悪いため、若かりし頃に意欲を持って手術を行っていた歯科医師の多くは、手術後の経過が殆ど思わしくないため、やがて手術を行わなくなります。
当院でも開業当初はこの方法で手術を行っておりましたが、上記理由により現在は、行っておりません。
(b) アピカリーポジションドフラップ(APF)
正確な診断の元に行えば、確実性が高く、術後の安定度が最も良い方法です。
長期的予後が良く、当院で最もお勧めするのが、この方法です。
技術的に難しい(体に対する影響は少ない)方法で一般的ではありませんが、治療後の歯周組織の状態が本来の状態と近く、再発が起こりにくい方法です。
当院でこの手術を受けられた方の多くは、10〜20年以上経過しても大変良好な状態を維持しておられます。
(c) 遊離歯肉移植
歯磨きをしにくい環境、歯磨きで傷つきやすい歯ぐきを治す手術です。
手術法(動画)はこちら(要 WindowMediaPlayer7 以上)
(d) 結合組織移植
薄く傷つきやすい歯ぐきを厚く傷つきにくい状態にしたり、歯ぐきが痩せて歯の根が見えている場合に、その根を見えない状態にする手術です。
(B) 再生療法
(a) エムドゲイン(EMD:Enamel Matrix Derivative)
元々歯の根の表面にあるセメント質を誘導する材質で、これを手術中に歯の根の表面に塗布することにより、骨を再生させることができる可能性のある方法です。
GTRに比べて、骨の再生は少なめのことが多いようです。
メーカーの患者さん用説明資料はこちらをご覧下さい。
(手術法(動画)はこちら(要 WindowMediaPlayer7 以上))
生物(ブタ)由来の材料です。
単独で使用する場合と、骨補填材(合成の骨に置きかわりやすい材料)を使用したり、下記骨移植と併用する場合もあります。
自費診療です。
(b) GTR
特殊な膜(メンブレン)と骨補填剤(骨の代わりとなる材料)を使用することにより、失った骨を再生する方法です。
適用できる症例は限られ、どの歯でも行えるというわけではありません。
骨補填剤には人体由来のもの、牛由来のもの等もありますが、当院ではより安全性を高めるという観点から、合成の物を使用しています。
(手術法(動画)はこちら (要 WindowMediaPlayer7 以上))
この方法は、特殊な膜が術後に露出するケースが多く、その結果細菌が膜を通過して感染を起こし、成功しない場合があります。
但し、術後の管理次第では、最も多く骨を再生させることが可能な方法です。非吸収性材料(2回の手術が必要)を使用する方法は成功率が比較的高く、主流となっておりましたが、平成22年末でメーカーが生産から撤退したため、現在は吸収性の材料(手術は1回)しか使えません。
吸収性の材料は、膜が露出した場合の結果が好ましくなく、今後行われる機会が少なくなって行くと思われます。
自費診療です。
GTRの保険導入について
平成20年4月より、この方法を保険で行うことが出来るようになりました。
ただし、(現在のところ)骨補填材が使用出来ません。
骨補填材を使用しないと、成功率が低くなるとの評価が多いので、注意が必要です。
また、現在認可のおりている材料が吸収性の物ばかりで、治療成績の良いといわれている非吸収性の材料が、今のところ使えません。
(c) 骨移植(自家骨移植・他家骨移植・人工骨移植)
歯周病によって失われた歯槽骨を、患者さんご自身から採取したり、他人の骨を移植したり、人工の骨を使って移植したりする方法のこと。
当院では、ご自身の骨を使用する自家骨移植を行う場合があります。
また、採取できる骨に制約がある場合、人工骨を併用する場合もあります。
自費診療となります。
参考1:GEM21S(Growth factor Enhanced Matrix)
GEM21S(ジェム21)とは、rh PDGF(血小板由来成長因子(Platelet Derived Growth Factor))とβ-TCP(超多孔性合成βリン酸三カルシウム)で構成された物質で、これを手術により骨がなくなった部分に詰め込むことで、骨と粘膜の両方を大幅に治すことが出来る、といわれている方法です。
米国 Osteohealth社の製品です。
ただ、現在のところ上記エムドゲインより明らかに臨床成績がよい、との報告はなく、多大な期待は禁物です。
現在日本では認可されておらず、直接海外から輸入して使用することになります。現在世界で広く行われている方法の中では、比較的新しい方法です。
100%合成された材料です。
なお、当院では取り扱いしておりません。
参考2:骨膜移植
GTRで使われる膜の代わりに、ご自身の骨の周りにある骨膜を利用しようという考え方です。
ただ、一般的な方法ではなく、効果の検証も充分とは言えません。
3.歯周内科と歯周外科併用法
歯周外科を行う前に、骨の再生などの手術成績を向上させる目的で、歯周内科治療を行う方法です。
歯周病の超悪玉菌がお口の中に存在する場合に、歯周外科の結果に良い影響を及ぼします。
4.非外科的療法(手術をしない方法)
手術が必要な場合でも、全身的な要因(重度心臓病など)や患者さんのご希望により、手術を回避する場合があります。
この場合、進行を完全に止めることはできませんが、自己管理を入念にすることにより、延命が図れます。
手術を行わず、少しでも良い結果を得たい方には歯周病の内科治療が選択枝となります。
歯周病の予防に関心のある方、歯周病でお困りな方のお問い合わせは まで。
X.歯周補綴・歯周矯正
軽症の歯周病で、歯ならび噛み合わせの良い方は、歯周病の基本治療のみで治ることが多いようです。
中等度の方でも、歯周病の内科治療によって長期的に安定した状態を保てる場合があります。
しかし、中等度以上に進行した歯周病の多くや、咬み合せの悪い方は、基本治療のみでは良くならなかったり、一時的に良くなったようでも長期的に観察していくと再発進行してしまうことが多いようです。
そのような方には、
・ 歯周補綴(治療により改善された歯周病を長期安定させるのに必要な冠・ブリッジ・義歯等)
・ 歯周矯正(歯周病を改善し、良好な状態を維持する目的で行う矯正治療)
も行わなければ長期的に安定した状態は得られません。
1.歯周補綴
補綴(ほてつ)とは、むし歯で歯の健康な部分が少なくなった場合や抜けた(抜いた)場合に、冠(かぶせもの)・ブリッジ・入れ歯などの人工物で補うことをいいます。
この際、装着する人工物(冠・ブリッジなど)は、
・ 患者さん自身がセルフケア(歯磨き)をきれいにできるか
・ 歯科衛生士がいかにプロフェッショナルケアをきれいにできるか
・ 歯に過剰な側方力をかからないようにするか
の3点を考慮して作らなければなりません。
皆さんのお口の中に装着されている人工物は、基本的に上記3点について考慮されずに作られています。
なぜなら、これら要件を実現するためには、歯科医師・歯科技工士ともかなりの時間をかけて作成する必要があるからです。
三重県四日市市のさくら総合歯科で自費診療による治療を受けられた方は、治療時間の長さに驚かれることが多いですが、それは上記3点を実現するためにどうしても必要なことなのです。
一方、歯周病が進行すると、歯を維持する骨が少なくなって歯が弱ります。
この場合、個々の歯を単独で治療しても噛むことにより歯が動揺し(揺れる)、それが原因で歯周病が再度急速に進行します。
それを防止するため、多数歯をブリッジや義歯で連結することも必要になります。
上記3点を考慮する治療を、『歯周補綴』といいます。
手術が必要であるか否かに関わらず、噛み合わせの改善のためや、むし歯の治療等で冠や充填物(詰め物)をかぶせる必要性がある場合もあり、この場合も歯磨きの行いやすい形に作る必要があります。
入れ歯
歯のない部分に入れ歯を入れる場合、通常の入れ歯では支えとして使用する歯に過度の負担がかかってしまいます。
したがって、残った歯に負担のかからない、特殊な入れ歯を作成する必要があります。
インプラント
歯のない部分には、インプラントも選択枝の一つです。
インプラントは、上手く利用すれば残ったご自身の歯を守る働きがあります。
(慎重に行わないと、かみ合っている反対側の歯が弱る場合もあるので注意が必要です。)
ただし、歯周病が進行した方は、インプラントものちに“インプラント周囲炎”になりやすいので、事前に歯周病をきっちり治療してから行うことが必要です。
これらは歯周病の再発防止にとって、なくてはならない重要な治療法の1つです。
歯周矯正
歯周病の治療に矯正治療が必要な場合
もともと歯ならび、かみ合わせの悪い方は、歯周病になりやすいので、場合によっては歯ならびを治す 『矯正治療』 が必要になります。
一方、歯周病を放置することにより、歯ならび・かみ合わせが悪くなる場合があります。
この場合、元の位置に歯を戻す 『矯正治療』 が必要になります。
但し、成人矯正は 『後戻り』 と呼ばれる治療後の歯の移動が100%起こるので、矯正治療を行う場合には、後に述べる 『冠による連結=永久固定』 が必要になります。当院では、基本的に永久固定を伴わない成人矯正は好ましくないと考えています。
したがって矯正治療のみを成人に行うことはありません。
歯周病治療に用いる矯正治療の種類
・ ブラケットと呼ばれる四角い物を歯にくっつけ、それにワイヤーを通して行う方法
・ 入れ歯型の装置を使用する床矯正を使用する方法
・ 歯の内側にワイヤーを入れる3Dリンガル、3Dクアッド
・ 既製のマウスピースを使用するマイオブレイス
・ 透明な特注マウスピースを使用するアライナー
・ その他の方法
があります。
歯周病の予防に関心のある方、歯周病でお困りな方のお問い合わせは まで。
Y.歯周病ドック
歯周病ドックとは
人間ドックとは、自覚症状の有無に関係なく病院・医院にて身体各部位の精密検査を受けて、自分では気がつきにくい病気や臓器の異常・健康度などをチェックする健康診断のことをいいます。
当院で行う歯周病ドックも同様に、自覚症状の出にくい歯周病の早期発見・病状把握を目的として行い、更に一生自分の歯で快適に食事が出来るよう手助けするための健康診断です。
定期的な歯科ドックを受けると
ジャパンオーラルヘルス学会(旧 日本歯科人間ドック学会)では、「歯科人間ドック」を受けるメリットとし て下記の項目を挙げています。
・ 早期発見・治療による医療費の削減
・ 診療時間の縮小や回数の短縮
・ 身体への影響(歯を削る・抜く・手術)が減少
・ 全身疾患の悪化を防ぐ(心臓病・糖尿病・ガン・肺炎・アルツハイマーなど)
・ アンチエイジング(血管老化の防止)
その中でも歯周病の早期発見に特化したのが、「歯周病ドック」です。
歯周病ドックが必要な方
むし歯や歯周病は自覚症状がなくても発症している可能性があります。
歯周病は細菌感染症でありながら生活習慣病的側面を持ち合わせた、複雑な病気です。
通常進行が遅く、重症になるまで自覚しにくい病気です。
放っておくと歯ぐきから膿が出たり、激しく痛みがでたり、歯がぐらぐらになったりして、最後には抜けてしまいます。
それだけではなく、歯周病を引きおこす細菌や歯周病の炎症で生まれた成分が血管の中に侵入し、血液の流れに乗って全身をめぐります。その結果全身に様々な病気を引き起こしたり、悪化させたりすることがわかってきました。たとえば、心臓病や肺炎などの病気を引き起こしたり、糖尿病を悪化させる要因になったり、早産や低体重児出産の原因になったりすることがわかっています。
更にはアルツハイマー、骨粗しょう症、がんと歯周病の関係も取り沙汰されています。
お口の中の健康は全身の健康につながっていきます。
コラム 人間ドックの日
あまり知られていませんが、7月12日は人間ドックの日と定められています。
昭和29年7月12日(月)(1954.7.12)に国立東京第1病院(現:国立国際医療研究センター)で人間ドック健診が始まったことを記念して定められました。
今でこそ普及した人間ドックですが、意外に古くから行われていたようです。
歯周病ドック検査項目と検査費用
費用は消費税別です。
一次ドック
90分〜(120分)(初診カウンセリングを除く)初回
18000円@ ST検査
A 口腔内カラー写真12(+α)枚法
B 歯周精密検査
C プラーク顕微鏡検査
D デンタル14(+α)枚法・・・重症の方は後日再来院の上撮影の場合あり
2回目(2週間後以降)
@ 一時ドックの結果説明(写真呈示し、口腔内についても説明)
A 歯周病治療の説明 3000円(1時間以内)
質問により1時間を超える場合は、5分につき500円(二次ドック内容説明を含む)
二次ドック
50,000円(CT撮影なしの場合は40,000円)必須項目
唾液検査(SM LB 唾液緩衝能 唾液量(安静時と刺激時))
齲蝕原性菌(PCR)法も行う場合は+6000円)
カンジダ検査
PCR5菌種(唾液)
全身写真(前/側方)・足指写真
高感度CRP検査
体組成3D解析装置簡易検査→簡易結果お渡し
体成分分析装置検査
血圧測定
お口の中の模型作成(型取り)
フットビュー
オプション項目(広範囲に重症の方、若年者の歯周病の方)
P.g菌 FimA遺伝子 +18000円
歯周病の予防に関心のある方、歯周病でお困りな方のお問い合わせは まで。