歯周病の基本治療
歯周病には様々な治療法がありますが、歯周病の進行程度に関係なく、最初に行われるべき治療を歯周基本治療といいます。
以下に、歯周基本治療を中心とした、歯周病治療の流れについて説明します。
歯周病の簡単な検査で歯周病であることが判明した方は、概ね下図の順で治療を進めてゆきます。
歯周病治療は、歯科医師と歯科衛生士や管理栄養士が協働して行います。
さくら総合歯科歯周病治療の流れ
歯列矯正やインプラント・入れ歯(義歯)も必要になる場合があります。
歯周病以外の治療を含めた診療の流れについてはさくら総合歯科・治療の流れ図もご覧下さい。
以下に治療の詳細について説明します。
(1)各種検査
a) レントゲン検査
歯周病は、直接見ることが出来ない骨が吸収してなくなることにより、歯を失う病気です。
したがって、骨を視覚的に観察することの出来る、レントゲン検査が必須です。
一般的に初診時には、パノラマと呼ばれる断層撮影法が用いられますが、歯周病の治療を目的とする場合、デンタルと呼ばれる小さなフィルムを用いて、お口全体を撮影します。
(a) パノラマX線撮影(オルソパントモグラフィ)
お口の中だけではなく、下あごの骨全体と、頭部の下半分程度まで幅広く撮影できる、断層撮影です。
お口の中以外の情報も得られるので、初診の方に多く用いられます。
ただ、断層撮影は画像がぼんやりしており、細かい異常が発見しにくいのが欠点です。
したがって、歯周病の治療を厳密に、徹底的な治療を行う場合には適していません。
(b) デンタル10〜18枚法
デンタルフィルムと呼ばれる小さなフィルムを10〜18枚用いて、お口全体を撮影する方法です。
多くの場合12枚撮影しますが、歯の大きさや親知らずの有無により数枚追加して撮影します。
逆に、より正確な診断のため、18枚程度のフィルムを使用して撮影することもあります。
さくら総合歯科は、平成26年5月よりメディカルトリートメントモデルの考え方に基づき、多くの初診患者様のこの方法でレントゲン撮影を行っています。
特に、 歯周病の治療を目的として来院された方や、歯周病治療が目的でなくても歯周病が中等度以上に進行した方に対してこの方法での撮影を行います。
b) 口腔内カラー写真
お口の中の写真を5〜12枚撮影します。
歯周病治療に於いて、歯ぐきの変化は治療の効果をご理解いただくために、もっとも重要な所見です。
治療の効果をご自身にわかりやすく確認していただくため、初診時、検査時等にお口の中の写真を撮影します。
他に、歯の形、色、歯ならび、その他病変の記録としても役立ちます。
c) 歯周病の検査(簡単な検査または精密な検査)
歯周ポケット(歯と歯ぐきの間の隙間)の深さ、歯の動揺(ゆれ)などを測定します。
精密な検査を行う場合、保険診療で指定されない項目も、(サービスで)検査する場合があります。
d) 唾液の検査
唾液の性質や、その中に存在する虫歯や歯周病の原因となる細菌・真菌(カビ)を検査します。
詳しくは、唾液検査のページをご覧下さい。
e) 歯周病関連菌検査
歯周病原因菌の中でも悪玉度の高い(簡単に言えば毒性の強い)下記細菌の一部について、個々の患者様にどれくらいの割合で存在するかを調べる検査です。
・ Aggregatibacter actinomycetemcomitans
・ Porphyromonas gingivalis
・ Tannerella forsythia
・ Treponema denticola
・ Fusobacterium nucleatum
・ Prevotella intermedia
当院では、
・ 信頼性の高いゲノム解析により、特定の細菌の数を調べることが出来る方法(PCR法)
・ 信頼性の高いPCR法と同時に、P.g菌の遺伝子型を検査する方法(追加オプション)
・ 院内で検査できる簡易的な検査
の3種を適宜使い分けています。
f) 位相差顕微鏡の検査
歯にへばりついている歯垢(細菌の塊)を採取し、位相差顕微鏡で観察します。
この検査により、お口の中には膨大な細菌が活発に活動していることが、お解りいただける利点があります。
しかし残念ながら、顕微鏡の検査では歯周病や虫歯の細菌が実際に存在するか否か、また、存在する場合その割合はどれくらいか、については確定することが出来ません。
ただ、細菌の大まかな種類や活動の度合いはある程度分かりますので、活発な細菌の活動が認められた場合は、上記歯周病関連菌検査や虫歯菌検査を行う必要があります。
それにより、本当に歯周病や虫歯の細菌が存在するか、また、存在する場合どの細菌がどれくらいの割合で存在するかを正確に調べることが可能です。
また、この検査は当院では無料で行っておりますので、継続的ご来院時に顕微鏡で観察することにより、手軽に細菌の活動状況の推移をご理解いただくのに役立ちます。
但し、細菌を採取した場所、顕微鏡で観察する際にプレパラート(細菌をスライドグラスに乗せた標本)上のどこを見るかにより、観察できる細菌の種類がまちまちで、しかも細菌の活動状況は大きく変動します。
よって信頼性に乏しく正確な診断とは言えません。
また、顕微鏡で見える細菌がどのような種類のものか、本当のところは細菌学の専門家でもわからないそうです。
あくまで傾向をつかむ程度の検査、とお考えください。
当院では位相差顕微鏡による結果はあくまで参考程度にとどめ、治療の効果をわかりやすく患者様に説明するための手軽な手段として、有効利用しています。
g) 唾液の潜血検査
免疫学的に唾液のヘモグロビンを検出する方法です。
これにより唾液中に混入している微量な潜血の有無を検出し、歯周病に見られる出血を簡単・迅速に調べることが出来ます。
h) 口臭検査
歯周病治療を希望して来院される患者様のなかに、実は、口臭を気にしておられ、その改善が本当の目的の方も多いようです。
その様な方のために、当院では非常に精度の高い口臭測定器、『オーラルクロマ』による三大口臭原因物質の測定も行う場合があります。
詳しくは、口臭治療のページをご覧下さい。
(2)歯磨きの指導 <歯周病治療の基本・大原則>
a) 歯磨きの目的
a)-1 歯を磨くことは、命を磨くこと
『歯を磨くことは命を磨くこと』
ちょっと大げさなのでは、と思われるかもしれません。
a)-2 歯周病の治療の大原則
歯周病の治療は正しい時間をかけた歯磨きなくしては成り立ちません。
歯磨きは、歯の周りにこびりついた歯垢と呼ばれる細菌のを除去するために行います。
決して『食べかす』を除去するためではありません。
b) 歯ぐきのマッサージは不要
また、歯ブラシで歯ぐきのマッサージを行う必要はありません。
未だに『歯ブラシで歯ぐきのマッサージを行いましょう』と言われる先生もおられますが、歯周病の治療に真剣に取り組んでいる先生であれば、その様なことは言われません。
考えてもみて下さい。顔や体をマッサージするとき、硬いブラシを使いますか?
ましてや、お口の中の粘膜と呼ばれる部分は、皮膚より柔らかく傷つきやすいのです。
当然ブラシでこすれば強いダメージを受けてしまいます。
ただし、指でマッサージすることは、場合によってはプラスとなることがあります。
c) 歯ブラシの形について
最近、大規模量販店やホームセンターには、大変多くの種類の歯ブラシが販売されています。
しかし、その多くは歯周病や虫歯の予防にとって好ましい形状ではありません。
市販されているものは、『歯のため』であることは二の次で、『売れること』が目的となっています。
売るためには、何か目立つ特徴がなければなりません。
そのためには、
・山切りカット
・毛先が丸い
・毛先が細い
・柄が曲がる
・毛が素直な形に並んでいない
など、きれいに磨くのに不適切な特徴ばかりが、付与されています。
(東急ハンズなど一部の量販店では、良い歯ブラシも販売されています。)
一方、歯科医院に売っている歯ブラシは、殆どが『素直な形で、毛先がコンパクト』です。
一部例外もありますが、歯周病治療に真面目に取り組んでいる歯科医師であれば、素直な形状のものを選択します。
特に最近、毛先が細い歯ブラシが流行しています。
『毛先が細いので歯周ポケットの中まで毛が入る』
のがうたい文句ですが、歯磨きに詳しい歯科医師の多くはこの考え方を否定しています。
歯磨き指導の分野で第一人者の一人、今村先生は、
『毛先を歯周ポケットの中に入れる必要性などない、と断言できる!』
と仰っていました。
逆に、そのような磨き方をすることにより、歯ぐきを痛めつけてしまいます。
歯ぐきの上に見えている細菌を取り除いただけで、歯ぐきの下に隠れている細菌の質が改善し、歯周病は改善します。
歯科治療に関するマスコミからの情報は、治療に真面目に取り組んでいる歯科医師にとって、首をひねりたくなるものばかりです。
当院では、本当に正しい情報を皆様にお伝えするよう、常に心がけています。
d) 歯磨きで脳を活性化
ところで、花王の研究によると、疲れたあとに歯磨きをすると、脳が活性化し、気分がリフレッシュする
との結果が得られたそうです。
歯磨きと脳の活性化についてのページはこちら。
e) 歯磨きで食道ガン・お口のガン予防
お口の中には、様々な細菌が存在します。
それらの中には、発がん物質「アセトアルデヒド」を作る菌も含まれており、殆どの人のお口の中に存在します。
その影響を最も受けるのが、お口の中(口腔)と食道です。
お口の中の細菌によって産生されたアセトアルデヒドによって、
・ 口腔癌(舌癌・歯肉癌など)
・ 食道癌
が起こる場合があります。
お口の中のガンは、治療により食事や顔貌に多大な影響を及ぼします。
食道癌は発見しにくく、転移も早いやっかいなガンです。
これらのガンを予防するのためには、アセトアルデヒドを産生する細菌を減らさなければなりません。
その細菌を効果的に減らす方法として、歯磨きが有効である、と考えられています。
歯磨きで、お口の中の発癌物質を減らしましょう!
f) 歯磨きなどの口腔ケアで、インフルエンザ予防
インフルエンザウィルスが体中に入って増殖し、インフルエンザを発症するためには、まず気道の粘膜を通過しなければなりません。
しかし、粘膜にはタンパク質の覆いのようなものがあり、ウィルスが簡単にくっつかないようになっています。
ところが、歯垢、歯石、舌苔(ぜったい)などから発生する酵素(プロテアーゼ)がそのタンパク質を破壊してしまい、ウイルスが侵入しやすい状態をつくると、そこで増殖します。
ある大学の研究によると、口腔ケアにより口の中の細菌を減らしたところ、プロテアーゼ量の減少することがわかりました。
その結果、インフルエンザの発症が抑えられるのです。
つまり、正しい歯磨きで歯と歯ぐきの間の歯垢を除去し、舌をやさしくお掃除し、歯科医院で歯石などを除去することが、インフルエンザの予防につながるといえます。
インフルエンザ予防には、「手洗い、うがい」「マスク」とともに「口腔ケア」も重要であることがわかってきたのです。
皆さんも、歯磨きを丁寧に行って、インフルエンザの予防をしましょう!
g) さくら総合歯科での歯磨き指導
当院では歯磨きの正しい技術を習得していただくために、患者様のライフスタイル・ご要望に応じ、1回15分〜1時間かけて数回に渡り、歯磨き法を指導しています。
細かい内容については御来院された際に御説明致しますが、重要なポイントは以下の通りです
・ 必ず鏡を見ながら磨く
・ 力を入れすぎないこと
・ 時間をかけること
歯磨きには、下の写真のような器具を使用します。
写真をクリックすると、使い方のページに移動します。
通常の歯ブラシだけで磨く方法もありますが、難易度が高くお勧めできません。
上から
歯ブラシ(小さめの素直な形のもの)
歯間ブラシ (使用法(動画)はこちら(要 WindowMediaPlayer7 以上))
インタースペースブラシ・・・類似品としてワンタフトブラシ
デンタルフロス (使用法(動画)はこちら (要 WindowMediaPlayer7 以上))
なお、電動歯ブラシは多くの場合お勧め出来ません。
何故なら、多くの電動歯ブラシは、歯周病の原因になる細菌の蓄積しやすい場所に届かないからです。
なお、現在一部の製品に、今までの電動歯ブラシの欠点を補うものが登場してきました。
有用な電動歯ブラシに関する情報を、さくら総合歯科では必要な場合に御説明しています。
(3)食育指導
健康な食生活を営むために食事に関する知識と食を選択する能力を身につける人間を育てることを“食育”といいます。
当院には進行した歯周病患者様が多数来院されますが、若い人を中心に食生活に多くの問題を抱えた方の割合が高いようです。
三重県四日市市のさくら総合歯科では、進行した歯周病患者様に対しては、高精度体成分分析装置を使用した上で改善点を指導する、本格的な食育指導を行います。
(詳細は歯周病内科治療のページ参照)
(4)分子栄養学的対応 ・・・ 免疫力をアップさせる
免疫力は
・ ストレス
・ 食生活
・ 腸内環境
・ 口呼吸
・ 体調
など、様々な要因によって影響を受けます。
ストレスは、歯科医院での根本的解決は難しい側面がありますが、四日市さくら総合歯科では出来るだけお話を伺ことにより、ストレスを少しでも軽減して戴ければ、と考えています。
食生活については、歯周病内科治療のページをご覧ください。
腸内環境は、免疫力に最も影響を与える因子の一つです。
四日市さくら総合歯科では分子栄養学的血液検査(一般的な検査とは項目が異なります)を行い、患者様に不足している栄養素を調べます。
そこで、場合によっては便検査なども行って腸内細菌叢などを調査し、腸内環境の向上により免疫力アップを図る試みも行うことがあります。
口呼吸も免疫に影響を与えます。
四日市さくら総合歯科では、鼻呼吸を行うための訓練について指導しています。
因みに、口呼吸はお口の中を乾燥させ、このことも歯周病悪化の要因になります。
(5)生活習慣の指導
生活習慣は、歯周病の進行に大き影響を及ぼす場合があります。
特に影響が大きいのが喫煙です。
仕事の姿勢や癖も、影響を及ぼす場合があります。
a)禁煙指導
喫煙は、細菌を退治する能力が落ちるなど、歯周病にとって大敵です。
ある歯周病治療で有名な歯科医師は、
『歯周病治療は、禁煙指導から』
と言っておられます。
たばこを吸っていると、通常は歯周病が進行しにくい、上の前歯の裏側の歯周病がひどくなる傾向があります。
これは、たばこの煙が最も高い濃度で接触することが、その原因と考えられます。
残念ながら、どんなに歯磨きを頑張っても、歯科医院に根気よく通っても、いかなる手術を受けても、喫煙をやめない限り、歯周病の進行を完全に止めることはできません。
また、喫煙者は手術内容が限定されるので、更に条件が不利になります。
歯科医院では、現在本格的な禁煙外来はできませんが、簡単なアドバイス等は行うことが可能です。
当院にご来院戴いた患者様の中にも、禁煙を成功させ、おかげで長期的に安定した状態を維持している患者様が、何人もおられます。
b)態癖指導
学会で興味深い発表がありました。
メタボ防止のため、電車通勤をやめ、自転車で通い始めた中年男性の症例でした。
その後奥歯の調子が悪くなり、治療を受けてもあまり良くならなかったそうです。
スポーツタイプの自転車に乗っていたので、通勤時は上を向いた状態になります。
主治医の先生は、上を向くと奥歯に負担がかかり、それが関係しているのではないか、と考え、徒歩通勤に変えてもらったそうです。
すると、今まで悩まされていた奥歯の炎症が落ち着いたそうです。
歯周病の原因は、あくまで細菌です。
しかし、このように様々な要因によって影響を受ける、大変複雑な病気です。
頬杖などの外力によって、歯は簡単に影響を受けます。
それが歯周病治療の妨げ、歯周病進行の一因となっている場合が少なくありません。
当院では、この点についても詳しく調査し、指導しています。
(6)咬合調整
無理な力のかかった歯は歯周病が進行しやすく、治りにくくなります。
咬合調整とは、噛んだとき(かちかち噛んだときや、歯ぎしりをしたとき)に無理な力のかかる歯のかみ合わせを、歯を少しずつ削ることによりなるべく無理な力がかからないように調整することをいいます。
(7)循環障害に対する対応
血液の流れが悪いと、歯周病は治りにくくなります。
具体的どのような場合に問題があり、どうすれば良いかについては、ご来院時にご説明致します。
(8)簡単な歯石除去
歯石は、口の中の細菌の死骸などに、唾液や血液中のカルシウムがこびりついたものです。
歯石は歯と歯ぐきの境目付近と、歯ぐきの下の見えない部分に付きます。
この段階では、歯磨きをする際に邪魔になる、歯ぐきの上についている歯石のみを除去します。
(歯石除去の動画はこちら (要 WindowMediaPlayer7 以上))
(歯科医院に『歯石を取ってください』といって受診した場合、歯ぐきの上の歯石のみを取るだけで、歯ぐきの下の見えない部分についている歯石は取っていない場合があります。)
(9)精密な歯周病の検査
当院で正確な診断、良好な状態を長期間維持できる状態にするため、通常よりはるかに歯周病の治療について説明致します多くの項目について、検査しています。
30分(軽症)〜1時間半前後(重症)かかります。
(10)歯ぐきの下にの見えない部分についている歯石の除去
通常、麻酔をしてキュレット型スケーラーという器具で、全体を何回かに分けて歯石を取りますが、この方法には決定的な欠点(歯の重要な部分が除去されてしまう)があります。
当院では歯ぐきの下に付いている歯石を取る専用の器械を用いて除去しています。
これにより、歯石を除去することによる傷害を最小限にとどめます。
ワンポイントアドバイス
歯石を何度も繰り返して取っても、それだけでは歯周病は治りません。
それどころか、歯周病はどんどん進んでしまう場合すらあります。
写真は、歯石を取るための器具の一部です。
クリックすると、どのように歯石を取るか、動画をご覧いただけます。
(要 WindowMediaPlayer7 以上)
歯石を取った後の治りをよくする目的で、特殊な乳酸菌のサプリメントを使用すると、歯周組織の治りが良くなる、と言うデータがあります。
詳しくは、このページ上部の口腔内科の項目やサプリメント外来のページを参考にしてください。
【コラム】歯周病菌に対する対応:歯周内科
歯周病関連細菌が多く検出された方には、歯ぐきに隠れて見えない部分の歯石取りの直前、直後に、薬による除菌処置を行う場合があります。
これを歯周内科と呼びます。
歯周病菌の検査を行わずに抗生物質を投与するのは、耐性菌(薬が効かない細菌)発現につながり、好ましくありません。
にもかかわらず、むやみやたらと薬を使用する歯科医院が一時増加傾向にありました。
歯周病細菌検査を行わずに薬を使う方法は、歯周病の学会(日本歯周病学会・日本臨床歯周病学会)では推奨していません。
薬を使うことを推奨している、国際歯周内科学研究会に於いても、当初は位相差顕微鏡の検査だけで投薬を行っておりましたが、近年は当院で以前から行っていたPCR法の検査を行って、歯周病原因菌の存在を確認してから投薬を行うことを推奨するようになりました。
歯周内科についての詳細は歯周病の内科治療のページをご覧下さい。
(11)精密な歯周病の検査(再評価検査)
歯磨きを正しく行ったり歯ぐきの中に隠れている歯石を取ると、多くの場合歯周病が改善します。
どの程度改善したかを調べるため、もう一度歯周病の精密な検査をおこないます。
この時点で大幅に検査データが改善することもあれば、あまり変わらないこともあります。
(12)治療方針について説明
(4)の検査結果に基き、30分〜2時間程度かけて歯周病についての詳細、治療方針について詳しく説明します。(希望者のみ)
面倒な説明は必要ないからお任せします、と言われる方には、説明は省略します。
(13)歯周病の手術
再評価検査の結果が思わしくない場合は、手術を行う場合があります。
(14)光殺菌療法(aPDT)
強い光と色素(光感受性ジェル)を使用し、細菌を選択的に死滅・減少させる、歯科では新しい方法です。
この方法は光力学療法(PDT:Photo Dynamic Therapy)とよばれ、医科では既に1990年ごろから早期がんに対して使用されてきました。
歯科では欧米を中心に、数年前から体に優しい安全な治療法として普及しつつあります。
光殺菌療法の詳細は、こちらをご覧ください。
(15)歯の矯正など
もともと歯ならび、かみ合わせの悪い方は、歯周病になりやすいので、場合によっては歯ならびを治す 『矯正治療』 が必要になります。
詳しくは、歯周病の外科治療・歯周補綴のページをご覧下さい。
(16)歯周補綴(補綴処置)
手術が必要であるか否かに関わらず、もともと噛み合わせの悪い方は、その改善無しでは長期的に予後の良い状態を保つことが難しい場合があります。
この場合、歯を削り冠を入れるなどして、かみ合わせを改善する必要があります。
当院はなるべきく歯を削らない方針で治療しておりますが、時には削った方が歯は長持ちしますので、臨機応変に対応しています。
詳細については、歯周病の外科治療・歯周補綴のページをご覧下さい。
(17)ナイトガードの装着
成人の方はかなり高い確率で歯ぎしりをしています。
ただ、歯ぎしりを本人が自覚できることは殆どありません。
又、周囲の方にわかる様な音を出して行っているとも限りません。
したがって自分は歯ぎしりはしていない、と思っていている方でも実は多くの方が頻度の差こそあれ行っている場合が多いと思ってください。
歯ぎしりは歯周病の進行の促進や、再発の重要な要因となることがわかってきています。
したがって当院では治療が一通り終了した段階で、大半の方にナイトガードの作製を行っております。
ナイトガードは通常上の歯全体を覆う形で装着するもので、冠などのかぶせた物を長持ちさせたり、歯周病の進行が速くなるのを抑制したり、歯の破折を防止するのに役立ちます。
歯ぎしり・くいしばりが顕著でない方には、自己暗示療法で対応する場合があります。
自己暗示療法については、ご来院時にご説明致します。
(18)最終検査(再評価検査)
治療が終了した段階で、歯周ポケットの深さやレントゲン検査を行い、今後の維持管理をしていく上での基準として参考にします。
(19)再発防止処置(メインテナンス)又は継続治療(SPT)
1〜6ヶ月に1回の頻度で(通常は3ヶ月に1回)で、再発予防処置や継続治療を行います。
ご本人がどんなに頑張っても汚れ(歯垢)の取りきれない部分がたくさんあります。
そこをそのままにしておくと、約3ヶ月で歯周病の原因となる細菌の増えやすい環境となり、再発が起こる事がわかってきました。
したがって、専門家による予防処置が必要であるというのが、現在の定説となっています。
予防先進国の北欧では、専門家による徹底的な予防処置や継続治療が必要であるとの研究データが、20年以上前に報告されています。
再発予防処置は、軽症の方や、重症でも手術を行い、歯周病が治った患者様に対して行います。
継続治療(SPT)は、中等度以上で手術を行わず、歯周病が残っている(但し病状は安定している)患者様に対して行います。
予防処置・継続治療では、
・ PMTCと呼ばれる専門家による歯の徹底清掃、
・ 3DSと呼ばれる除菌処置
などを行います。
歯周病は歯周病菌による感染症です。
と言うことは、家族間でも細菌を移し合ってしまうことがあります。
したがって、家族揃って定期的に歯科医院に通っていただき、家族全体で歯周病菌をお口の中から減少させることが、望ましいと言われています。
歯周病や虫歯を予防したい方は、家族揃って歯科医院で定期的な管理を受けられことをお勧め致します。
さらに、定期的なご来院により、ガンの早期発見にもつながります。
ガンの早期発見についてのページはこちら
(20)その他
上記以外の処置や指導を行う場合もあります。
それらは必要のある方にのみ説明させていただいております。
(21)治療の流れについて、最後に・・・
歯周病の治療は大変難しく、非常に細かいところまでこだわって治療しないと、長期的な維持安定は得られません。
ある著名な先生は、
『歯周病治療に取り組んでみると、簡単な相手ではない』
と言っておられました。私も正にそのお通りだと思います。
歯磨きの指導なしで月に一度簡単なクリーニングをしたところで、歯周病の進行は止められません。
残念ながら、長期間進行を抑制する様な治療を行っている歯科医院を、皆様の周囲の歯科医院から探すのは困難です。
一般的な治療法を行っている歯科医院は増えつつありますが、不十分な治療しか行っていない場合が多く、注意が必要です。
ただ、どのような治療を受けても軽症の方は場合によっては20年以上、重症の方でも5年以上経過しないと、患者様ご自身ではその違いがわからない(自覚できない)場合が多く、治療する側にとって如何にそれをご理解頂くかが、難しいところです。
【コラム】 口臭原因物質と歯周病の関係
歯周病を起こす細菌は、VSC(揮発性硫黄化合物)と呼ばれる強いにおいを発する物質を産生します。
これが口臭の原因となります。
代表的なVSCは、
(1) 硫化水素
(2) メチルメルカプタン
(3) ジメチルサルファイド
で、何れも口臭の主要な原因物質と言われています。
(詳細は口臭外来のページ参照)
通常、これら3種のVSC濃度は (1)>(2)>(3) の順に大きいのですが、歯周病患者では 『メチルメルカプタン』 がしばしば多く検出されます。
つまり、メチルメルカプタンが硫化水素より多く検出されるのが、歯周病患者の口臭の特徴と言えます。
メチルメルカプタンは「毒物および劇物取締法」などの法律で毒物に指定されており、その毒性は青酸ガスに匹敵、あるいはそれ以上といわれています。
また、近年メチルメルカプタンが、上皮細胞などに悪影響を及ぼすことにより、歯周組織に悪影響をもたらし、歯周病を悪化させる因子となっている可能性が高い、との説が有力になってきています。
よって、口臭を抑制することにより歯周病を改善させよう、という試みも行われています。
【コラム】パーフェクトペリオについて
以前テレビにて『パーフェクトペリオ』という商品名の次亜塩素酸(HClO)を使用した歯周病治療が放映され、話題になりました。
当然ながら、当院でもその効果・安全性が確立されればパーフェクトペリオ水生成機器をの導入を検討したことがあります。
実際にパーフェクトペリオ水を入手し、歯垢中の細菌を殺す効果は認められたものの、味に刺激性があり、また残念ながら、安全性に対する検討が十分になされているとは現時点では言えない、との結論に達しました。
しかもその後、パーフェクトペリオは発売中止となり、「新医療機器」としての申請を準備中のようです。
ただ、認可されるかどうかは現在不透明です。
(因みに、別の商品名で同じ機器が販売されています。)
日本歯周病学会では、ホームページに
を掲載し、現時点では『安全性や有効性について学術的な場で充分な討議が行われた後に、臨床に応用されるべきである』
としています。
当院にもパーフェクトペリオに関する問い合わせを時々いただきますが、現時点では導入の予定はございません。
なお、次亜塩素酸水生成器には多くの製品がありますが、生成される液は殆どが強い酸性です。
酸性の次亜塩素酸水(例:EO水)でうがいを続けると、歯の表面が溶かされる『酸蝕症』になりかねないので、注意が必要です。
継続的にうがいに使用するのであれば、ほぼ中性の次亜塩素酸水を使用する必要があります。
当院では以前より、パーフェクトペリオと若干性質が異なりますが、安全性が確立された次亜塩素酸を含むマイルドな機能水を、歯周病治療時に併用しています。
また、最近パーフェクトペリオと同等の次亜塩素酸濃度の中性機能水や、オゾン水を使用した特殊な治療(短期症状改善治療)を開始しました。
詳しくは、ご来院時にご説明致します。
【コラム】 歯周病治療とインプラント周囲炎治療の違い
近年、インプラント治療を受けられた患者様が増えてきています。
(三重県はインプラント治療を受けられる患者様が比較的少ないようです。)
そのインプラントも、歯周病と同じような症状を起こすことがあります。
インプラント周囲に炎症が起こった状態を『インプラント周囲炎』といいます。
歯科先進国のスウェーデンでは、インプラント治療を受けた4人に1人が罹患しており、日本では更に多くの方が罹患しているのではないかと推測されています。
そして、今後この病気にかかる方がどんどん増えてくるであろう、と危惧されています。
日本歯周病学会や日本臨床歯周病学会の学術大会で、ここ2年ほど急にインプラント周囲炎治療の話題に割く時間が増えてきているのも、その証拠であると考えられます。
インプラント周囲炎については、『ご存じですか? インプラント周囲炎』のページをご覧下さい。
四日市さくら総合歯科に「歯周病治療を希望」して来院された患者様の中に、他院で入れられたインプラント周囲に炎症を起こし、その治療を希望して来院される方がおられます。
しかし、四日市さくら総合歯科ではインプラント周囲炎の治療は行っておりません。
なぜなら、軽症であれば歯周病治療と治療法に大差ありませんが、中等度以上に進行してしまうと、現在のところ確立された治療法がないからです。
また、さくら総合歯科では元々健康意識の高くない方には、インプラント治療を希望されても行わない(不幸になることがわかっているのに行わない)方針を取っているため、インプラント治療を受けられた方は殆どが定期的にご来院いただいており、インプラント周囲炎に悩まされていないのも、治療の必要がない理由です。
インプラントは生体にとってはあくまで異物であり、しかも表面がご自身の歯と異なり、ざらざらに成形されています。
(この構造により、骨とくっついています。)
ところが、このザラザラの面が冒されてしまうと、そこに付着した歯石や細菌を除去することが、歯周病治療に使う器具では取ることが出来ません。
特殊なレーザーや、風圧を使う装置、殺菌装置などを駆使して治療すれば、かなりのアフターフォローが出来る場合もあるようですが、それだけの技術力を持った歯科医師は殆ど存在しません。
もしインプラント周囲炎でお困りの方がおられたら、この分野の治療で世界的に有名な神奈川県の歯科医師をご紹介します。
この先生のところには、歯周病治療で世界的に有名な海外の先生方も研修に来ておられるそうです。
7.当院での治療例
下の症例は、上から 治療前→(治療中)→治療後 の順に並べてあります。
軽症の方は、比較的簡単かつ短期間に治療が可能ですが、重症になってからでは長期間の治療が必要になってしまいます。
重症の方でも、手術を行わない場合があります。
下の写真は30〜50代の方ばかりです。ご老人ではありません。
皆様、治療後熱心に歯を磨き、定期的に専門家による管理を受けておられるので、治療終了後も経過良好です。
なお、見た目を優先する審美歯科と、重症の方の治療は相いれない部分が多く、見た目より歯の健康を重視して治療します。
見た目をよくすることも可能ですが、若干歯の健康を犠牲にする必要があったり、更に見た目を回復する目的の手術が必要になります。
【症例1】 治療期間 3年7ヶ月
この症例は、歯列の床矯正(側方拡大)を行い、手術(再生療法・切除療法)を行ったあと、上は全体的に、下は部分的にかぶせ物でつなげました。
【症例2】 治療期間 4年3ヶ月
この症例は、部分的矯正とインプラント(骨を作る手術を含む)、歯周病の手術(切除療法)を行い、上は全体的に、下は部分的にかぶせ物でつなげました。
ご本人の希望により奥歯はかなり無理をして残しましたが、ご本人の熱心な歯磨きと定期的な御来院により、検査データ等含めて良好な状態を維持出来ています。
【症例3】 治療期間 3年2ヶ月
この症例は、部分的な矯正と手術(再生療法と切除療法)を行い、部分的にかぶせ物でつなげました。
【症例4】 治療期間 10ヶ月
この症例は、殆どの歯が末期的症状だったので、保存可能な歯のみ初期治療(ブラッシング指導・歯石除去)のみを行い、入れ歯にて対応しました。
治療後の写真は左が入れ歯をはずした状態、右が入れ歯を装着した状態です。
残された歯に負担がかからぬよう、どこで咬んでも全体が当たるような咬み合わせにしてあります。
入れ歯ではありますが、ご本人より『何でも噛める』と喜んでいただきました。
ご本人が熱心に歯磨きをしていただいているおかげで、検査データ等を含め、治療前の予測より大変良好な状態を維持できています。
【症例5】 治療期間 8ヶ月(但し矯正治療を含めた場合 3年4ヶ月)
この症例は、軽症ではありますが歯ならびが悪いことにより歯磨きが行いにくく、歯に無理な力がかかることにより将来病状の悪化が予想されたので、歯列の床矯正を行い、一部のみブリッジを装着した症例です。
歯周病の治療自体は初期治療(歯磨き指導・歯石除去)のみですみました。
【症例6】 治療期間 2年5ヶ月
この症例は、20代に既に重症の歯が存在した症例です。
初期治療を行ったのみで、一時中断したものの、現在は定期的に通院されています。
(ご本人の希望により、手術は回避しています。)
深いポケットが残存しているため、通常より短い間隔で来院されています。
歯周病菌の検査を行ったところ悪玉菌が検出されたので、それに対する除菌処置(歯周内科)を行いました。
それにより、病状は更に安定しています。
ただし、今後注意深く経過を見てゆかなければならない症例です。
この患者様の歯には重症の部分がたくさんあります。
症例1のようなケースであれば、一般の方でも『何か違う』ことはわかると思います。
しかし、当ページをご覧になっている方で、この方が重症であることがわかる方はおられるでしょうか。
実は私(院長)でも、この写真を見ただけでは、歯周病の進行程度は正確に把握できません。
ましてや、素人の方にわかるはずがありません。
そこが、歯周病の治療が手遅れになる最大の理由です。
【症例7】 治療期間 7ヶ月(初期治療のみ)
この症例は軽症例で、初期治療(歯磨き指導・歯石除去)のみを行った症例です。
右写真は約7年後ですが、良好な経過をたどっています。
【その他症例】
症例7までは、かなり古い治療例です。
新しい治療例は、『さくら総合歯科要約ページの症例紹介』をご覧ください。
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