2.なぜ内科的歯周病治療が必要なのでしょう?

歯周病は、たとえ現在軽症でも将来重症になるかもしれません。
そのリスクを調べる方法として、お口の中にどのような細菌が存在するかを調べ、悪玉度の強い細菌が存在すれば、それらを抑制(理想はゼロ)しておくことが、リスクの低減につながります。

 

また、既に進行した歯周病の場合、基本的な治療で良好な状態にならない場合が多く、別の方法で対処する必要があります。

 

このような場合に有効な方法の一つが口腔内科治療です。

 

(1)細菌のコントロールとして

(a) 局所の細菌をコントロール

歯周病の原因は、歯周病菌です。
歯周病菌が存在しなければ、歯周病にはなりません。
ただし、歯周病菌を完全に駆逐することは困難です。
現実的には歯周病菌を低いレベルに保つことにより、歯周病の進行や再発を抑制するという対応が必要になります。
細菌
この目的で行われる歯周病の基本治療だけでは、細菌抑制は一時的で、相当丁寧な歯磨きを行わない限り短期間に再び細菌が増殖してしまいます。
そこで、薬、光殺菌、次亜水、オゾン水、3DS、FMDなどを使用して、細菌をコントロールする口腔内科的治療が必要となります。

 

(b) 全身への細菌拡散をコントロール

近年お口の中の細菌が血液中に侵入し、全身の臓器に悪影響を及ぼしていることが、研究により明らかにされてきています。
血液中に細菌が侵入することを「菌血症」といいます。

 

歯周病の治療で菌血症の起こる割合

 

お口の中の悪玉菌を減らすことにより、全身の病気の抑制にもつながります。

 

イ) 歯周病治療と菌血症

歯周病の治療や外科処置(抜歯など)を行うと、大量の細菌が血管内に侵入します。
上の表は、歯周病治療を行うことにより、どのくらいの確率で血管内に細菌が侵入するかを示したものです。
治療行為のほとんどにおいて、かなりの確率で細菌の侵入が起こっていることがおわかり戴けると思います。
菌血症 細菌
たとえば、歯ぐきの下の歯石取り(SRP)は、歯周ポケット内の細菌は減少させますが、逆に細菌を血管内に押し込んでいるとも言えます。

 

健常者においては、一時的な発熱等以外に急に健康を害することはありませんが、長い目で見れば全身への悪影響は否定できません。
一方、心疾患のある方や人工関節のある方などでは、直ちに重篤な問題を起こすことが有り、より注意が必要です。

 

歯周病を治療することにより、全身の健康に悪影響を及ぼすことは好ましいことではありません。
そこで、あらかじめお口の中の細菌を大幅に減少させ、歯周病菌が再び増殖する前に短期間で一気に治療を行えば、細菌の侵入はごく微量になり全身への悪影響もほとんど無視できます。
子のために必要な方法が、「歯周内科・FMD」とよばれる方法で、さくら総合歯科における口腔内科的治療の中でも重要な項目です。

 

ロ) 歯磨きと菌血症

「歯周病治療で細菌が血管に入るのであれば、治療しない方が良いのでは?」
とお考えになる方もおられることでしょう。
しかしそうではありません。

 

この表は歯磨きを行うか否かと、歯周病菌などの細菌中に存在する内毒素(エンドトキシン)が血液中にどのくらい存在するかを調べた研究の結果です。

 

歯みがきとエンドトキシン血症の関係

 

歯磨きを実験的に中止した期間では、当然ながら歯垢(歯に付着する細菌)が増え、結果的に歯ぐきの炎症も悪化します。

 

しかし問題はそれだけに留まりません。
血液内に歯周病菌など由来の内毒素(エンドトキシン)が侵入し、白血球も活動が活発化しています。
しかし、歯磨きを再開することにより、これらの数値はほぼ元に戻っています。

 

イ)で述べたように、歯磨きだけでも菌血症は起こりますが、だからといって歯磨きをやめてしまうのは更に危険であることが、おわかり戴けたと思います。
むしろ、歯磨きをしても菌血症が起きないような口腔環境を整えること、即ち

 

・ 歯周病があればきちんと治療すること、
・ 出来れば歯周病にならないよう予防すること

 

が重要です。

 

ハ) 咀嚼と菌血症

ある研究によると、食事のために噛む(咀嚼)するだけでも、17〜51%の確率で血管に細菌が侵入します。
歯周病が進行し大きく揺れている歯では、その動きがポンプの働きをし、大量の細菌が血管内に送り込まれます。
したがって、重度歯周病の歯をあまり無理して残すことは、健康上好ましくないと考えられます。

 

ニ) 日常性菌血症と治療による菌血症

イ)で述べたように、歯周病の治療で大量の細菌が血管内に侵入します。
それに比べると咀嚼や歯磨きによる細菌の侵入数は、それほどでもありません。
しかしこの日常習慣による菌血症は、長期間継続するため細菌の血管内への累積侵入数は圧倒的に、この「日常性菌血症」の方が多いので、軽視できない問題と言えます。

(2)免疫力をアップするために

細菌がゼロに出来ない以上、存在する悪玉菌を増殖させない『免疫力』のアップも重要です。
しかし、免疫力アップはそう簡単に出来るもことはありません。

 

免疫力をアップするために、さくら総合歯科では各個人の健康状態や生活を検査・調査し、オーダーメイドの対応を行っています。